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よっつめ ホームレスあるいは蝶々

 正直、このエッセイに何を書いたら良いのかよくわかりません。書きたいな……。って思うことは多いんですけど、なんだか躊躇してしまうのです。

 でも、やっぱり書きたくなるので、かきます。


 ごみ箱として作ったし……誰も読まんし……だ、大丈夫。なはず。

 受験勉強を進める中で、いろいろな文章を読むのですが……それが結構面白いんです。


 特に国語の文章題。


 いろいろ関連して考えるし、思うところもふつふつと出てきたり……。

 そういうわけで、昨日読んだ文章題を読んで思い出したことをかきます。




 昨日読んだのは、ホームレスに関するものでした。


 ホームレス……。皆さんはどういうイメージを持っているでしょうか?


 私はすごく良いイメージと、すごく悪いイメージと、両方持っています。

 私の住んでいるところではホームレスの方はいないので、会うこともなく、イマイチ実感が湧きません。したがってイメージは曖昧なものです。




 悪いイメージというのは、社会問題的なアレです。アレってどれ?って感じですけど、アレはソレでコレなんです。

 すいません……ようは、何となくダメそう、ってことです。

 例えば、学校のプリントで進路欄にホームレス、なんて書いたら呼び出されると思います。

 例えば、将来の夢はホームレスです、なんて言えば微妙な顔をされる、あるいは怪訝な顔でしょうか。


 あと、冬場は寒そうです。

 お風呂とか、トイレとか、一般的に家に備わっている機能がないから、不便そうです。




 逆に、良いイメージというのは……


 自由で、ふわふわしている感じです。綿毛みたいに好きなように飛んでいけるのかな?なんて思います。きっとその環境ではその環境の苦労があるとは思います。でも、ホームレスなるのに適した人というのは、どんな環境でも笑っていられる人かも知れません。そう考えるからか、酷いことも、苦しいことも、何でもないように快活に笑い飛ばす様を思い浮かべます。


 あと、どうでもいいんですけど、固定資産税とか払わなくていいんじゃないでしょうか?


 石田衣良さんの池袋ウエストゲートパークという本があるのですが、ホームレスも登場することがあります。おおむね、なんだか素敵な感じがします。

 坂口安吾……、の安吾巷談ではパンパンについて書かれていることが多くて、ホームレスとは少し違うでしょうが、根無し草の彼女たちの自由でのびのびとしている様子に惹かれます。パンパンガールというパンパンの女の子たちにインタビューしている随筆?では、 女の子が、「お金をたくさん持つてゐる男は後光がさして見えるわ」

 なんて言ってるんです。お金持ちは色男に見えるらしいです。なんて強かで可愛らしいんだろう?


 私のホームレスに対する良いイメージは、こういった本の影響だと気づきました。家の無い人に甘い作家に影響されているのです。




 ふと、小学一年生ぐらいの頃のことを思い出しました。あの時の思い出も、ホームレスプラスイメージに一役買っているのです。


 家族で大阪城へ観光に行ったときのことでした。


 大阪城内を歩き回り、外に出たところで、道の端に腰を据え、じっと座る男性がいました。六十代くらいの男性で、身なりは薄汚れていて、髪は無造作に伸びています。

 何より目を引くのは、その言いようもなく独特な空気。その方の周りだけ空気が全く違うのです。

その方の周りには見えない分厚い壁があるかのように、ポッカリと空間が空いていました。


 私は思わずじっと見つめました。

 周りの人間が騒がしく、そして陽気に笑いながら通り過ぎています。まるで全く見えていないかのように。


 幼い私にはそれが全く理解できなかったのです。今なら少し分かります。あれは他者への無関心であり、少しの異質さを感じ取ったゆえの柔らかな拒絶。気にする必要がないということと、触らぬ神になんとやら、といったことの暗黙の了解。


 私は、そのおじさんが体勢を変える姿を、じっと見つめ続けていました。


 ふと草むらで見つけたイモムシがモゾモゾとするのをみているような感覚です。特に意味はないんだけど目を引かれて、無性に眺めるのです。


 当然不審です。人々が行き交うなか、一人立ち止まっておじさんのことを見つめているのですから。




 そして、そのおじさんがこちらに向かってきたと思うと、私に声をかけるのです。

 私はびっくりして思わず黙り込みました。

 当たり前です。見知らぬ女児がジっと自分のことを見つめ続けていれば声もかけるでしょう。

 ただ、私はまさか声をかけられるなんて考えもしなかったのです。美術館で眺めていた絵画があいさつしてきた、みたいな感じです。


 それから何も答えない私に何を思ったのか、おじさんは手元にあったチラシを折り始めました。


 出来上がったのは蝶です。カラフルな広告用紙で折られた蝶は、色鮮やかな模様ができていました。立体的で綺麗な蝶に気を取られていた私に渡されます。


 反射的に受け取った私は、おじさんの顔と蝶の間に視線を行き来させました。ようやく脳が、これをおじさんが自分にくれたんだと理解した時……。




 どうしたのでしょうか?

 実は覚えてないんです。ちょうどそこからの記憶が曖昧です。


 ありがとう、ぐらい言えていたのでしょうか?不躾に見ていたことを謝り、笑顔でお礼を言っていれば良いのですが……。


 今なら問題なくできます。でも、あのときできたとは思えません。自分と違う場所にいる他人を想うことができないほど幼かったのです。




 あのときは、ひどく戸惑っていて、困惑して、怯えていて……あの時の自分の感情を明確には思い出せません。

 せっかく思いやってくれた方に、傷つけるような真似をしたんじゃないかと悲しくなります。


 実は、あの蝶はまだ持っているんです。

 子供の時から使っている、いわゆる"宝物入れ"に入っています。持ち帰って入れたのでしょう。あのときの私は、少なくとも、宝物入れにいれるぐらいにはチラシの蝶を気に入っていたのです。

 中身が入れ替わることもあるなか、十数年、ずーっと入りっぱなしです。


 今見ても、よくできた蝶だなー、なんて思います。気に入ってるんです。

 そして、あの記憶のせいか、きゅうっと甘酸っぱい気持ちにもなるのです。

 

 

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