冒険者ギルド
面談室は木の机とそれを挟むように2つの机が置いてあるだけで窓も一つしかない、いわば取調室のような場所だった。もっとも俺は入ったことなどないのでドラマなどでみたものなのだが。
言われた通りに面談室に入った俺はどうしていいかわからないのでとりあえず手前側の椅子の横に立っていた。相手に座ることを促されるまでは座ってはいけないと習った気がしたからだが。
「すみません、お待たせしました。あ、どうぞお掛けになってください。」
そう言われれば安心して座れるというものだ。
「では、失礼します。」
「それでは説明を始めさせていただきます。ソフィア=ブルーアといいます。まずは名前をお伺いしてもよろしいでしょうか。」
「あ、はい、剣崎早渡といいます、姓が剣崎で名が早渡です。」
「そうですか、珍しい名前ですね。」
やはり日本の名前はこの世界ではあまりない名前のようだ。
「では続いてギルドについての説明です。ケンザキ様はギルドについてどこまでご存じでしょうか。」
「いえ、ほとんど知らないので最初から説明をお願いします。」
「はい、わかりました。まず、冒険者ギルドとは冒険者の皆様に仕事を斡旋する場所です。また、素材の買取や身分の証明、金融機関でもあります。そのため様々な人が集まるので出会いの場としても使われます。」
なるほど、役所のような感じなのか。
「続いて冒険者についてです。冒険者にはS~Eまでのランクがあります。これはギルドからの信頼度を表しています。ランクが高い冒険者ほど行政サービスや素材の買取で恩恵を得られます。ランクが低いので難しい依頼を受けられないことはありませんがおおよそ以来のランクと冒険者のランクはリンクしているので同じランク帯から選ぶのが賢明だと思います。質問はありますか?」
「はい、ランクが上がることによるデメリットはありますか?」
「あります、それはAランク以上になると、依頼を失敗しすぎるとランクが降格することと国から指名依頼を出されたときや緊急時に強制的に参加させられるということです。」
まあ、ある程度予測していたことだ、問題ない。
「他に質問はありますか?」
「いえ、ありません、ありがとうございます。」
「では登録をしましょう、登録には金貨1枚が必要ですがこれは素材の買取などから天引きして払っていただきますのでケンザキ様が払う必要はございません。こちらの紙に必要事項をお書きください。」
そういって渡された紙には名前、性別、役割、パーティ、特技の欄があった。
「これは何を書けばいいんですか?」
「役割は剣士や魔法使い、スカウト、ヒーラーなどの自分の職業を書いてください。パーティの欄はパーティを組んでいない場合は空白で構いません。特技は自分のできることを書いてください。」
「わかりました。......これでいいですか?」
「はい、大丈夫です。これで登録が完了しました。」
「ありがとうございまいた。」
そうして面談室から出た俺は早速依頼を受けようかと思ったが、日も暮れてきたので泊まるところを探さないと...俺、お金持ってないんだよな。
野宿をするのには抵抗があったが仕方なく野宿することにしようと決心すると
「ケンザキ様、お金が無いようでしたら当ギルドの奥にある部屋を使って寝ていただいてもかまいませんよ。」
ソフィアさん(天使)があらわれた。
「本当ですか、ブルーアさん、ありがとうございます!」
「私のことはソフィアと呼んでください、皆さんもそう呼びますので。」
「そうですか、じゃあ俺のことも様付けしないでくださいね」
「わかりました、ケンザキさん。就寝に使える部屋はこちらです。」
なにからなにまでありがたい限りだ。俺はこの時これからずっとソフィアさんの受付を使おうと決めたのだった。
そんなことができなくなる日が来るなんて露ほども、霧ほども思っていなかった。