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「それで、進捗はどうかね?」


 人がまばらになった教室で、その会議は行われていた。

 その中の一人が低い声を出して、『計画』の進捗状況を仲間に問う。


「いや、何なんですか。この雰囲気」


 そんな重苦しい雰囲気をぶち壊したのは僕だった。

 結局のところ、会議は二人で行われていて、このふざけた雰囲気を作り出したのは、言うまでもなくローレンさんだ。


「ちぇっ……せっかくなんだから、このノリに付き合えよ」


「ノリでメンバーが集まりますか?」


「……お前の方こそ担当してくれそうな先生は見つかったのかよ?」


 ローレンさんは決まり悪そうにそっぽを向きながらそう言う。


「僕はとっくの昔に見つけてます。具体的には一週間前。それで、ローレンさんの方はどうなんですか?」


 酷いことを言うようではあるが、ローレンさんがまともにメンバーなんぞを見つけてこれるはずがない。

 それは分かっているのだ。

 しかし、こんな態度を取られると流石に突っ込んでみたくなる。


「……メンバーが見つからないのは条件に合う優秀な奴が見つからないからだ。よって――」


「自分のせいではないと?」


「だあぁぁぁぁぁぁ!!少しはお前だって手伝ってくれたっていいんじゃん!?なんかお前の方が交友関係広そうだし!」


 どこまで本気で言っているか分からないが、自分が悪いわけではないと主張するローレンさん。


「ちょっ、逆ギレですか!?僕もう与えられた仕事はクリアしてるじゃないですか!?なんで僕がローレンさんの分まで頑張らなくちゃいけないんですか!?仮にも貴方リーダーでしょ!?それに交友関係が広いってなんですか!僕一回生でしかも人間族ですよ!?そんなのがクラスどころか学院に馴染めてるわけないでしょ!?」


 このローレンさんの態度には我慢できず、僕は大声を上げてしまう。

 しかし、今回ばかりは僕に落ち度はない。

 純度100%、全てにおいて、ローレンさんが悪い、僕はそう信じている。


「…………すまん。だけど頼むよっ!今の俺には頼りになるのがお前しかいないんだよ!少しでもいいから、やってくれそうな心当たりないか?」


 そう言われると、僕はやっぱりこの人を邪険にはできない。

 第一僕は一応サークルのメンバーなのだ、手伝うのは至極当たり前とも言える。


「僕もさっき言った通り、交友関係は広くありません。だから紹介できる人なんて、数える程しかいません」


「それでもいいから頼む!」


 そう言って、再度手を合わせて頭を下げてくるローレンさん。

 ここまで言われて僕は後悔した。


 さっきは数える程なんて見栄を張ったが、お願いできる人なんて、およそ二人しかいない。

 しかもその内の一人はまずサークルに参加してくれなさそうな人だ。


 しかし、ダメ元でもやってみるしかあるまい。

 僕達は現時点で二人しかいないのだ。

 その二人をサークルに引き込むことができなければ、呼び込みや勧誘をしなければならなくなるのだ。


 それは聞くからに面倒臭そうなものだし、見知らぬ仲よりは見知った仲で始める方が僕にとってはハードルも低い。

 よって、呼び込み、勧誘は僕の本意ではないのだ。


「……分かりました。とりあえず話してみましょう」


「おぉ!!じゃあ、早速その人達を当たってみようぜ」


「気が早いですって。その人達はもう帰っちゃいましたから、明日聞いてみます。それより、活動内容をもう少し具体的なものにしましょう。そうすれば、入ってくれる確率も上がるかもですよ」


 正直なところ、心配なのだ。あんなふわっとした活動内容のサークルに一体どんな人が入ってくれるのか。

 あんなものでは入ってくれる人も入ってくれない。


「それもそうだな。だけど具体的にって、どんな感じにするんだ?」


「あー、そうですね……少し気分変えてどこか行きません?このままここにいると良い案が思い浮かびそうもないです」


 頭が徐々に冷えてきて、僕はここが自分の教室であったことを思い出す。

 そして、大声を上げて騒いだりしていた僕達が熱い視線を集めていないわけがなかった。

 要するに恥ずかしくなったのだ。


「どこかって、どこに行くんだよ?」


 ローレンさんは特にこの教室内の空気を気にした様子もなく、どちらでも良いといった感じの声音だ。


「この間街に雰囲気が良さそうな喫茶店があるのを見つけたんですよ。行ってみませんか?」


「へぇー……俺はあんまりそういうところに行かないもんでな。まぁ、この際入ってみるのも悪くなさそうだな」


「じゃあ、行きましょうか」


 そう言って僕は速やかに教室を後にしたのだった。



 雰囲気が良さそうだとは言ったものの、ただ単に裏通りにある『知る人ぞ知る名店』といった雰囲気を醸し出していた喫茶店で、実際に入ってみたことはおろか、じっくり観察してみたわけでもない。

 直感で良さそうだと思っただけなのだ。


 まぁ、それ程あの教室から逃げ出しかったのだとローレンさんにはご理解頂く。別に口には出さないけど。


「どうです?結構良さそうじゃありません?」


 店の前まで来た僕はローレンさんの感想を求める。


「まぁ、確かに落ち着いた雰囲気はあって良いかもな」


「気に入ってもらえて良かったです。時間ももったいないですし、入りましょうか」


 店のドアを開けるとからんからんという爽やかな鈴の音がする。

 外観通り、店内は非常に静かで落ち着いた雰囲気だ。

 言い方を変えれば賑わっていないということになるのだろうが。


「いらっしゃいませ!」


 ウェイトレスさんの元気の良い声が聞こえた。

 しかし、僕はここで重大な違和感を覚えた。

 声はかなり若く、殆ど同年代といって差し支えない年齢だろう。


 だが、違和感をもったのはそこではない。

 僕は店の内装に向けていた目を声の主の方へ持っていく。


「二名様でいらっ……あっ」


「お、お前、こんなところで何してんだ?」


「アンタ達こそ、こんなところで何してんのよ!?」


 そこにいたのはウェイトレス姿のイリナだった。

 本作をお読み頂きありがとうございます。


 作者から二つお願いがございます。

 ずばり、ブクマ登録と評価です!!

 何卒、よろしくお願い致します。

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