天空スパイダー
〈今、『ニンゲンプラネツト』に到達致しました。
これより、第一作戦『天空封じ込み』を開始致します!〉
惑星『スパイダー』から『ニンゲンプラネツト』……正式名称『地球』を侵略しに来た『スパイダー』のエイティは、銀河船の操縦席にあるモニター装置から故郷へ向けて通信している。
〈了解した!
くれぐれも『ニンゲン』どもに姿を見られないように気を付けて糸を作成せよ!〉
モニターの向こうから、エイティと同じ型のエイリアンが指令を出した。
白銀の光を全身からキラキラさせ、身体から片方ずつ四本……合計八本の足を生やしている。
彼らは蜘蛛のエイリアン、その名も『スパイダー』だ。
〈承知致しました!〉
そう言葉を残すとイエティは通信を切り、最初の任務を始める。
何年か先には『スパイダー』がこの惑星の侵略者となり、『ニンゲン』どもをペット化する予定だ。
〈さて、糸を貼るとするか。
我らの糸に封じられれば、『ニンゲン』等簡単に取り込める〉
『スパイダー』の惑星侵略の経緯は先ず、到達した『スパイダー』つまりはイエティが糸を天空に張り巡らせて、天と地を遮る。
充分天を不透明にしたところで他の『スパイダー』も続々糸をかいくぐり惑星に到達する。
青い惑星は『スパイダー』の糸……つまりは巣に包まれ、住人たちをペットとして支配するという計画。
銀河船の屋根を開いたイエティは口から糸を出し、空へと解き放った。
〈間もなくすれば、我々がこの惑星……〉
「なんや、コレ?
糸、出てんで?」
「糸?
そら、蚕やろ?」
「いや、なんや……変な物体から八本足の生きモンが、糸吐いとる」
「八本足ゆうたら、蜘蛛やな。
セアカゴケグモか?」
「セアカゴケグモ違うわな。
色無い、透明やわ」
「ほな、セアカゴケグモ違うな。
何蜘蛛?」
「知らん。
クリア蜘蛛?
今、俺が付けた」
『ニンゲン』が二体イエティを見下ろして何やら会話をしているが、言葉がさっぱり通じない。
〈丁度良い!
この『ニンゲン』どもを糸で縛り、動きを封じてやろう!〉
イエティが糸を『ニンゲン』の一人に吐き出すと、糸は『ニンゲン』の靴に伸びた。
【ピチャ】……という雨のような小さな音が響いた。
「おお、このクリア蜘蛛、靴に糸吐いたで!」
「どんな気ぃで、糸吐いたんやろな?
靴に巣ぅ貼りたいんか?」
「封印したれ、封印」
〈ん?〉
イエティの頭上から、大きな影が降りてきた。
『ニンゲン』からの反撃とみた。
実は単に二人がイエティに銀河船ごとカップラーメンの空の容器を被せただけの事。
更には容器の上に石を置かれているので、動かせない。
〈え?
しまった!
罠にはまった!〉
『ニンゲン』二体(?)はゲラゲラ笑いながらそこから去っていった。
〈こちら、イエティ!
こちら、イエティ!
『ニンゲン』どもに封じられ、侵略不能となりました!〉
緊急信号を銀河に向けて発信するが、容器に遮られ届かない。
二日後、クリアな蜘蛛と奇妙な形の巣箱が発見された。
〈こちら本部!
イエティ、応答せよ!〉
〈……〉