出会い
僕はこの町が好きだ。生まれ育ったこの町が好きだ。空気が穏やかなのも、周りの人達が暖かいのも、ここで暮らす日常も…みんなみんな好きだ。
でも幼馴染はみんなこの町から出て行った。都会の方が仕事も学校も多く、この町にある意味なんて一つもないからと言った。しかし、僕はそんなことないと思う。この町は確かに田舎だが、仕事がないわけでもなく近所付き合いも楽しい。
…あの子に出会うまでは。
僕はこの町が好きだ。生まれ育ったこの町が好きだ。空気が穏やかなのも、周りの人達が暖かいのも、流れる綺麗な小川も、見える青々とした山々も、ここで暮らす日常も…みんなみんな好きだ。
でも幼馴染はみんなこの町から出て行った。都会の方が仕事も学校も多く、この町にある意味なんて一つもないからと言った。しかし、僕はそんなことないと思う。この町は確かに田舎だが、仕事がないわけでもなく近所付き合いも楽しい。村八分なんて話もこの町では聞いたことない。
実際、一番仲が良かった友だちが家族で引っ越す時も"また遊びに来るからな!"って言いながら手を振っていた。あいつらしくない涙を流しながら。それを見て町の人はみんな泣いていた。この間家に来た時は町民みんなでお祭り騒ぎだったっけ。ただそのあと長老が縁側で寝ていたのはちょっと心配した。
そんなこんなで生まれてずっとこの町を愛しながら生きていた。そんなある日のこと、近くの都市から1人の女の子が引っ越してきた。年齢も僕と同世代らしかったが、そんな女の子がどうして引っ越してきたのかわからなかった。町民もみんな驚いていた。最後に引っ越してきた人なんてみんな覚えてないぐらいだったから。
しかし、その子は少し変わっていた。どうやら何かの病気らしい。しかも、どこの病院も診断ができなかったんだそう。だからこの町で余生を過ごす…そのために引っ越したというのを噂で聞いた。つまり、死ぬということだ。それを聞いて居ても立っても居られなくなった僕は彼女の元へ向かった。
歩いてほんの数分、少し片付いた家屋を見つけた。壁に隠れて外に出るのを待っているとその後ろから声をかけられた。
慌てて振り向くと、彼女が微笑んでいた。優しそうな目、どこか空な瞳、少しだけ悲しげな雰囲気…そう考えていると察したのか彼女は僕の手を取って家の中に入った。玄関でぼーっとしている僕に手招きをしてリビングでお茶を飲みながら引越し挨拶と手土産を置いた。
お茶を飲んでいると町の人が言っていた噂について知っているかと聞かれた。僕は正直に知っていると答えると、彼女は静かに話し始めた。
どうやら彼女は謎の病にかかっているらしく、どこの病院に行っても治す方法がないこと、持ってあと数ヶ月であること、症状は発作のように突然起きては急激に進行すること、次の発作が起きると最期らしいこと、普段はあまり症状が出ないが、ある条件が揃うと発症するらしいことを伝えられた。この町に来た理由はその条件が起きにくいからだそうだ。
それを踏まえた上で彼女から質問を問いかけられた。
"私の恋人になってくれませんか…?"
質問に戸惑っていると、次に会う日に答えを教えてと言われた。でも帰り道、少しだけ答えがわかったような気がした。