024
日も大分落ちてきて、そろそろ父さんとフレイが帰ってくるという時間になった。
「シオン、そろそろ夕飯にするから、イリナちゃんを呼んできてくれる?」
「うん、分かった」
母さんにフレイのことを聞いたところ、そこまで良い反応は貰えなかった。
僕の思っていた通り、未だに溝は深いままということだろう。
「イリナ、母さんがそろそろ夕飯にするって」
「分かったわ!もう少ししたら、そっち行く!」
ドア越しに少し大きめの声が聞こえる。
なんだかもう自分の家と言った感じだ。凄まじい適応力。
僕は階段を降りながら、フレイと会った時の対応策を考える。
おそらく最初はまともに話してくれさえしないだろう。
しつこく話しかけて、ようやく嫌々ながらも『何です?』という言葉が返ってくる、僕はこのぐらいの気持ちでいる。
それが一年前のフレイから想像した反応だ。
と、そんなことを考えていると、家の玄関のドアが開いた。
「「ただいま」」
もう幾度となく聞いてきた、けれども懐かしい声が家に響く。
「お帰りなさい。今日は二人がびっくりするようなお客さんが来てるわよ」
「おお?そりゃ誰だぁ?……シ、シオン!帰ったのか」
父さんは母さん程驚いていないようだが、それでも目を大きく見開いている。
肝心のフレイは何も言いはしないが、父さんと同じように目を大きく見開いて、おまけに口をぽかんと開けている。
「うん。久しぶり、父さん、フレイ」
フレイは少ししてからはっとして、無表情な顔で僕の顔一度見て、目を逸らす。
やはり溝は深いようだ。
「それでもう一人のお客ってのは誰なんだ?」
「ああ、それは――」
僕が言おうとしたところで、洗面所に向かおうとしていたフレイが足を止める。
「おじさん、フレイちゃん、久しぶり。お邪魔してます」
イリナの声がした瞬間、父さんの顔は驚愕に染まり、口をぱくぱくさせている。
「こ、こりゃあ、どういうことだ!!?」
「まぁ、とりあえず夕飯を食べましょう」
母さんは二度手を叩いてその場を収める。
皆が席に着くと、母さんが今回僕達がここに来た経緯と僕達に話したことと同じ話を再度する。
同じ話をするのは何も知らないフレイの為だろう。
「じゃ、じゃあ、兄様が《魔王》のスキルを持っていたにも関わらず、それが発現しなかったのは母様が封印を施したからということですか!?」
フレイは今までにない程に目を見開かせ、口を震わせている。
フレイには本当に辛い思いをさせてしまった。
彼女は僕と何の関係もないはずだったのに。
「本当にごめんなさい……」
「い、いえ、母様が謝ることじゃないですけど……」
本来なら躊躇いなく僕に向くはずだった怒り、恨み、悲しみ、それらの複雑な思いが行き場をなくして、フレイの心を掻き乱しているのだろう。
この件に何の関係もなかった彼女が頭の整理に必要な時間は当事者たる僕の比ではない。
「……ご馳走様。少し一人にさせてください」
そう言って席を立ち、足早に自分の部屋に戻っていく。
「親としては下の下だが、人間としてやることに間違いはなかった。それだけは分かって欲しい。他のことは母さんが言っちまったみたいだから、俺から言うことはそれぐらいだ」
父さんもそれだけ言って、自分の食事を再開した。
しかし、一口食べたところで父さんはまた手を止めた。
「そういえば、話は変わるが、二人とも、明日から建国記念祭ってのは知ってるだろ?気分転換にフレイも連れて三人で行ってきたらどうだ?」
いきなりの話に僕達は顔を見合わせてしまう。
「でも、イリナは顔が割れてるんじゃない?街に出たら大変なことになると思うんだけど……」
すると、父さんはニヤッと悪い笑みを浮かべる。
「それならとっておきの魔導具がある」
僕達は嫌な予感を感じずにはいられなかった。
「シオリ、す、素敵よ……ぷっ!」
そう今僕、いや私はシオンではなく、シオリだ。
そしてイリナは……。
「イ、イリナ……じゃなかった、イリオだって男じゃないか!」
「う、うるさいっ!」
僕の隣にはそれは見事な美男子が二人立っていた。
片方はイリオ、そして、もう片方はというと……。
「そんなこと言ったら、フレオ君は超美男子じゃない!」
「や、やめてください!もうこんなの嫌……!」
頬を赤らめて、恥ずかしげに言うフレオ。
こ、これは変な気分になってくる!
「二人とも、言葉遣いで気づかれたら元も子もないから、気をつけよう」
名前のセンスはともかくとして、お察しの通り私達は三人とも性転換しているのだ。
これは父さんの魔導具によるもので、明日のこの時間になるまで解除は不可能らしい。
僕達は寝ている間に見事に性別を入れ替えられてしまったのだ。
まぁ、バレないようにする作戦としては申し分ないのだが、私とフレオまで性別を変える必要があったかは疑問である。
「そう、だな。折角だし、お祭りを楽しもう。フレオ君もそれでいいよな?」
なんだかんだ言って、自由に回れる建国記念祭というのは初めてなのだろう。
ワクワクした顔が簡単に見て取れる。
「はい……もうどこへでも連れて行ってください……」
こうして、私達の『逆転』建国記念祭が始まった。
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