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「フレイに許してもらうことができました」


 何はともあれ、一応許してもらえたことには間違いないので、僕はイリナに報告しにきたのだった。


「あっそ、良かったじゃないの」


 僕には目もくれず本に没頭しているようだが、一応そう言ってくれる。

 今思えば、お祭りの日にイリナはなんとなく気を遣ってくれていた気がするのだ。


「ありがとう」


 だから僕はお礼を言っておく。


「は?私お礼を言われるようなことした?」


 あくまでも認めないのか、それとも意識してやったことではないのか、どちらにしろ助けてもらったことには間違いない。


 しかし、イリナはまだ一回もこっちを見てくれない。

 そんなに面白い本なのか?


「その本、どういう本なの?」


 僕は興味本位でイリナに聞いてみる。

 イリナが勧めてくれるなら、僕も読んでみたいと思ったのだ。


「べ、別になんでも良いでしょ。ほら、話が終わったなら、さっさと出て行ってよ」


 イリナは少し顔を赤らめて、気恥ずかしそうに言う。

 これは怪しい……一体どんな本を読んでいるんだろう?


「本見せるぐらいどうってことないでしょ?僕もイリナが読み終わったら読んでみたいから、どんなものか教えてよ」


 いつもはこの辺で引いてしまうが、僕も聞いていいラインというのが分かってきた。

 僕の感じた限りではこれは聞いてもいいヤツなのだ。


「しょ、しょうがないわね……!こ、これはね、その……お、王女と幼馴染みの平民が駆け落ちする話なこよっ!」


 イリナは興奮気味にまくし立てながら、若干早口に言う。

 あー、なるほど。

 イリナは恋愛物を読んでいて、それが少し恥ずかしくて見せたくなかったのか。


「へー、面白そうだね。読み終わったら僕に貸してよ」


 僕はイリナを刺激しないように普通に返答する。


「…………」


 するとイリナは顔を少し伏せて、ビクビクと肩を震わせる。

 ん?何故急に肩を震わせる?僕何か変な対応したか!?


「な、何か気に障ることでも言った?」


 明らかに不機嫌な雰囲気を感じ取った僕は早めにフォローを入れる。


「何でもないわよっ!もう出て行け!!」


 さっきの何倍も顔を赤くして、声を荒げるイリナは僕の背中をげしげしと蹴りながら、僕を部屋から追い出す。

 僕が何を失敗したって言うんだ……。



 というわけで二週間も使うこともなく、一応の目的を達成してしまったわけで、当然僕は暇なのだ。


 街は昨日から一週間の間、建国記念祭を行っている。

 昨日だけで既に色々な場所に行ってしまったが、あまりにも暇を持て余していた僕は街に繰り出すことにした。


 街はお祭りムード一色、裏通りにでも入らない限り、喧騒は絶えず耳に入ってくる。

 そんな音をバックミュージックに僕は大通りも何の目的もなく、ぶらぶらと散策する。


「あ?お前シオンじゃね?」


 しばらく歩いていると、横から聞き覚えのない声に声をかけられる。

 僕は若干嫌な予感を感じ取りながらも、顔を横に向け、相手の顔を確認する。


「君達は……誰?」


 そこには明らかに軽薄そうな感じの男達がいた。

 皆、髪は地毛とは思えない派手な色に染め上げられ、手にはいくつもの指輪などのアクセサリーを身につけている。


「俺だよ俺、ライオスだよ」


 ライオス、ライオス……ああ!昔そんな友達がいた気がする。


 勿論僕の《スキル無し》が発覚する前は僕にも普通に友達がいたわけで、その友達にあたるのがこのライオス君だ。


「思い出したよ。皆元気にしてた?」


 僕は社交辞令的かつ事務的にそう返す。

 あまり話したくない相手ではあるが、もうそこまで気まずいというわけでもない。


「あん?ライオス、こいつ誰よ?」


「何々、俺達以外にも付き合いがあるわけ?」


 ライオス君の左右にいる男達が僕を見ながらライオス君に問いかける。

 どうやらこの二人は僕の友達ではなかったようだ。


「そんなんじゃねぇって!ほら、お前らも昔聞いたことがあるだろ?《スキル無し》の噂、それがこのシオンってわけだ」


 ライオス君はなんの躊躇いもなく、少し茶化すように言った。

 僕の嫌な予感は当たりそうな気がしてきた。


「マジかよ!お前があの《スキル無し》か!」


 好奇心に目を光らせた男はそう聞いてくる。


「ま、まぁ……」


 僕は頰を掻きながらそう言う。

 これは間違いなく面倒くさいことになる流れだ。


「へぇ、そうなんだ……じゃあ、俺達友達ってことで、少し『お使い』頼んでもいい?」


 ニヤニヤとした、いやらしい笑み。

 こういう笑みは僕を下に見ている何よりの証拠だ。

 僕は二年前、これを何度も見てきた。


「……分かった」


「行ってくれんのか、シオン!とりあえず俺達はここでアクセ見てるから、そこら辺で串刺し肉買ってきてくれ」


 そう言いながら三人は既にアクセサリーを見ている。


「じゃあ、三人分のお金渡しといてくれる?」


「あー、面倒くさいから建て替えといてくれ。後で絶対返すから」


 ライオス君は僕の方を見ずにそう言う。

 僕はため息を吐きながらも、仕方なく三本買ってくることにした。



「買ってきたよ」


「おーう」


 ライオス君はそれだけ言って僕の手から串を取っていく。

 残りの二人も同じようにして取っていった。


「代金は銅貨十五枚ずつだったよ」


 僕は代金を『一応』請求する。


「後で渡すからまずは――」


 僕は全てを聞き終える前に《転移》したのだった。

 本作をお読み頂きありがとうございます。


 作者から二つお願いがございます。

 ずばり、ブクマ登録と評価です!!

 何卒、よろしくお願い致します。

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