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017

 あんな風に息巻いていたところ、非常に言いにくいのだが、ブロック決勝はイリナが数秒で片付けてしまった。


 理由は単純明快、イリナがまだ本気を出していなかったのだ。


 僕も含めて周囲の人間はイリナが剣しか使ってこないと思い込まされていたのだ。


 試合開始直後、イリナは今までの試合よりも更に高速で敵に肉薄し、剣で攻撃すると思いきや、剣を持ってない方の手に《雷撃》の魔法陣を展開した。


 雷系統の魔法は大半が反応できない程に早い。

 そして《雷撃》は狙い過たず、相手の体に命中。


 通常、相手が魔法を使うと分かっている時は対魔法障壁を一枚ぐらいは張っておく物なのだが、今回はそれもない為、一人目はダウン。


 二人目もいきなりの展開に手も足も出ずにダウンさせられた。


 ここまででおよそ十秒と言ったところだ。

 勿論僕も相手ペアと同様に手も足も出なかった。


 そのままの勢いで四ブロックの勝者が集う決勝トーナメントの準決勝も勝ち上がってしまった。


 そして迎えた決勝戦、相手はやはり『あの人』だった。



『さぁさぁ、会場の皆様とうとう決勝戦の始まりです!改めて、私は実況を担当させて頂きます、放送委員のサイラスです。解説は決勝戦ということもあって、やはりこの人、ルキフグス・ブラドーラ学長です!早速ですが、学長、この戦いどう見ますか?』


『フェルディナンちゃんはここまで殆ど一人で勝ち上がってきたけど、今回当たるペアは流石に無理だと思うね。三回生の武闘派どころか、四回生まで簡単に下す『戦才』なんて呼ばれる程の二回生ローレン・マギレガー君、言わずと知れた学院最強のガリウス・ビーゼル君、このペアに一人で勝つのは至難だよ。フェルディナンちゃんのペアであるシオン君に少し頑張ってもらわないとまず勝機はないだろう』


 ガリウス・ビーゼル先輩。

 この人が試験日と入学式の時に会った先輩だ。

 あの後気になって探ったところ、魔貴族ビーゼル家の直系だという。


『なるほど、ありがとうございました……おっと、どうやら試合の準備が整ったようです』


 相手に気圧されるな。

 僕は自分のできることをするだけだ。

 そうすれば、必ず勝てる。僕はそう自分に思い込ませるしかない。


「おいおい、ビーゼルの旦那ぁ!このガキ、そんなに強いのかよ?」


 粗野な口調でビーゼル先輩に話しかけるマギレガー先輩。

 僕を値踏みするように鋭い視線でこちらを睨んでくる。


「侮るな、ローレン。今はそこまでの力は感じられないかもしれないが、シオン君は間違いなく本物の強さを持っていた。だが、そこにいるイリナ君はその時の彼より数段上……彼女が強いことは分かるだろう?」


 やはり《勇者》の強さは本物のようだ。

 あれ程の強さを見せてながら、まだ底が見えないビーゼル先輩にそう言わせる程の実力がイリナにはあるのだ。


「ああ、ビンビン感じるぜ……旦那の本気で五分、俺じゃ絶対勝てねぇ。だが、旦那と俺なら勝算は十分ある。だから問題はそこのガキだぜ、旦那」


 この戦局は僕がどれ程の力を見せるかで大きく変わる。

 しかし、僕にはビーゼル先輩に見せた程の力は本来ない。


 だけど、僕達が勝利するには僕が少なくともどちらかを抑えなくてはならないのだ。

 そうしなければ、イリナはすぐに崩される。

 これは間違いない。


 集中だ。今までの実力以上をここで出す。

 そして僕達は勝利を掴み取るんだ!


「両者、準備はいいな?……試合開始!」


 まず駆け出したのがイリナとマギレガー先輩だ。

 イリナ、マギレガー先輩はそれぞれビーゼル先輩と僕に一直線。


「本気の力とやらを俺に出してみろ!」


 マギレガー先輩は素手だが、まるで剣を振るような姿勢で僕に飛びかかってくる。


 僕は嫌な予感がして、何もない空中に剣を構える。


 すると、確かに重たい手応えがあった。

 確実に何かある。それも武器の類だ。


「へぇ、どうやら勘だけはいいようだな。まだまだ行くぜッ!」


 途端に相手の剣速と手数が上がり出す。


「ぐっ!」


 何とか相手の見えない剣撃を受け流すが、速さと重さが半端じゃない。

 すぐに僕の足は相手の膂力に耐えられなくなり、片膝が地面についてしまう。


「おいおい!テメェ、手ェ抜いてんじゃねぇだろうなぁ!?これじゃ、あの旦那が手加減してたとは言え、負けた理由が分かんねぇぞ?」


 そして、最後に回し蹴りがダイレクトに入れられ、僕は大きく横に吹っ飛ばされる。


「おい、旦那!……ってあっちはもう夢中かよ」


 起き上がりながら、顔をイリナ達の方に向けて見ると、凄まじい速さの剣戟が繰り広げられていた。

 彼女達の剣戟は速すぎて、もう捉えられない。


 あの時のビーゼル先輩は力の半分も出してはいなかったんだ。改めてそう確信した。


 しかし、次の瞬間、剣戟が止んだ。


 その時、ビーゼル先輩の体に異変が起きていることに気づいた。


「旦那の奴、相当張り切ってやがんなぁ……とうとう本気モードってか?」


 本気モードという言葉にはすぐに納得が行った。


 これがビーゼル先輩に隠された力だったんだ。

 ビーゼル先輩は元々かなりの巨躯だったが、今はそれ以上、というか人間ではなくなっていた。


 彼の体は体高二メートル、体長は四メートル程の狼のものに変わっていたのだ。


 流石のイリナもこれには驚いたようで呆気にとられている。


「あれをやったってことはあっちは割とギリギリだったってことだな……さーてと、こっちもそろそろ終わりにするか」


 立ち上がれはしたが、まだ体がフラフラする。

 このままだと、ヤバい……!


