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 外に立たされ完全に不貞腐れていたローレンさんを引っ張り、僕達は早速調査に乗り出した。


 そうは言っても、先に帰ってしまったというフィアネル先輩を見つけ出すのは殆ど不可能に近いので、とりあえずは聞き込みをするということになった。


「三回生の一組となると……あ、旦那がいる」


 ローレンさんのボソッとした呟きを僕は聞き逃さなかった。


「じゃあ、ローレンさんがビーゼル先輩と話つけてきてくださいよ。有力な情報源ですよ」


「でもこんな時間まで残ってるか?」


「まぁ、とりあえず行ってみましょう」


 イリナの言葉に僕達は頷き、三回生一組の教室に向かう。


「えーと、旦那旦那っと……あ、居たわ」


 三回生一組の教室を覗くとそこには一人静かに本を読むビーゼル先輩が居た。

 ローレンさんは上級生の教室に物怖じすることなく入っていき、ビーゼル先輩の前まで辿り着く。


「旦那、少し時間いいか?聞きたいことがあるんだが」


「ん?ローレンか、珍しい。一体何の用かね?」


「ここで話すのも難だし、少し外で話そうや」


 ローレンさんはそう言って、教室の外を親指で指して、外に出るよう促すのだった。



「お久しぶりです、サータリーファル様。ご壮健そうで何より。それと君達は大会の時にもあったね。是非また手合わせ願いたい。それで今日はどのようなご用向きかね?」


 サータリーファルさんに深々と礼をし、僕達には気さくに話しかけるビーゼル先輩。

 サータリーファルさんに深々と礼をするのは魔貴族の当主であるからだろう。

 ローレンさんもサータリーファルさんの事情は知っているようで、驚いた様子は特になかった。


「この顔に見覚えあるだろ?この人のことで知っていることを教えて欲しくてな」


 ビーゼル先輩はローレンさんが懐から出した写真を見つめてから、少し困ったような顔をした。


「あー、話すこと自体はやぶさかではないのだが、私からその話を聞いてどうするつもりかね?」


 ビーゼル先輩は僕達が情報を悪用するのでないのかと、疑っているのかもしれない。

 良識ある人の普通の反応だろう。


「悪用するつもりはねぇから安心してくれ。その上で話せる限りのことを頼むぜ」


 ローレンさんも同じようなことを考えていたようで、そう前置きをして話を聞く。


「ならば良いのだが……何と言ったら良いのだろう……彼は明るくて活発な性格なのだが、少し奔放過ぎる。そのせいもあってか、良からぬ噂が絶えなくてな。ここからの話は又聞きだから、話半分に聞いてもらいたいのだが、どうも女遊びが激しいらしくてな、あちこちにちょっかいをかけているらしい」


「「「「…………」」」」


 僕達も薄々気づいてはいたのだ。

 しかし、見た目で人を判断するというのはよろしくない、そういう思いでこうして話を聞いている。

 だが、やはりというか、僕達の予感は当たってしまった。


 写真にはピアスやネックレスといった派手なアクセサリーをいくつも身につけ、明らかにチャラそうな男の姿が写っていたのだった。



 僕達は他何人かの生徒に話を聞いた後、三回生一組での聞き込みを切り上げて、部室に戻った。


「……あれ、どう思いますか?」


「十中八九黒だろ。あの依頼主も男に免疫なさそうだったし、この男に言葉巧みに騙されたクチだな」


 ローレンさんは呆れたように目を細めて、フィアネル先輩の写真を指でペチペチと叩きながら、ばっさりとそう吐き捨てた。


「やっぱりそうなんですかね……」


「ま、まぁ、そう決めつけるのも早いでしょ。とりあえず次は私達の目で確かめましょう?」


 イリナは最後の砦とも言える部分に話を進める。


「確かめると言っても、イリナさん、具体的にはどうするんですか?」


「そりゃあ、尾行ってヤツをやりましょうよ」


 フィアネル先輩を尾行してみて、彼がマクベス先輩以外の女性と会っている姿を見ることができてしまったら、それは僕達にとって何より信頼できる浮気の証拠になる。


「なるほど、分かりました。ではローレン、貴方明日の授業が終わったら、すぐさま教室を出て、学院の出入り口を張ってください。フィアネル先輩を見つけたらそのまま尾行するように」


「え、ちょっ、俺っすか?嫌ですよ、そんな面――」


 サータリーファルさんはそれ以上言ったら殺すぐらいの目でローレンさんを見つめる。

 しかし、不思議なことに顔は笑っている。


「……了解しました」


 ローレンさんは渋々といった様子で承諾する。


「ローレンからの連絡があるまで私達は学院内を見回りましょう。彼が学院内にのこるという可能性もありますから。連絡には通信魔法を使おうと思うんですけど、皆さん知ってますか?」


「僕は知ってるよ」


「俺も」


「……私知りません」


 イリナは恥ずかしそうに手を小さく挙げる。

 別に恥ずかしがることでもないだろうに。

 まぁ、おそらくイリナのプライドが許さないのだろうが。


「えーとですね、まずはこの魔法陣を発動してみてください……あ、はい、そうですね――」


 サータリーファルさんがイリナに魔法を教えている隙を見計らって、僕はローレンさんににじり寄る。


「ローレンさんのサータリーファルさんとの関係って何なんですか?」


 僕はサータリーファルさんに聞こえないように小声でローレンさんに話しかける。

 以前から気になっていたが、聞けていないことだったので、この際思い切って聞いてみようと思ったのだ。


「そりゃ、お前、そのまんまだろ。主と従者みたいな、主人と下僕みたいな」


「そういう関係になったきっかけは?」


「普通に奉公だ。細かい経緯は省くが、十歳ぐらいの時に腕を買われて、お嬢のボディーガード兼遊び相手みたいな役に任命された」


 かなりアバウトな話だったが、要点を掴むことはできた。

 おそらく十歳からの何年間で酷い扱いを受けたのだろう。

 それでサータリーファルさんには逆らえないとか、そんなところだろうと僕は勝手に予想した。


 更に深い話をローレンさんに直接聞いても良かったのだが、少し思い出しただけで、酷い顔色になっているので、とてもではないが、聞くことができる雰囲気ではなかった。


 そんなこんなで、僕達が時間を潰していると、サータリーファルさんのレクチャーが終わったようだった。


「では、改めて明日はよろしくお願いしますね、ローレン」


「へい、お任せください」


 サータリーファルさんの念押しにローレンさんはペコリと頭を下げて返事をする。


「今日はもうできることもありませんし、解散ということでいいですか?」


「あ、はい。それじゃあ、解散ということで」


 そんな光景を見て、僕とは実質的なこのサークルの支配者はサータリーファルさんなのだと実感するのだった。

 本作をお読み頂きありがとうございます。


 作者から二つお願いがございます。

 ずばり、ブクマ登録と評価です!!

 何卒、よろしくお願い致します。


 感想、質問なども、どしどしお寄せください。

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