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異世界帰還書紀  作者: 空花 ハルル
別の異世界
3/62

Barでの仕事

開店時間になり、男女4名が入ってきた。

「いらっしゃいませー。・・って、先生じゃないですか。一週間ぶりですね」

アウムは、常連であろう(話し方から考えて)客ににっこりしながら声をかけに、行っている。

先生と呼ばれている人物は、緑色の髪をした25歳くらいの男性である。

顔も中々に良い。

他の先生の連れ3名は、赤髪の20代くらいの男と青髪の女性、そして、銀髪の女性という感じだった。

「こんにちは、アウムちゃん」と手を振りながら笑顔をアウムに返し、心地の良い声音で話しかけている。

顔だけでなく、声まで良い。

サンダーが、そんなことを考えていると、先生と呼ばれている客がサンダーの事に気づいたのか、話しかけてきた。

「君は新人さんかな。先週来たときは、いなかったから、そうだと思うのだけど。合ってるよね?」

「ああ、そ・・そうですけど」と、たどたどしく、サンダーは返事をした。

「新人さんって言っても、今日だけみたいですけどね」

アウムが補足をつける。

「それは残念だなぁ。君もアウムちゃんと同じくらいかわいいのに・・」

その言葉を先生の顔から判断すると、嘘ではなく本心からそう思っているように見える。

サンダーはそう言われると、少し頬を赤らめて、顔を隠した。

そんな雰囲気を持ち直すように、アウムが紙(注文表)を先生に渡した。

「先生達。ご注文を伺います」

「そうだね・・私は、いつものでお願い。皆はどうする?」

先生がそう言うと3人は数秒考えた後、全員先生のと同じ、ということになった。

「はーい。先生のいつものを4人前ですね。かしこまりました。サンダーちゃん、先生達を席に案内してあげて。」

アウムはそう言うと、注文表をロートンのところに走って持って行った。

「そ・それじゃあ、席まで案内させてもらいます」

サンダーは、先生達を外の景色が見やすい席に案内することにした。

「こちらの席に・・。ご、ごゆっくり」

慣れないながらも、なんとか初めての案内を終えた・・・そんなことを思っているうちに、お客がさらに3組ほど入ってきた。

(・・・まあ、なんとかなるか)サンダーはそう心の中で思い込むことにした。


一方、厨房では・・

「それでは、ロートンさん。これで、お願いしますね。」

「OK。アウムくん」

注文を伝え終えると、アウムは急いでお客達のところに戻っていった。

「いつも、こんなに忙しいのを2人でこなしているのですか」

蒼はキッチンの窓(マジックミラーなのか席側からは見えないようになっているらしい)越しに3組の客が入店してくるのが見えた。

「まあね。それに月曜日と水曜日は店も休みとしてるから、授業員のストレスとかの面は心配しなくても大丈夫だよ。アウムくんしか従業員はいないけどね。・・そうだ、蒼くん。もう少ししたら君もウェイターの仕事をしてきたらどうだい。こっちは手が空くしね」

「わかりました。そうさせてもらいます。」


時を数十秒戻し、店内ではアウムが厨房に行ってしまったことでサンダーひとりになっていた。

そして、サンダーはいきなりたくさんのお客が来て、あたふたしているところだった。

「(アウム~。早く戻ってきてくれ~)い、いらっしゃいませ。何名様ですか~」

サンダーは、たどたどしくも接客をこなそうとする。

「3名です」

「それでは、あちらの席にどうぞ。(これをあと2組分するのか)」

「いらっしゃいませ~。何名様で・・」

サンダーが2組目のお客の対応をしている時、アウムが少し小走りしながら戻ってきた。

「お待たせ、サンダーちゃん。席までの案内は私がするよ。だから、サンダーちゃんは、注文の対応をお願い!」

「フゥ。一人じゃ、きついな。」

「ごめんごめん」

しかし、サンダーがひと息をつく暇暇もなく「すみません。注文いいですか」とお客が呼ぶ。サンダーは、服のポケットから紙とペンを取り出して、客のところに向かって行った。

「行ってくる」

「よろしくね。サンダーちゃん」


それから、約30分後・・席(2階の席とカウンターも入れて、最大で12組は座れる)、は満席となった。

「アウムちゃん。追加注文いいかな」

「どうぞ、先生。」

「それじゃあ、このシャンパンをグラス4つで・・」

追加注文をしようとした先生が、少しピリついている。

「んっ!この感じ・・彼か!」

先生はあたりを見回した後に、ウェイターの仕事をしにキッチンの入口の方を見た。

目線の先にいるのは、蒼だ。

「彼がどうかしたのですか。・・大丈夫ですか。先生?」

アウムは、いつもと違う先生を心配そうにみている。

「いや・・彼も新人かい。アウムちゃん。」

「はい、そうですけど・・。なにか気になるなら呼んできましょうか、先生。」

「いや、いい。後ででもいいから個人的に彼と、そして、サンダーちゃんとも話がしたい。そうロートンさんに伝えてくれるかな」

「わかりました。伝えておきます。このボランジェ・スペシャルを一点とグラス4つで承りました」


さらに、約30分後。客の出入りはあまり変わっていない。

「アウムくん。これ、5番席のお客さんのところに持って行ってくれない」

「はーい。そういえば、ロートンさん。」

アウムは、先生からの伝言を今、ロートンに伝えることにした。

「先生が後で、個人的に蒼さんとサンダーちゃんとお話がしたいらしいです。」

「二人と・・、分かった。先生に伝えて、 ’閉店時間が過ぎた11時過ぎぐらいにまた来てほしい’ と」

「わかりました」

アウムは、お客が呼んでない今しかないと思い、すぐに先生に伝えることにした。

「先生。ロートンさんから伝言です。」

「伝えてきてくれたんだね。ありがとう。それで、ロートンさんは何て言ってたんだい?」

アウムは、ロートンから言われたことをそのまま先生に伝えた。

「了解した。それにちょうど、会計に入ろうと思ってたからね。会計お願いするよ、アウムちゃん」

「はい。」


約4時間後、閉店時間がやってきた。閉店時間の1時間前のラストオーダーまで客数が減ることはなかった。

「ふう。疲れた。」

ロートンは、「蒼くんにサンダーくん。お疲れ様と言いたいのだが、お客さんのひとりが二人に話があるみたいでね。閉店時間過ぎにまた来てもらうように言ったんだ。」と言った。それを聞いたサンダーは少しだけ面倒くさそうな顔をした。それに対して、蒼は、何だろう、と首を傾げている。

そして5分後、チリンチリンというドアの開閉音と同時に先生がやってきた。

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