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「で、だ。さっきは邪魔が入ったが、サークルについて真剣な検討してくれねぇか?」
どの辺が『で』なのかはさておき、ローレンさんは懲りずに放課後まで僕達の教室に来た。
確かに今回は強い意志があるのかも知れないが、活動内容も決めていないような計画性のないサークルに入るというのは流石に心配なのだ。
ちなみに教室には僕を含む数名の生徒しかいない。
イリナもサータリーファルさんも何か用事があると言って、ホームルームが終わるなり、一瞬で姿を消してしまった。
「……一応聞いておくんですけど、サークルって何か知ってますか?」
「そりゃあお前、サークルってったらアレだろ、アレ……えーと、メンバー集めて何かするみたいな」
なるほど。ローレンさんがサークルにどれ程の理解を持っているのかが分かった。
「じゃあ、聞くんですけど、何を思ってサークルを立ち上げようと思ったんですか?」
「理由は特にない!だが、活動内容は考えてきた。聞いて驚けよ……?ずばり『コレ』だ」
そう言って、ローレンさんは親指と人差し指を使って、輪っかを作る。
「お金、ですか?」
サークルの活動資金を不正利用しようとしているのではないか、という嫌な妄想に駆られたが、それは杞憂に終わる。
「おうよ。俺が設立しようとしてるのは金を稼ぐサークルだ。具体的には放課後に冒険者稼業をやったり、バイトしたりとな。どうだ?少しは興味ねぇか?」
昼休みに活動内容のことを言われて、考えた末の案だとすれば、サークルの活動としては良いのか気になるが、まぁ、納得はできる。
「でも何でお金なんですか?」
ローレンさんの家の事情など知る由もないのだが、僕が見たところ、彼がお金に困っているようには見えない。
「あ?金なんてあって困るもんじゃねぇだろ。将来自分が名をあげる為の資金調達ぐらいに思ってくれ。さっきも言ったが、俺はとにかくサークルがやりてぇんだ!」
そう子供のように駄々をこねるローレンさん。
そんな彼を横目に僕は真剣に考えを深める。
まず、サークルを作ることになったとして、あの活動内容が学院側に認められるか疑問だ。
よしんば、認められたとしても、サークル設立に必要な規定人数である最低四人を集められるか。
このようにかなり厄介な問題があるわけだが、名前を貸すぐらいは別に良いだろうと思った僕は参加を承諾することにした。
「よっっっしゃぁぁぁ!!改めてよろしくな、シオン!」
ローレンさんは嬉しそうに大きな声を上げる。
「あー、でも、本当に設立できるんですか?設立には最低四人のメンバーと顧問の先生が必要って知ってますよね?」
僕は恐る恐るローレンさんに問うてみる。
「え?そうなのか?」
不本意ながら、前途多難な答えを頂いてしまった。
「まぁ、分かりました。メンバーの方は分かりませんけど、顧問の先生にはあてがありますから、それについては任せてください」
あてというのはアリステラ先生のことなのだが、あの人のことだから適当に了承してくれるだろう。
まぁ、面倒臭がって受けてくれないというのも十分にあり得るのだが。
「分かった。俺も特にあてがあるわけじゃないが、メンバーをやってくれそうな奴をあたってみる」
ローレンさんはそう言うと、それじゃ、とつけ加えて、教室を去っていった。
ローレンさんを見送った後、僕はすぐに動き出す。
早速アリステラ先生に話を通しにいくのだ。
教員室を覗くとアリステラ先生はすぐに見つかった。
何やら書類の整理をしているようだった。
「アリステラ先生、今お時間よろしいですか?」
「ん、ああ、ライトヒルトか。どうした?」
アリステラ先生はいつもと変わらず気怠げにこちらを向きながらそう言った。
こんな顔をされると、こちらは言いづらくなるのだが、それで引き下がるわけにもいかない。
「サークルと顧問をお願いしたいんですけど、良いでしょうか?」
僕が言うと、先生は先程まで眠た気だった目を少し見開き、驚いたような顔をする。
「お前が立ち上げるのか?」
「いえ、僕はあくまでメンバーです」
「そうか……分かった。その話引き受けよう。もう人数は揃っているのか?」
意外にもすんなりと引き受けてくれる先生。
絶対凄い面倒臭そうな顔をすると思ったのだが。
「えっと……それは今探しているところです」
「それならメンバーを揃えてからもう一度私の元に来い。その時には必要書類にサインすると約束する」
「分かりました……え、本当にいいんですか?」
失礼なことだが、この人がここまですんなり引き受けてくれるというのははっきり言って、異常事態というか、何かあるのではと邪推してしまう。
それで僕は思わず聞き返してしまったのだ。
「何だ、自分から言っておいて。まぁ、甥の頼みだ、そう邪険にするものでもないだろう。そう思っての行動だったのだがな。不満か?」
「いえいえいえいえ!滅相もございません。ありがたき幸せです」
「ふっ、なら良い。私はまだ少し仕事が残っているから、今日のところは帰ってくれ」
僕の変な口調に少し笑みを溢しながら、書類の整理に戻る先生。
それにしても思ったよりも早くことが済んでしまった。
顧問の件を受けてもらえるとしても何か交換条件で、みたいなものを想像していたのだが、全くそんなことはなかった。
やることもなくなったので、僕は教員室からそのままの足で玄関に向かう。
しかし、その途中で僕は見知った声に話しかけられる。
「ちょっと時間いいかな?」
そう言って、僕の後ろから声を掛けてきたのは、この学院の最高責任者たるルキフグス・ブラドーラその人であった。
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