「結局テメェは何なんだ?」


「……シオン・ライトヒルト、です……」


「ここはふざける場面じゃないぜ?まぁ、本当に旦那の勘違いってんなら、そこまでだが、あの旦那がそんなポカをやらかすわけがねぇ……」


「そう言われても困りますよ。これが一応全力です」


 僕は剣を杖にしながらも何とか立ち続ける。


「……今回はそのポカが起きちまったってことか」


 先輩はゆっくりと歩みを進め、こちらに近寄ってくる。

 そして、先輩の見えない武器の間合いに入ったと思われるところで止まる。


 僕はダメ元で剣を振る。

 勿論剣は僕の後方まで飛んでいく。


「起きた時は医務室のベッドの上だ。まぁ、所詮お前はそんなもんだったんだよ。くれぐれも相方の才能を潰さないように気をつけろよ」


 剣が振り下ろされた瞬間、僕は先輩に飛びつく。

 そして、こう唱える。


「《業炎球》!」


 《業炎球》は発動と共に先輩を巻き込んで僕ごと炸裂する。


「テメッ!?」


 残りの魔力を殆ど注ぎ込んだ《業炎球》は地面を割らんばかりの地響きを起こす。


 だが、煙が晴れたそこには無傷のマギレガー先輩が立っていた。


「惜しかったぜ?お前、その根性は認めてやる。だがな、それだけじゃ、どうにもならない実力差ってのもあるんだよ」


 そう言って、倒れたままの僕に背を向けるマギレガー先輩。



 負けた、のか?


 あれだけ格好つけて、イリナの気持ちまで曲げて、一緒に戦わせてもらったのに、こんな様か……。


 ここまで逃げて、周りの人間関係をリセットして、何か変わると思っていた。

 伯母さんに会って、大切なことを思い出させてもらった。


 それでこの学院に通うことにして、イリナと再会した。

 僕が行動した結果がこの繋がりを作った、そう思っていた。


 だけど多分、それも違う。


 これは僕が偶然引き寄せた結果だったんだ。

 それを勝手に自分が努力した結果だとか思い込んで、自惚れて、どこかで調子に乗っていた。

 結局僕はまだ何も変わることができていないんだ。


 そのツケなんだ。


 もう諦めよう。

 僕ではイリナの何の役にも立てない。

 そればかりか守ってもらってばかり。

 こんな一方的に貰うだけなんて、友達ですらないじゃないか。


 自分にうんざりだ。

 もう、全部どうでもいい……。



『決して諦めるな』


 その時、伯母さんの言葉が頭に浮かんだ。


『自分の弱さに打ちのめされるのと、諦めるのとは全く違うことだ』


 そうだ。また忘れていた。

 偶然手に入れた。だけど、とても心強いもの。


 僕はそれをまだ持っていたい、手放したくない。

 僕はそれをまだどうしようもなく、諦め切れていないはずだ。


 だから、未練がましく、図々しく、こんなことをまだ考えている。


 ここで諦めたら全てが終わる。僕が生まれてきてから今までの全てがだ。

 逆に僕が諦めさえしなければ、必ずそれはこの手の中に残るはずだ!


 神様でもいい、悪魔でもいい、誰でもいい。

 誰でもいいから、今だけ、この一瞬だけ、この状況を打破する力を僕にくれ。


 まだ僕は諦めていないんだ!



「諦めない限り、光は絶対にある!」


 瞬間、体の底から今までに感じたことがない程の力の奔流を感じる。

 薬を使って手に入れた力に似ているが、全く別の物だ。


 それは僕の体を駆け巡り、力を与えてくれる。


 力を感じたと同時に空に暗雲が立ち込め、激しい雨が降り出す。

 そして、一筋の極光が僕達の目と耳を襲う。


 その極光は僕の目の前に落ち、僕が目を開けるとそこには一振りの剣が刺さっていた。


 その剣は電気を帯びており、綺麗な光が踊るように剣の周囲を回っている。


 僕はその剣を抜き、縦に振ってみる。

 すると剣の軌道に光の刃が現れ、真っ直ぐ直進していく。


 やがてその刃はたまたま直進した先にいたマギレガー先輩に命中する。


 しかし、刃が当たっても特にダメージが入った様子はなく、わけも分からず、先輩はキョトンとしている。


 だが、その時、先輩の元に天から極光が降り注ぐ。


「ぐあぁぁぁ!!?」


 なるほど、これはそういう武器なのか。

 今はどうしてこんな武器がとか、そんなことはどうでもいいのだ。


 とにかく、イリナをサポートして優勝する、それだけだ。


「チッ……本当に力を隠してやがったか……ヤベェな、こっちも向こうの奴と同じ強さかよ……」


 絶対気絶したと思っていたが、上手く躱されていたようだ。


「先輩、ありがとうございました。お陰で大事なことが思い出せました。今からそのお礼をします!」


 僕は決意を新たに駆け出した。

 本作をお読み頂きありがとうございます。


 作者から二つお願いがございます。

 ずばり、ブクマ登録と評価です!!

 何卒、よろしくお願い致します。

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