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 結局閉会式には途中参加という形になり、周りからすれば、詳細な経緯は曖昧なままの大会終了となった。


「じゃあ、君達にはこれを渡しておく」


 大会終了後、学長がくれたのは特大の魔鉱石を精錬したであろう魔宝石だ。


「これが優勝賞品だ。それを使って君の実家には戻るといい。君達の魔力ではどうやっても《転移》できない距離だろうからね」


 魔宝石とは本来魔法で消費するはずの魔力を肩代わりしてくれる特殊な宝石のことだ。


 馬車で二週間程の距離ともなると、普通に《転移》することは不可能、それでは二週間という期間では足りない。

 それで魔宝石を使うということだろう。


「ありがとうございます。早速明日使わせてもらいますね」


「うん、そうしてくれ」


 話はそれだけ、と《転移》でいなくなってしまう学長。


「じゃあ、明日は迎えに行くから、待っててね」


「分かってる。荷物の準備して待ってるわ」


 そ、そうかぁ……当然一日という訳には行かないだろうし、泊まりがけということになるわけで……。


 フレイは元気にしてるだろうか?

 僕が帰ったら嫌な顔をするのはまず間違いない。

 でも、これも僕が向き合わなくちゃいけない問題だ。

 いつまでも不仲でいるわけにはいかないのだ。


 そんなことを考えながら、僕はイリナと分かれた。



「リガルス、何故あんなことをした?」


 ルキフグスは学院の屋根に立ち、帰って行く二人を見下ろしながら言う。


「我が主人はあの方のみ、新たな主を迎えるなど、私にはできぬ……そう、考えていた」


 リガルスは遠い日を思い出すように中空を見つめる。


「何か思いは変わったか?」


「……分からぬ。だが、因果なことだ。奇しくもあの少年はあの方にそっくりだった。ついでに言えば、あの少女さえも彼奴にそっくりだ。まるで二人が転生してきたかのようだ」


 他人のそら似では片付けられぬ程だと彼は言う。


「お前もそう思うか。それで少し思い留まったのか?」


「馬鹿なことを。貴様が止めなければ、そのまま殺していた」


「そうか……だが、約束は守ってもらう。次に僕の生徒に手を出したら消すからね」


 恐ろしい程に殺気を込めた声で彼はそう返す。


「……分かっている」


 そして、一陣の風が吹き抜ける。

 その風が止んだ時、既に二人の姿はそこにはなかった。



「ただいま」


 声が返ってこないということは、伯母さんはまだ帰ってきていないのだろう。


 僕が自分の部屋に戻って、荷物の準備をしていると、伯母さんが帰ってきた。


「ただいま」


「お帰りなさい」


「ああ、お前は色々ご苦労だったな」


「あれ?学長から聞きました?」


「まぁな」


 伯母さんはそのまま夕食の準備を始める。


 前々から思ってはいたが、この人と学長はどんな関係なんだろう?

 学院の教員になる時も学長に色々融通してもらったと聞いた。


「伯母さんと学長はどんな関係なんですか?」


「ん?んー……研究仲間だろうか?割と浅からぬ仲だ」


 そういう繋がりか。

 でも一般市民、もっと言えば人間族の一般市民と魔貴族になんの接点があるのだろう?


「気になるのか?」


「ええ、少し」


「そう言われても特に何もない。偶然街で会って、偶然興味を持たれて、偶然一緒に研究することになった。それだけだ。まぁ、研究の場を与えてくれたのには感謝しているがな」


 『偶然』ねぇ……何か裏があるのではと邪推してしまう響きだ。

 まぁ、それは追々聞いていくとしても、話しておかなければならないことがある。


「伯母さん、もう知ってるかもしれないですけど、僕、実家に帰ります。聞かなきゃいけないことがあるんです」


「ああ、好きにしろ。それは大きな一歩だ。色々因縁があるかもしれんが、気にするな。胸を張れ」


 伯母さんはいつも僕の背中を押してくれる。

 何故ここまでしてくれるのかは分からない。

 だけど、とにかく心強いのだ。


「……はい」


「よし、夕飯にしようか」


 こうして出発前の夜は更けていった。



「じゃあ、行ってきます」


「おう、行ってこい」


 初の登校日と同じようにこちらを見ないでひらひらと手を振る伯母さん。

 こういういつも通りな感じが却って安心するんだよなぁ。



「イリナ、いる?」


 僕はドアをノックして、イリナを呼ぶ。


「鍵開いてるから入っていいわよ!」


「お、お邪魔します」


 結局あの時色々話したせいで、イリナの家に入るのは初めてだったりする。


 イリナが借りている家は王族が住むには確実に小さく、本人からしても違和感があるでは、と思っている。


 とは言っても、部屋は普通に女の子っぽく、可愛いものが結構置いてある。


「じろじろ見られるのは流石に恥ずかしいからやめてくれる?」


「あ、ごめん」


 そう言われてからじろじろ見るわけには行かないので、僕は窓を見つめて、ボーッとする。


「行きましょうか」


 どうやら準備が整ったようだ。


「じゃあ、本当に行くよ?」


 正直昨日は全然眠れなかった。


 僕にも力があったんだという嬉しさ、それと同時に恐ろしい力を持っているという恐怖。

 更には妹への申し訳なさと不安。


 色々な感情がごっちゃになって、結局なんの整理もつかないまま、気持ちに押しつぶされるように眠ってしまった。


「だからいいわよって言ってるでしょ」


「……はい」


 僕は《転移》の魔法陣を刻んだ魔宝石に触れ、魔法を発動した。

 本作をお読み頂きありがとうございます。


 作者から二つお願いがございます。

 ずばり、ブクマ登録と評価です!!

 何卒、よろしくお願い致します。

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