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「……お前、あれで俺を超えたなんて思うなよ?」


 窓から日の光が入る部室で僕達はサークル活動をしていた。

 あれから三日が経って、部室にはいつもの日々が戻ってきていた。

 まぁ、『いつもの』などと言っても、まだそこまで慣れ親しんではいないのだが。


「この間のあれは僕が100%悪かったですよ、それは認めてます。だからこの間から謝ってるじゃないですか……だけど、一つだけ言わせてください。いつまでもネチネチしないでください。正直そろそろウザいです」


 ローレンさんは一日に五回はこのセリフを吐いてくるので、僕はもううんざりしていた。

 最初は怒るのも当然という顔をしていたイリナとサータリーファルさんだったが、今ではもう白い目でローレンさんを見ていた。


「ウザいってなんだ!俺には正当な権利があると思ってる!あの時は絶対勝ったと思ったのに!!」


「いや、だから反則負けとして賭け金は渡したじゃないですか。何がそんなに不満なんですか?」


 そう、僕は土下座と共に銀貨五枚をローレンさんに納めているのだ。

 あれで手打ちにしてくれればいいのに、未だにこんなことを言ってくるのだ。

 反則をした僕が言うのも難だが、大人気ないにも程がある。


「そりゃあ、お前、なんか気持ち悪いだろ?」


「……アンタ面倒臭わね」


 この場にいるローレンさんは以外の全員の気持ちを代表した一言だった。


「うぉーい!!今お前なんつった!?仮にもここの部長であるところの俺に今なんつった!?」


「ローレン、いい加減黙りましょうか」


 美しく、そして冷たい笑みをローレンさんに向けるサータリーファルさん。


「ひぃぃぃ!!?」


 途端にローレンさんは震え上がり、黙り込んでしまう。


 再び部屋が静まり返るかと思った僕達であったが、そこでドアがノックされた。


「どうぞ」


 まだプルプルと震えているローレンさんに代わり、サータリーファルさんが返事をする。


「失礼する」


 返ってきたのは凛とした女性の声、その後にドアが開けられ、声の主の姿が露わになる。

 端的に言って、声通りの印象だった。

 背筋は真っ直ぐで、歩き方も堂々としている。


「本日は依頼があって参上仕ったのだが……」


 えらく古風な喋り方をする女生徒はそう口にする。

 その言葉に僕達は思わず顔を見合わせてしまう。


「では、そこの空いている席にどうぞ」


 咄嗟に対応したサータリーファルさんが誕生席を指してそう言った。

 僕にとっては初めての依頼ということもあって、緊張からか、言葉が全く出てこなかった。


「ありがとう……それで何でも依頼を受けて頂けるというのは本当なのだろうか?」


「はい、依頼の内容にもよりますが、できる限りお力になれればと思っています」


「そうか!……んんっ、では私の依頼を聞いてもらおうか」


 パッと顔を輝かせた後、恥ずかしくなったのか咳払いを一つし、彼女は話し出した。


「こんなことを初対面の方に言うのは不躾だとは思うが、私には一つ下の恋人が居てだな。彼の様子が最近おかしいのだ」


 喋り方や風貌からは考えられない彼女の悩みに僕達は一瞬息を飲む。


「私が一緒に帰ろうと言っても、付き合ってくれないし、何か用事があると言って、私より先に帰ってしまうのだ。最初は単なる所用だろうと思っていたのだが、その日を境にどんどん二人でいる時間が減っていくのだ……この話を聞いて、どう思う……?」


 徐々に元気がなくなっていき、最終的には少し涙目になりながら、上目遣いで僕達を見てくる女生徒。


 お、乙女だぁぁぁ!!古風な喋り方をしてても、えらく純情で可愛い乙女だぁぁぁ!!

 ま、まぁ、それはさて置き、僕はここで考えを巡らす。


 この人はおそらく、恋人の浮気を疑っている。

 直接見たわけではないので、何とも言えないが、怪しいと言えば、怪しい気がする。


「そりゃ、絶対浮気してんだろ」


 いつの間に復活したのか、少し不貞腐れたようなローレンさんはそんな爆弾発言をいきなり投下した。


「や、やっぱりそうかなぁ……?」


 当然、女生徒の瞳は更に潤み出し、今にも泣きそうになっている。


「そ、そんなことないですって!まだ何も分かってない状況なんです。貴方もそれを調べてもらう依頼をしにきたんでしょう?」


 僕は慌ててフォローを入れて、何とか泣かせないように努力してみる。


「ローレン、貴方はとりあえず廊下に出てなさい」


「え?」


「出てなさい」


「……はい」


 凄みを利かせたサータリーファルさんの声にローレンさんは顔を青白くして、部室を出ていく。


「まぁ、そういうわけで、貴方が私達に依頼したいのは浮気調査ということでいいんですか?」


「う、うむ。そういうことだ。頼めるか?」


「勿論です。一応貴方とその恋人さんの名前と所属している組を教えておいて頂けますか?恋人さんの方は顔写真とかもあるとありがたいんですけど」


「ああ、申し遅れた、私は三回生一組のシーラ・マクベスだ。彼は同じく三回生一組のロイ・フィアネル、それとこれが彼の写真だ」


 そう言ってマクベス先輩は懐から恋人のものと思われる顔写真を取り出す。


「これ、少しの間お借りしても良いですか?」


「勿論だ。では、一週間後にまた来るから、その時に経過を教えてくれ」


 マクベス先輩はそれだけ言って、部室を後にする。


「イリナとサータリーファルさんはどう思う?」


 僕はマクベス先輩の足音が聞こえなくなるのを待ってから、周りの意見を聞いてみる。


「まだ何とも言えないでしょ。でもあの先輩、少し急いでいるように見えたわね」


 確かに最後のマクベス先輩は少し急いでいるように見えた。

 何か用事でもあったのだろうか?


「私もまだ何とも。とりあえず調べてみるしかないでしょう」


 そうして僕達は席を立つのだった。

 本作をお読み頂きありがとうございます。


 作者から二つお願いがございます。

 ずばり、ブクマ登録と評価です!!

 何卒、よろしくお願い致します。


 感想、質問なども、どしどしお寄せください。

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