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満を持して望んだ学年末筆記試験、手応えはまずまずだった。
だが、筆記試験にはそこまで憂慮していない。
やはり問題なのは実技試験の方だ。
試験の方法は事前に告知されていて、学院の地下にある大迷宮に挑むという試験内容らしい。
半日丸々使って行われる試験で、どこまで深く潜れるかで成績が変わってくるというものだ。
ラッキーなことに、協力などもアリというらしく、僕はイリナに連れて行ってもらえる算段になっている。
しかし、迷宮内にはゴーレムや陰湿な罠が配置されているということなので、いくらイリナと言えども、それを無視してサクサク進むことはできないだろう。
そして、実技試験当日、一回生は全員図書棟前に集合していた。
『あー、これから諸君らには十二時間かけて、この地下迷宮に挑んでもらうわけだが、注意点をいくつか説明しておく。一つ、他人を意図的に妨害する行為は禁止だ。その行為が見られた場合はこの試験は0点になると思え。二つ、配置されているゴーレム、罠で身体にダメージを受けた場合、そのダメージは諸君らの魔力が肩代わりする、という魔法が迷宮全域にかかっている。魔力がゼロになった場合はこの場所に強制転移させられ、最後にいた階層が記録となるので、注意するように。三つ、十二時間経過後も諸君らは強制転移させられ、ここに戻るので、帰りのことは考えなくても良いので、安心してどんどん潜って行ってくれて、構わん。以上で注意点の説明は終了だ。十分後には試験を開始するので、それまで各々準備をするように』
拡声魔法を使った先生の長々とした話を聞き終え、僕はイリナのいるところへ行く。
「イリナ、今日はよろしくね」
「任せときなさい!私が誰も見たことのない最深部に連れて行ってあげるわ!」
イリナはそう言って、得意げに胸を張る。
「この試験の最深到達階層は三十階層らしいよ。それに学院の調査でも最深部がどこなのかは分かってないんだって」
「……ま、まぁ、最深部は無理だとしても、三十一階をとりあえず目指しましょ」
「うん、そうだね。何か完全に頼る感じになっちゃうけど、よろしくね」
申し訳ない限りではあるが、こういうところはありがたく恩恵を受けておくのが賢い生き方というものだろう。
「試験勉強のお返しだと思って、気楽にしてていいわよ。気づいた頃には三十一階よ!」
握り拳を作り、やる気を溢れ出させるイリナ。
僕は本当に記録を更新してしまうのでないかと、期待してしまう。
「おはようございます、お二人とも」
僕達が他愛もない話をしていると、後ろから声がかかる。
「サータリーファルさん、おはよう」
「レイラちゃん、おはよう!今日はお互い頑張ろうね!」
「はい、そうですね。お二人は一緒に試験に臨むんでしたよね?」
イリナの元気潑剌とした態度にサータリーファルさんは笑みを溢しながら、そう言ってきた。
「うん、僕はイリナに協力してもらうんだ。なんなら、サータリーファルさんも一緒にどう?」
サータリーファルさんがこのチームに加わってくれれば、最早怖いものは何もない。
最深部にすら行けてしまう気がしてくる。
「ありがたい提案ですけど、私は遠慮しておきます。一人で限界を試してみたいですから」
「それじゃあ、どちらがより下の階まで行けるか、競走ね」
「いいですね。やりましょうか、競走」
サータリーファルさんは穏やかな笑みのままそう言う。
サータリーファルさんって意外と人と白黒つけるの好きそうなんだよなぁ。
そんなことを話しながら、最終確認をしていると、先生の号令がかかり、図書棟の中へ案内される。
図書棟を進んで行くと、錠で閉ざされた巨大な扉が見えてくる。
『ここが迷宮の入り口だ。扉が完全に開いた瞬間から、試験は開始、全員好きなように行動するといい』
先生がそう言う中、扉はゆっくりと開いていく。
そして、全て扉が完全に開いた瞬間――
『それでは、実技試験開始!!』
一斉に生徒達は迷宮の中へと雪崩れ込んだ。
僕とイリナは事前に打ち合わせた通り、最後尾から前の集団を追いかけるように迷宮の中を進んで行く。
迷宮内の通路は意外と広く取られており、生徒達が一斉に入っても、詰まって全く動かない、ということにはならないようになっているようだ。
わざわざ僕達が後ろから行くのには理由がある。
単純に前の集団にゴーレムを倒して貰い、体力を温存しておきたいからだった。
ある程度のところまでは前に立つことはできないが、人が分散し始めれば、前に立つことも十分可能だ。
そして、僕達の予想通り、戦闘無しで一階、二階……と進んで行く。
五階まで行ったところで、途端に道が複雑になり始め、人が分散し始めた。
「ここからだね。でも手当たり次第に行くしかないよね?」
「それが、そういうわけでもないのよね……!」
そう言って、イリナが取り出しのは聖剣だった。
イリナは聖剣を地面と垂直に立て、妙な文言を唱え出す。
「『聖剣よ、我が道を示せ』!」
すると聖剣は薄い光を放って、しばらくゆらゆらと揺れた後、一つの通路の方に倒れた。
「……この方法で道を決めるのもいいけど、流石に馬鹿過ぎない?」
「馬鹿なのはアンタよ。聖剣っていうのはね、勇者の歩むべき道を指し示す何よりの羅針盤でもあるの。外れる時もあると思うけど、しらみ潰しに行くよりは遥かに効率的だと思うわよ」
そう言って、イリナは聖剣を拾い、左から二番目の道へ進む。
道が分岐する都度、聖剣を立て、道を占う。
すると、いつの間にか僕達は階段の前に立っていた。
「う、嘘でしょ……」
ここまで五回聖剣を立てる方法で道を選んできたが、一回しか行き止まりに当たることはなかった。
「ほらね!聖剣ってすごいでしょ?」
ある意味ズルとも思える間違った聖剣の使い方だとは思うが、その精度は驚くべきものだった。
「さ、次の階へ行きましょう?」
僕達は六階へと歩みを進めるのだった。
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