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6.闇の情報屋

「彼は正樹。私の同僚で、ここで雑貨屋を営みつつ情報屋をしてるの。彼の能力は『薬物を操作する能力』だから、裏社会に馴染みやすいのよ」

「どーもー、亡霊ハンター正樹でーす。可愛い雑貨屋さん営んでまーす。情報屋としては、人種髪色趣味能力まで、リストにある限りなら教えるよ。ただし報酬はしっかり貰うけどね。…まぁ同僚だしある程度割引はしてあげるよ」


 正樹がプカプカとキセルから煙を上げながら言う。彼の髪色は見ているだけで気持ち悪くなりそうな毒々しい色。さすが薬物を操作する能力者といったものか。


「…泉ちゃん、大丈夫?この人。目が完全にイっちゃってるんだけど」

「大丈夫よ、いざというときには投げ飛ばすから」

「その発想の何が大丈夫なんだい??」

「だって貴方私に勝てるの情報力くらいしかないじゃない。力でも知識でも財力でも負けてるくせに」

「ひ、ひどい!そりゃ僕は余裕で負けるだろうけどさぁ、それでもひどい!!愚生傷ついたでござる!!」

「お嬢様、本当にこの人大丈夫なんですか?一人称ブレブレじゃないですか」

「……大丈夫よ。これでも…これでも亡霊ハンターを務めているんですもの」

「すごいよ八多さん、泉ちゃんがちっとも顔を合わせなくなった」

「まあ滅多に会わない人物のことを詳しく教えてほしいというのも無理な話か」


 どいつもこいつも「違うそうじゃない」感がすごい。ツッコミ不在の恐怖である。


「わーはちっとも危険じゃねーべ。疑うっちゅーのはちぃと失礼だと思わんか?」

「帰るわよ」

「わー待って待って待って帰らないで?もうふざけないから、もうふざけないから!!ね!」


 くるりと踵を返した泉の足に、みっともなく正樹が縋り付く。…絵面だけ見ても本当にみっともない。大の大人が何やっているんだか。


「そもそも君が尋ねて来たんだろう?報酬貰えればちゃんと仕事するから!!」

「…言ったわね」


 それを聞くと、泉はガタガタと脚の長さのズレた椅子を(正樹の許可なく)引っ張り出してきた。そして、少し埃を払ってストンと座る。


「…そういうのって、ちゃんと家主の許可とってね?」

「? いいでしょう別に」

「まぁいいか」


 そういうと正樹は、大量に並んだ本棚から迷うことなく一冊のファイルを手にして、パラパラと紙をめくる。そして、真剣な表情で近くにあったシャーペンで書き込み始めた。


「…何してるのかしら?」

「うん?君のページに『完璧ながら不羈奔放な一面あり』って書き足してるだけだよ。『まるで何も知らない子どものようだ、残念』とね」

「…そういうのは本人に言うべきではないと思うのだけど」

「気分を悪くしてしまったかい?そう怒らないでおくれよ。俺だってこの仕事は好きでやってるわけじゃないんだから」

「お嬢様の情報もあるのか?」

「あるよぉ、マフィアの重要人物兼要注意人物として知られている。もちろん、君達二人もね」

「えーホントですか!?読んで読んで!」

「こら紅、せがむな。マサにとっては大事な商品──」

「いいよ」

「いいの!?」

「ホントですか?やったあ!」


 えーっとね、と前置きをして、正樹はリストを音読し始める。


「『(いずみ)。十月二十六日生まれ。14歳、中学三年生。亡霊ハンター故名字を名乗ることは許されていない。才色兼備、成績優秀、なんでもかんでもそつなくこなす天才肌。ただし、完璧ながら不羈奔放な一面あり。まるで何も知らない子どものようだ、残念。美しい黒髪にヘマタイトのような瞳を持つ。能力は「一目見聞きしただけで百まで知る能力」。趣味は能力のせいで作ることができない』


暗林(あんりん) (こう)。二月五日生まれ。14歳。泉のお付きの能力者。いつも優しげな笑顔を浮かべており、滅多に怒りなどの感情を表に出さない。が、本気でブチギレると容赦という字が彼女の辞書からすっぽ抜ける。一体どこに容赦という字を置いてきたんだ貴様は。年中花粉症の為常にマスク装備。ただし症状は軽め。亜麻色の髪と琥珀色の瞳を持つ。能力は「異空間を操る能力」。趣味は料理と泉のお世話』


烏間(からすま) 八多(やた)。九月六日生まれ。二十八歳。泉のお付きの能力者。いつもしかめっ面だが表情豊かで情に厚い。能力をポンポン使用する為、常に泉に叱られている。真っ赤な髪とルビーのような瞳を持つ。能力は「風(気体の動き)を操る能力」。趣味は読書と泉とのおしゃべり』


「何よヘマタイトって。普通に黒でいいでしょ」

「私の瞳って琥珀っぽくないです!どっちかと言えば濁ったファイアオパールです!」

「それを言うなら俺だってルビーほどピンクじゃない。強いて言えばレッドベリルだ」

「なんで俺こんなに文句言われてんの??」

「マサが目の色について余計な一言加えたからでしょう?」

「てかなんでみんなこんな例えでわかってんの???」


 三人に一気に詰め寄られ、目を白黒させながら、正樹は疑問符を頭に浮かべた。

 ――何か忘れているような??


「ってかそうだよ、問題はこれじゃないんだよ。君の依頼だよ」

「ああそうだった。忘れるところだったわ」

「自分のこと忘れないでくれない?」

「そうだよ泉ちゃん早くして?この部屋埃っぽくてもうそろそろ限界…へっくし!」

「ごめんなさい、紅」

「もうさっさと済ませたいから教えて?君はここに何を知りにきたんだい?」


 正樹の問いに、泉は真剣な顔で答えた。ずっと抱えていた疑問を払拭する為に。


「……『幻影サーカス』。」

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