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036

 人の目に触れることない空の彼方、それはそこに()()()()()


 人が見れば万人が万人振り返るであろう流麗なフォルムのそれは空を走り抜けるように途轍もない速さで進んでいく。


 その天翔る船の艦橋では、これまた万人が目を見張るであろう美しい見目の男女が指揮を執っていた。


「後何時間で到着ですか?」


 一方は透き通る海のような深い色の青髪の少女。

 艦橋の一番高い位置に座った少女は目をキラキラさせて、待ち切れないといった様子で船員に問いかける。


「目標まで後二時間です」


 薄暗い艦橋で怪しげに光る機器を操作しながら、船員の一人が答える。


「艦長、まだ出発してから三十分程しか経っていませんよ?」


 そして、もう一方の金髪で整った顔立ちのした青年が苦笑しながら、少女に話しかける。


「あら、ごめんなさい……」


 少女はしゅんとした表情を浮かべ、申し訳なさそうにそう答える。

 そういう意味で、この船の艦長と呼ばれた少女にはそれらしい貫禄は全くと言って良い程なかった。


「いえ、私こそ差し出がましいことを申しました。この艦の全ては貴女の物です。艦長のご命令を頂けるのが皆、至上の喜びです」


 青年は慇懃に頭を下げた後、そう続けた。

 こちらはまさに副官、副艦長と言った感じであった。


「第一から第八までの魔力生成機(リアクター)の生成魔力を全て推進力に回してください。残り四つの魔力生成機は艦の維持に」


 続いて青年は船のエネルギー源たる魔力生成機の振り分け指示を出した。


「了解……速度上昇、目標到着時刻、三十分早まります」


 その報告を聞いた少女は花が咲いたような笑顔を浮かべた。


「ありがとう、カリ!」


 少女の笑顔を見た青年も爽やかな笑みを浮かべ、一礼する。


「あの『約束の人』にもうすぐ会えるのですね!」


 少女は首から下げたロケットに入った小さな写真を見つめ、更にその笑顔を輝かせるのだった。



 六月になり季節は夏の入り口に差し掛かった。

 しかし、魔族領は北の国、残念ながらそこまで暖かくはない。


 僕は通い慣れてきた路地裏通学を今日もする。

 路地裏に《転移》し、歩き出そうとしたその時、後ろから何かが当たった。


 おそらく僕の急な《転移》に止まることができなかった人だろう。

 僕はそう思い、後ろを振り返る。


「ごめんなさい!私急いでますので失礼します!」


 つばの広い帽子を被ったその女の子はそれだけ言うと僕が謝る間もなく、凄い速さで走り去ってしまう。


「何やってんのよ?」


 頭をかきながら、やってしまったと思っていると、イリナが通りかかった。


「……何でもない。遅れる前にさっさと行こう」


 人に話すことでもないと判断した僕はイリナに何も話さず、大通りに出て学院を目指すのだった。



「おはよう。突然だが、今日は転校生を紹介する。入ってこい」


 いつもならすぐに解散になるアリステラ先生のホームルームであったが、今日はそうではなかった。

 この変な時期に転校生が来ることに若干の違和感を覚えながらも、僕は大人しく話を聞く。


「レイラ・サータリーファルです。皆さんよろしくお願いします」


 転校生の女の子が挨拶した瞬間、クラスがどっと沸き立つ。

 理由は単純明快、その女の子がこの世のものとは思えない程の美少女だったからだ。


 僕も例に漏れず声を上げそうになったのだが、イリナにギロっと睨まれて、その声をぐっと飲み込んだ。

 まぁ、確かに女子からすれば良い気分ではないだろう。


 僕はイリナのせいでさらっとしか見ていなかった転校生の方に目を向ける。


 まず目に入ったのは海のような深い青色の髪だ。

 艶やかなその青髪は光を綺麗に反射しており、その様はまさに陽光を受けて光る海だ。


 次に僕が目を奪われたのはその異様なまでに整った美しい容貌だ。


 イリナのような美人を毎日目に入れている僕ではあるが、彼女のそれは少し違っていた。

 何と言ったら良いか分からないが、計算された圧倒的な美しさを感じたのだ。


 ちなみにスタイルも抜群に良く、これも男子受けがここまで良い理由だろう。


「サータリーファルの席は……どこも綺麗に埋まっているみたいだから、好きに選んで三人席にしてくれ。以上で連絡は終了、授業の準備をするように」


 そう言って、右も左も分からないサータリーファルさんを置いて、教員室に戻る我らが担任教師。


 サータリーファルさんの方に再び目を向けてみると、座ることもできずにクラスメイト達に囲まれていた。


「僕にあれに混ざる勇気はないな。イリナはどうする?」


 クラスメイトと言っても囲んでいるのは全員魔族、僕にあれを掻き分けていく勇気はないのだ。


「私もそんな勇気、ない……えぇっ!?」


 イリナは僕の方を一瞥した後、転校生の方に目を向け、一瞬目を細めてから驚いたような声を上げた。


「サータリーファルさんがどうかしたの?」


 彼女の美貌に驚いたのか、人の多さに驚いたのか、それは定かではないが、くりっとした目はいつもより大きく見開かれ、明らかに驚いている。


「サータリーファルさんって、アンタ……そう言えばアンタってどれくらい昔のこと覚えてる?」


 全く脈絡のない質問だったが、僕はイリナと遊んでいた頃のことを思い出してみる。


「結構覚えてるはずだよ。それがどうかしたの?」


「二、三回しか遊んでないけど、あの頃私の他に凄く仲良くなった子がいなかった?」


 残念ながら僕にとって仲の良い友達というのは非常に貴重な存在であったので、仲良くなった子のことは良く覚えている。

 勿論そのこの子のこともよく覚えている。


「名前は結局聞かなかったけど、確かに仲良くしてた子はいたね。本当に二、三回しか遊べなかったけど」


 それと今の状況に一体何の関係があるのかが未だに読めてこない。


 僕が頭の上に疑問符を乗せているのを感じ取ったのか、イリナは本当に呆れたような顔をして、そのまま黙って座ってしまった。


「シオンさん、やっと見つけました!」


「へ?」


 聞き覚えのない声に呼ばれたと思い、声のした方を見てみるとそこには先程まで質問攻めにされていたはずのサータリーファルさんが立っていた。


 そこで思わず僕はピンときてしまった。

 この子、多分朝ぶつかった時の子だ。


「人違いじゃなかったらいいんだけ――」


 しかし、僕はそこで言葉を止める。

 否、止めさせられたと言った方が正しいだろう。

 何故なら僕の唇をサータリーファルさんの唇によって塞がれたいたからだ。


「んっ!!?……む、んっ、んんっ!!……は、はぁっ!」


 いきなりの口づけで息が切れそうだったが、やっとことで解放してもらえる。


 一瞬何が起こったか分からなくなって、夢か何かと疑ってしまったが、唇に残る仄かな温かさと甘さが夢などではないと物語っている。


「き、君は一体何を!?」


 僕は反射的に口元を腕で覆い隠しながら、そう言葉を発する。


「失礼しました。お忘れかも知れませんけど、私、シオンさんと結婚の約束したレイラです。改めてこれからよろしくお願いしますね、旦那様!」


 全身が凍りつく程の可愛らしい笑みを浮かべて、サータリーファルさんはそう言うのだった。

 本作をお読み頂きありがとうございます。


 作者から二つお願いがございます。

 ずばり、ブクマ登録と評価です!!

 何卒、よろしくお願い致します。

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