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 暇だ、もうこの上なく暇だ。

 本格的にそう思い始めたのはイリナが出て行ってから三日後の今日だった。


 今まで僕は家で何をやっていたのかということを思い出してみると、大抵は剣を振っているか、勉強しているかの日々だった。


 今考えてみると、なんともつまらない日々だ。


 まぁ、昔のことはともかくとして、この暇さは体に悪いとまで思ってしまうのだ。


 そう思った僕はフレイの部屋を訪ねてみることにした。


「いや、それって完全な暇つぶし先に選ばれたってことじゃないですか」


 フレイは半眼で床にどっしりと座っている僕をジトーっと見つめてくる。

 僕はその視線に気づかない振りをしながら、フレイの部屋にあった本を読む。


「まぁ、そうとも言うね」


「その本貸しますから、出て行ってくれません?」


 フレイは溢れ出る嫌悪感を隠さずに、僕に吐き捨てるように言う。


「……ところで、今は何やってるの?」


 僕は堂々と話題を転換して、少し気になっていたことを問うてみる。


「露骨過ぎです!もう少し自然な流れで話を変えられないんですか!?」


 フレイは僕のあまりにずさんな態度に声を上げる。


 しかし、どうやら話してくれる気ではいたようで、すぐに言葉を続けて、机に向かって何をやっているのかを教えてくれる。


「見てください!私は魔法陣を覚えているんです!自分がこの上なく邪魔な存在だと理解したなら、一刻も早くここから出て行ってください!」


 無い胸を張りながら、得意げに魔法陣が描かれた本――魔法書を僕に見せつけ、出て行けと言うフレイ。


 なるほど、これで流石に出て行くと思って、わざわざ説明したわけか。


 しかし、どうやら僕はこれによって合理的な理由でここにいることができるようになったようだ。


「ちょっと、ペンと紙借りるね」


 僕は勝手にペンと紙を借りて、そこに魔法陣を描き始める。

 描く魔法陣はフレイが今開いているページに載っている汎用攻撃魔法《火球》だ。

 しかし、僕の描く魔法陣は魔法書に載っている物とは少し違う。


 僕はさくっと魔法陣を描き終えると、それをフレイに渡す。


「何を描いたかと思えば……こ、これって……!?」


 フレイは目を大きく見開いて、魔法陣が描かれた紙を見入っている。


 そう、僕が描いたのは伯母さんから学んだ魔法陣――つまり、機能性が数世代進んだ魔法陣だ。


「それは僕が伯母さんから習った魔法陣だよ。僕ならフレイにとって価値ある情報を伝えてあげられると思うよ?」


 フレイは口惜しそうに唇を少し噛んで、紙を親の仇を見るような目で見つめている。

 僕に頼るのが本当に屈辱で堪らないようだ。


「あー……やっぱり教わるのは嫌だよな?悪かったよ、また君の気持ちを考えてなかった」


 なんだか僕の方が悪いことをしているような――というかしているのだろう――気になって僕は部屋を立ち去ろうと思い、立ち上がった。


 それにしても本当に嫌われている。

 以前のような関係に修復するのは最早不可能なのかも知れない。


 しかし、僕の歩みは後ろから服を引っ張られることによって止められた。


 僕は驚きを隠せず、慌てて後ろを振り返り、誰が引っ張ったのかという決まり切った答えを一応確認してしまう。


 それ程に僕にとっては予想外の出来事だったのだ。


「……私ももう子供じゃないですから、つまらないことで意地は張ってられません……だから、教えてください」


 フレイは気恥ずかしそうに顔を赤らめながら、目線を横にそらしてそう言った。


 不覚にも僕は妹のその顔に釘づけになってしまって、しばらく見つめてしまった。

 若干高鳴ってしまった胸の鼓動を押さえつけ、僕は返事する。


「うん、分かった」


「ありがとう、ございます……」


 僕達はそのままの体勢で固まってしまう。


「「…………」」


 この気まずくなった空気はフレイが椅子に座ったことで解消された。


「《火球》は分かったので、次はこの魔法を教えてください」


 フレイは魔法書を指差して、僕にそう言った。

 落ち着きを取り戻した僕はフレイが指差す魔法陣を見て、記憶を辿って僕の魔法陣を書き出して行く。


 これを何回か繰り返しているうちに事務的なことというのもあってか、今まで感じていた会話する時の違和感がなくなっていった。


「とりあえず今日の分は終わりです。ありがとうございました」


 そう言って、ぺこりと頭を下げてくるフレイ。


「こんなの当然だよ。僕達家族なんだし」


 それに覚えている魔法陣を外に出すだけの簡単な作業だ、わざわざお礼を言われるまでもない。


「……それもそうですね。でもお世話になったのは確かですから」


 フレイは考えるような素振りを見せてから、少しだけ微笑んでそう口にした。

 僕もそんな風に思ってくれているのが、なんだか嬉しくなって、ついつい笑みが溢れてしまう。


「じゃあ、僕は自分の部屋に戻るよ。また何か聞きたいことがあったら言ってね。出来る限り力になるから」


「ええ、今日は本当にありがとうございました」


 僕はそれを聞いてから、今度こそフレイの部屋を後にする。


 今日は思いの外充実した日を過ごせた気がする。

 これからはもっと仲良くなれればいいな、と僕は思うのであった。

 本作をお読み頂きありがとうございます。


 作者から二つお願いがございます。

 ずばり、ブクマ登録と評価です!!

 何卒、よろしくお願い致します。

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