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異世界にチートは存在しない  作者: アスタリスク
4/10

コンビ

 「知らない天井だ...」

 

 言ってみたかっただけだ、特に意味はない。異世界にきて自分でも知らないうちにハイになっていたのかもしれない。しかし実際に知らない天井を見ながら目覚めるというのは衝撃があった。まだ異世界にきて1日目だから旅行気分だがもうすでに自室の天井を鮮明に思い出せないので俺は思っているよりも相当この世界を気に入っているようだった。

 知らない天井という言葉に一つ点を付けるだけで知らないのに繰り返している矛盾した語になる、これを天丼パラドックスと呼ぼう、などと益体やくたいのないことを考えているうちに頭も起きてきて顔を洗ってギルドのホールに行った。今日から依頼を受けて活動しようと思うのだ。

 

 ホールにある依頼が貼ってあるボードを見ていると

 「おにーさん、最近登録したばかりの新人でしょ?私も最近登録したばかりだから一緒に依頼を受けない?」

後ろからいきなり声をかけられた。振り返るとそこには、活発そうな赤毛の女の子が立ってこちらを見ていた。

 

 「あ、はい、昨日登録したばかりです。」

 「あはっ!敬語なんて使わなくていいのに。ここじゃ舐められたらおしまいだゾ☆」

 「あ、あぁ、そうさせてもらうよ」

 なんだこの子、なんていうか、ウザい。でも憎めないウザさだ。

 「で、私と組んで依頼一緒に行かない?」

 どうしてこの子はこんなに一緒に依頼を受けてほしいのだろう。これが初対面だから感謝されることも恨まれることもないのに。

 「ねぇ、どうして俺と一緒に依頼を受けたいんだ?」

 「それは...一人で行くのは心細いのよ...」

 なんだろう、こう言っては悪いが意外と女の子らしい理由だった。

 いや、初対面で相手の子の名前も知らないのに意外というのはおかしいが雰囲気からして物怖じしないタイプかと思ってたのだ。

 「もしも私の魅力のせいで依頼主がメロメロになったらと思うと怖くて怖くて...」

 「あ、はい、そうですか。」

 

 前言撤回。雰囲気通りの性格だった。

 実際見た目は目を引く美少女なのだから性質たちが悪い。

 「というのは冗談で、初めての依頼だから他の人と一緒がいいんだけど、経験が同じくらいの人じゃないと肩身が狭いから同じ新人の人を誘ったんですよ」

 なるほど、それなら納得だ。

 「なら始めからそう言ってくれ。そういう理由ならぜひ同行しよう。実は俺も初めての依頼なのでどうしていいかわからなかったんだ。」

 

 「じゃあ、決定ね。私はシャルロット=ウートガズよ、シャルルって呼んでね。よろしく。」

 「ああ、こちらこそよろしく。俺は剣崎早渡だ。剣崎が姓で早渡が名だ。」

 「ハヤトね、わかったわ。」

 「それでどんな依頼を受けるんだ?」

 「ズバリ、ゴブリン狩りよ!」

 なるほど、最初の依頼としては定番中の定番だ。

 「シャルロットの職業はなんなんだ?」

 「私は魔法使いよ。攻撃魔法も回復魔法も下級なら大体使えるわ。火属性なら中級も使えるわ。ハヤトはどうなの?」

 「俺は剣士だ。」

 恐らく念ずれば魔法などの他の能力も使えるだろうが今は剣術のみなので剣士で登録しておいた。

 「なら、前衛と後衛でちょうどいいわね。早速依頼があった村へ向かいましょ。」

 そういってシャルロットは依頼の紙を千切って受付へ行き依頼を受ける手続きを終えた。

 「そういえばハヤト、剣士なら剣はどこにあるのよ」

 

あ、忘れていた。仕方ないのでシャルロットに街売りの鍛冶師のところへ連れて行ってもらい剣を見繕うことにした。

 鍛冶屋ではショートソードからロングソードまで様々な剣が揃っていた。その中で自分の体のサイズに合ったものを選んで購入した。お金はシャルロットが出してくれた。依頼が終わってお金が入ったら返してくれればいいということだった。自分のことも大変なはずなのに気遣ってくれてシャルルはいいやつだ。

 そうしてようやく俺たちは村へ向かうことができた。


 村へは徒歩で向かう。馬車などもあるが乗車料金がもったいないので徒歩にしようと議会で満場一致で可決された。(議員は俺とシャルロットの2名)

 徒歩では村まで1日だそうだ。確か不動産では人の歩く速度を80m/分で計算しているので1日となると約115kmになる。実際は寝る時間も含めると70kmほどだろうか。それでもフルマラソン2回分弱あるのだが...

 

 そんなことを考えているとシャルロットが

 「ねえ、ハヤトはどうして冒険者になったの?」

 突然そんなことを聞いてきた。

 まさかここで、「実は転生者で行く所がなかったので定番だと思い登録しました~」なんて言えない。もっともそんな話し方でもないのだが。

 「どうしてって...お金を稼ぎたかったからかな」

 嘘は言ってない。実際、お金は欲しい。なにせこちとら一文無しだ。

 

 「シャルロットはどうして冒険者になったんだい?」

 「ふっふーん、聞いちゃう?それ聞いちゃう?」

 いや、シャルロットから聞いてきたんだろうが...

 「ハヤトがどうしてもっていうなら教えてあげてもいいけど~?」

 ウザい、ただただウザい。もはや清々しいまであるぞ...

 「あーはいはい、どうしてもおしえてほしいですわたくしめにおしえてくださーい」

 「心がこもってないわ!もっと誠心誠意、心を込めてお願いしなさいよー!」

 「あ、別に教えてもらわなくていいです。」

 「何よ!?聞いてよ~!」

 「じゃあ早く教えろよ。」

 「わかったわよ、しっかり聞きなさいよ?」

 なんだったんだ...結局聞いてほしいだけだったんじゃないか。俺の話も興味なかったんじゃないか?

 

 「私が冒険者になった理由はね...」

 「...おい、早く教えろよ。」

 「えっとね...その...」

 シャルロットは散々聞いてほしそうにしてた割にもったいぶってもじもじしながら言い淀んだ。

 よっぽど恥ずかしい理由なのだろうか。

 婿探しとか?それとも親を探してるとかなんだろうか。見たところ思春期の女の子なのでそういうことを恥ずかしがるのはわかるが早く言ってほしい。

 そして数分した後やっと口を開いた。


 「私が冒険者になったのは......不老不死になるためなの。」

 シャルロットは頬を赤らめながらそう言った。


 ...は?




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