019
僕は《魔強化》を使い、学長を強化する。
「君の《魔強化》は効くなぁ。でもまぁ、必要ないかも」
学長は十や二十などという規模ではなく、大小百の魔法陣を常時展開して、アナデッドを攻める。
「ぐっ、ぬぅぅぅ!!」
アナデッドも負けじと魔法を連発して、学長の魔法を防いでいるが、防戦一方だ。
「ほら!ほら!ほらっ!!リガルス、死んじゃうよ?」
挑発するように学長は言う。
これによって、アナデッドはより対抗心を燃やす。
「馬鹿にするなぁぁあ!!」
アナデッドは大きく後ろに飛び退き、今までとは比べものにならない程の大魔法陣を構築する。
「我が五百余年の研鑽の局地、ここに見せよう!《天威暴裂》!!」
アナデッドがそう唱えると、火、水、風、雷などなど、様々な属性の魔法が一つに纏まり、それが一つの光線となって学長を襲う。
「ふむ、中々複雑な魔法だねぇ。ま、それだけだ。《魔喰龍》」
学長もまた巨大な魔法陣を構築し、その魔法からは青い龍が飛び出し、その顎門を大きく開き、アナデッドの魔法を喰らおうとする。
「だから、舐めるなと言っている!!」
光線は更に大きさを増し、その奔流は龍をも飲み込まんばかりの勢いだ。
「これは結構……シオン君、力を僕に貸してくれ!全力の《魔強化》を僕に使ってくれ!」
「わ、分かりました!」
僕は《魔強化》に全魔力を注ぎ込み、学長に力を貸す。
「来た来た来た!!喰らい尽くせ、《魔喰龍》!!」
瞬間、学長の魔力が膨れ上がり、龍は遂に光線を喰らい尽くした。
アナデッド自体そこまでの傷はないようだが、完全に魔力を使い切ったようだ。
学長はイリナを縛っていた黒い鎖を断ち切り、イリナを助けてくれる。
そして、学長はくずおれたアナデッドの元に向かう。
「アナデッド、覚悟はできてるね?」
「……分かっている。主に弓引く行為、万死に値する……」
「ちょっと待ってよ!その主ってのが、私のことを言ってるんだとしたら、死なれるなんて困るわ。面倒くさいもの」
「いや、貴様のことではない。私はそこにいる少年が主だと言っている」
え、僕!?
「……えっと、僕って貴方と接点ありましたっけ?」
魔族とはそんなに関わったこと自体ないし、こんな強そうな人だったら、すれ違っただけで気づくはずだ。
それにそう言っては難だが、アナデッドは変わった容姿をしている。
顔は骨しか見えないし、着ている服もかなり目立つのだ。
「それについては……なるほど、貴様には解決せねばならない問題があるようだ」
「気づいたのか。まぁそれはひとまず置いといて。君が決めろ。リガルスが君にとって都合が悪い……いや、違うな。こいつを殺したかったら、殺せ。君にはその権利があるんだ」
何故そんな権利が、と聞いても、この人は答えてくれそうになかった。
「……いや、です。自分のせいで人が死ぬのは胸糞悪いし、何でこんなことしたのかっていうのと、もうしないっていうのが聞ければ、それでいいです」
イリナも聞きたいのはそれだけだろう。
それ故に死なれるのは困る。それにイリナの言う通り面倒くさい。
「と、シオン君は仰せだ。どうする?」
「こうなった以上、もうこのようなことはしないと誓おう。しかし、何故このようなことをしたのか、というのは今は答えられない」
途端に学長が険悪なオーラを出す。
「それはここで死ぬってことかい?」
「いずれは話す。しかし、貴様も分かっているように、この少年は自分が置かれている状況を全く理解していない。そして、その話は私の口から語られるべきではない、そう言っているのだ」
「まぁ、及第点かな。リガルスの言う諸問題については僕がシオン君に手を貸そう」
この人達は何を言っているんだ?
僕が抱える問題ってこの力のこと?
「ちょっと待ってくださいよ!一体何が何だか、少しは僕にも分かるように言ったくださいよ!」
「だから、それを聞きに行くんだよ。シオン君、君には二週間の休学を言い渡す。その間に君は実家に帰るんだ。答えはおそらくそこにある」
実家……?
じゃあ、父さんと母さんがこの力について知っている?
「私、さっきから蚊帳の外みたいだけど、私にもこの件に関わる権利はあると思うのよ。ねぇ、学長?」
イリナは蚊帳の外にされたのが酷く気に入らないようだ。
この件に巻き込まれた時点で、イリナにも知る権利はあるだろう。
「休学にするぐらいはどうとでもできるけど、シオン君はイリナ君を連れて行くってことでいいの?」
「勿論喜んで、よね?」
表面上、顔は笑っているが、全く笑っていない。
「……も、勿論だよ。父さんと母さんはびっくりするだろうけど、イリナがそう言うなら一緒に行こう」
「じゃあ、決まりね。そうと決まれば、さっさと戻りましょう?会場は大混乱だったでしょ?」
確かにどう説明したらいいんだろう?
いきなり優勝ペアと学長が消えて、大混乱は必至のはずだ。
「それは心配ない。閉会式は優勝ペア不在のまま執り行われているはずだ。君達には僕がサプライズしたことになっている」
あー、なるほど。
この人ならやりかねないから、皆も自然に納得しそうなものだ。
と、その時、僕の右手あった剣が消え、体中を駆け巡っていた無限にも感じた力も消えた。
「あ、あれ!?」
「予想していたことだ。それが貴様の抱える問題だ」
アナデッドは特に驚かずにそう言った。
「君からしたら、得体の知れない力だろうけど、すぐにどういう力なのかが分かる」
学長は《転移》を発動させながら言って、最後にこう付け加えた。
「改めてよろしく頼むよ、我が君シオン」
本作をお読み頂きありがとうございます。
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