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ふたつめ 見慣れたものから一つだけなくなっていれば逆に際立つかも

 先週、祖母の家に行ってきました。


 去年の10月頃に祖父が亡くなり、祖父母の家から、祖母の家となってしまいました。

 心配していた祖母は意外に元気そうでした。祖父が生きていた頃と変わらず明るく快活な人です。


 しかし、いつも祖父が座っていた椅子に誰も座っていないというのは、少し寂しく感じました。部屋がガラリと変わっていれば兎も角、祖父がいた頃と殆ど変わっていないのです。

 机があり、椅子があり、地球儀があって、カップもある。祖父だけがいない。


 あーあ、死んじゃったんだなぁ。なんて思いました。今も書きながら思ってます。いなくなったんだなぁ、って。

 でも、現実感がないというか……ひょっこり現れたとして何ら違和感がないのです。


 部屋に立っていればきっと、あれ、いたんだ。と言って、死んでたと思った、なんて言葉は不謹慎だなと思って飲み込み、どっかいってたの?なんて聞くんでしょう。

 でも、これはありえない想像で、そう思うとがっかりして眉が下がっちゃいます。絶対にあり得ない。今から十年経とうが二十年経とうが、絶対に。




 玄関には、以前来た時にはなかった手すりがついていました。

 祖母は、祖父のためにつけたのに、すぐ死んでしまった。なんて言っていました。




 祖父母の家に行った時、いつもやること、というか、ルーティーンのようなものがあります。

 まず家に入って、着くのはいつも昼頃なので皆でお昼ご飯を食べます。食べるのはだいたい寿司です。それからしばらくのんびりして、祖父母の家の小さい庭に出たりして、近くの公園へ歩きます。これがいつもの。でも今回はここに祖父の仏壇に手を合わせることが加わりました。


 皆にならって、手を合わせます。

 手を合わせる時、勿論祖父のことを考えるのですが、仏壇に手を合わせるという行為と、祖父が結びつかず変な感じです。

 仏壇を拝み手を合わせてる。その上祖父のことを考えている。

 音楽聴きながら勉強してるみたいな、二つのことをしているんです。ホントは一つのことなのに。


 祖父が亡くなってから私が感じ続けている、節々にあるこういう違和感は、どういうことなのでしょうか?

 私がまだ若いからなのか?子供だからなのか?祖父の死を理解できていないからなのか?




 なんかしんみりしちゃいましたね。今日はブルーな気分だったからかもしれません。でも、おかしなことも思い出しました。


 仏壇を拝むのは良かったんですけど、顔を上げて祖父の遺影をみた瞬間思わず笑ってしまいそうになりました。


 祖父の遺影……真ん中には笑っている祖父、逆行気味で顔が黒っぽく見え、視線は横にそれどこか遠く、頭には帽子、肩にはリュックを背負い、登山に相応しい動きやすそうな上着を着ています。


 そう、登山中の写真なのです。


 仏壇に飾られる写真としてはあまりにもミスマッチ。この写真だってこんなところに飾られて、いささか困惑気味です。


 この写真は、祖母が背景がいいからとかなんとか言って押し切ったそうです。

 父が背景は消せるのにと呆れ気味に言っていました。


 祖父はなくなる前に自分で自分の戒名を考えていたのですが(一般的ではないらしい……)、結局お坊さんが戒名をつけてくださり、山の字が入った、登山家みたいな戒名になりました。


 きっと遺影を見て、この写真を遺影にするくらいだ、山登りが好きに違いない、と思ったのでしょう。

 特別好きというわけではないのですが……。




 祖母は元気そうに見えましたが、節々の言動が祖父の影を追うようで、どこか痛ましいものを感じました。


 数十年寄り添った相手が死ぬ時、死んだ時、どんな風なのか、私には全く分かりません。

 祖父は知らないまま死んでいったのです。それは幸いなことだと思います。

 祖父の考えた戒名はどこかに消え、代わりについたのは登山家みたいな戒名。

 祖父も笑って許してくれるでしょう。いえ、そういうことは細かく頑固なところのある人だったので、ぐちぐちと文句を言うかもしれません。

 でも、祖父の遺影も、祖父の戒名も、好きなようにするのは、祖父の死んだあとを生きる祖母の権利でしょう。先に死んでしまったのだから、祖父の文句は祖母には届かないのです。

眠い。おやすみ。

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