テロリスト[前編]
摩耶「ひな祭りの綾の衣装、良かったね!」
本田の提案で新しく綾の服を買うこととなり、
それを聞きつけた綾のファンクラブの奴らが、
カンパを募り、どうせならイベント用をということになり……
本田「すごかったな……」
まさか十二単衣をオーダーメイドするとは。
摩耶「僕も欲しい!」
西尾「そしたら、鎧だなぁ。」本田と摩耶の会話に、
西尾がわりこむ。
摩耶「えー、どうしてさ?」
西尾「ほれ?次は五月人形だし。」
摩耶「僕もかわいいのがいーい。お姫様っぽいの!」
コイツラ、“普段着”という概念が抜け落ちてる。
玉ねぎの収穫が終わり、食堂で夕飯に、
トンカツ定食をいただく。
玉「はい、ソースです。」
いつものように……
本田「ありがとう。玉」
玉「いいえぇ。」
玉『美味しそう。』幻聴。統合失調症は続いているが、
幻覚とわかっていれば何ともない。
本田「ウマイよ、トンカツ。」
今日のテレビのニュースは火災現場からか、
本田「……不審火かぁ。」
玉「爆発音がどうのっていってましたよ?」
火の気の無い高層ビル群での不審火。
あまり、考えないでおこう。
……まぁ、こうなるわな。
対策本部「未明の不審火はイスラム解放戦線が声明を出したのは知ってると思う。」
本田と摩耶は本州の東京に出向になった。
本田の義勇軍時代の斥候としての経験からの選出らしい。
摩耶「僕はアンドロイドだからかな?」
膨大なテロリストの顔写真に瞬時にアクセスできるのは強い。
対策本部「本件は、警察庁と合同で取り組む。」
本田「敵の装備は?」
対策本部「君等、自衛官が呼ばれたんだ、察しがつくだろ?」
ハンドガンだけ、なわけないか。
日本イスラム解放戦線の前身はPKK、内戦時は体制側に付いて、戦後は地下に潜伏。外国との太いパイプから活動資金は潤沢にある。
本田「内戦は終わったのに……」
じっとしていられない。口をつぐんだら最後、夢は叶わない。それがテロリズムで顕在化する。
本田「いい迷惑だ。」
対策本部の説明は淡々と進む。
目星をつけて張り込みをして、テロリストを発見し、
アジトをつかんで、制圧する。
対策本部「君等には、コレの実地試験もやってもらう。」
不可視のマント
技研の研究員が続ける。
「効果時間は24時間、充電は24時間。」
それだと、一日ごとに使えないんだが。
「無いよりましか?」集まった隊員達から苦笑が漏れる。
摩耶「ここでいいのかい?」
摩耶には超高層ビルの屋上に居てもらい。本田はカフェテラスで張り込む。
摩耶「後で、僕のも買っといてよ。」
無線連絡、サイボーグ用でいいのかな?
港区へのアクセス、最寄り駅には他のチームが張りついてる。
摩耶「どうして僕らは此処なの?」
その駅から2つ離れた駅。
本田「俺の勘だ。」
摩耶「うわー、それって信用できるの?」
確かに。まぁ、見てな。
摩耶には自分の不可視マントもやって交互に着てもらう。そのほうが効果的に運用できるってもんだ。
自分は市街地に擬態しときゃいい。
普通の、カフェでサボってるビジネスマン。
対策本部「定期連絡。」
他の隊が順番に言う。「異常なし。」
本田「……異常なし。」
自分もそれに続く。
摩耶「当たりがないまま何日目さ?隊長、もう帰ろうよー。」退屈なんだろうな。
そう言うなって。内通者から近々、取引があるって話があったんだから。
本田「……あ、」
髭を剃ってる中東系。
本田「摩耶、照合。目の前の中東系。」
摩耶「あー、当たりだ。」
本田「本部、対象と思われる人物を発見。尾行に移る。バックアップを。」「摩耶ついてこい。」
摩耶「りょーかい!」
港区の倉庫で取引か。
摩耶「ベタだよねー。」
それだけ、常套手段なんだろうな。
中東系の男が入った倉庫にコンテナが数台運び込まれる。
潜伏してる奴等に補給か?
本部「お前たちは待機、後続に発信器を持たせた。それを待て。」
取り付けろってことかな?
本田「だとさ、摩耶。」
摩耶「スニーキングは得意じゃないんだけどなぁ。」
にしては、余裕の笑顔である。




