021
目を開けると、そこは懐かしい実家の前だった。
とりあえず《転移》は成功のようだ。
魔宝石はまだ輝きを失っていないようで、後何回かは使えるだろう。
「へー、ここがアンタの家か。アンタから王城に来ることはあっても、私から行くことはなかったから、初めてってことになるわね」
「そうだね」
父さんは十四年前に騎士爵に叙爵されていて、一代限りではあるが、一応貴族なのだ。
それ故に貴族街の端の端ではあるが、そこに居を構えている。
まぁ、貴族と言っても殆ど平民と変わらないのだが。
僕は自分の家のドアをノックする。
不思議な気分だが、いきなり入るというのも変だろう。
「はーい」
中からは母さんの懐かしい声がする。
僕を見たらどんな反応をするだろう?
父さんやフレイはいるのだろうか?
刹那の間にそんな疑問がいくつも思い浮かぶ。
そして、扉が開き、母さんが顔を出す。
「母さん、ただいま」
「あら…………シ、シシシ、シオン!!?お帰りなさい!心配したのよ!えっと、貴女は……お、王女殿下!!?シ、シオン、貴方一体……あ……とりあえず中に入って。殿下も汚い家ですが、どうぞ」
母さんは少し顔を赤くしてそう言った。
途中で人前ということも気づかずに驚き過ぎたと思ったようだ。
家の中は出て行った時と全く変わっていなかった。
しかし、父さんもフレイも出かけているらしく、家にはいないらしい。
「あまりいいお茶じゃ、ありませんけど、どうぞ」
「やめてよ、おばさん。家なんだからいいじゃない」
「そうは言っても貴女は……そうね。イリナちゃん、まずは大きくなったわね。それに綺麗になった。見違えたわ」
「うん、ありがとう」
こういうことを言うのは不敬なのだが、少なくとも五年前までのイリナは王宮であまり良い立場ではなかった。
と言うのもイリナは第一夫人の子ではなく、第二夫人の子だからだ。
そして、時の教会の幹部であるところの母さんは教養もあったことと、教会との関係強化のこともあって、イリナの教育係を任されていた。
第二夫人がイリナを産んですぐに亡くなったこともあってか、母さんはイリナの母代わりのような役目でもあったらしい。
他にも色々深い話があるらしいのだが、母さんもその話を僕にすることはなかった。
「それでシオン、急にどうしたの?」
「実は――」
僕は学院に入学したこと、そこで奇妙な力に目覚めたことを話した。
「そう……イリナちゃん、シオンに『あの事』は話した?」
イリナはしばらく沈黙してから、静かに首を横に振る。
「……じゃあ、私が語り部としては適任ね。シオン、貴方に全てを話すわ。心して聞きなさい」
そう言って母さんは話し始めるのだった。
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