016
『会場にお集まりの皆様、お待たせしました!ブロック準決勝の準備が整ったようです。ここまで実質一人で勝ち上がったようなもの、この凄腕剣士を止めることはできるのか!?イリナ・フェルディナン、シオン・ライトヒルトペア!対するは学院のマドンナと呼ばれる双子の美人姉妹、戦闘も超一流でした!アライカ・グライドベルク、ミライカ・グライドベルクペア!なお、本試合から決勝トーナメントまでは謎多き美人教師、ヒルダ・アリステラ先生にお付き合い頂きます!先生、よろしくお願いします!』
『よろしく』
既に僕はフィールドに立っていても殆ど存在感がない。
実況に紹介されてはいるが、僕の無能はバレてきているようなので、なんであんな無能が、みたいな目を向けられる。
肩身の狭さは昨日より上だ。
「では……試合開始!」
グライドベルク姉妹は魔法師型とあって、試合が始まっても動く様子はない。
イリナも同じく相手の出方を窺っているようだ。
僕に対しては何の警戒もしていないと踏んで、僕はアライカ先輩の方に《幻視》をかける。
『おおっと!アライカ選手、何もない方向に魔法を撃ち出した!これも何かの作戦か!?』
実況のことをすっかり忘れていた。
これではすぐに《幻視》が解けてしまう。
しかし、僕の魔法にイリナはすぐに反応して、相手ペアの方に突っ込む。
「お、お姉様!?くっ、ここは一人で……!」
ミライカ先輩はイリナに応戦しようと、大きめの《火球》を放つが、イリナはそれを軽々と躱す。
だが、ミライカ先輩もそれだけではない。
更に五つの《火球》をイリナの方に放っている。
その隙に僕はアライカ先輩の方に向かう。
激しい実況とミライカ先輩の声で、《幻視》は既に解けているようだ。
「ようやく動き出したと思ったら、幻術とはね……貴方いい性格してるじゃない!」
アライカ先輩はそう言って、《炎槍》と呼ばれる細長い炎の槍をこちらに飛ばしてくる。
「よく言われますッ!」
ギリギリのところで《炎槍》に魔力を通した剣を当てて、《炎槍》を斬る。
『シオン選手、あの速さの《炎槍》を斬り落とした!』
『ずっと後ろにいた、フェルディナンの付属品だと思っていたが、存外にやるようだな』
酷い感想が聞こえてますよ、伯母さん。
「確かに中々やるようだけど、これはどうかしら?」
アライカ先輩は十本を超える《炎槍》を同時に放ってくる。
僕は瞬時に分厚い《氷壁》を出して、《炎槍》から身を守る。
《炎槍》は次々と《氷壁》に刺さっていき、最後の《炎槍》が当たった時には、もう殆ど壁が残っていなかった。
「さぁ、次は――」
アライカ先輩が次の魔法を出そうとした丁度その時、イリナが剣を喉元に突きつける。
「そこまで!」
『試合終了!フェルディナン選手の凄まじい剣技は健在でした。あっという間にミライカ選手を倒していました』
『だが、私はライトヒルトが動いたことに驚きを隠せないな。何かの心境の変化か、元々の作戦か……とにかく自分に油断させて、幻術がかかりやすい状態にするというのは中々に上手いものだったな』
『始めにアライカ選手があのような理解不能の行動を取っていたのはそういうわけだったんですね!』
『次はどのような試合を見せてくれるのか見物だな』
相手ペアの強みは共にした時間からくる連携。
それを乱すことができた時点で勝利は決まっていただろう。
次はついにブロックの決勝だ。
僕達は軽い息抜きのつもりで闘技場を出て、学院の敷地をブラブラしていた。
「私前から不思議だったんだけど、アンタどうやって学院に入ったの?」
イリナはそんなことを聞いてくる。
これはどう言い訳すれば……。
「えーと……」
「人間族の魔族に対抗する唯一の武器であるところのスキルが無い時点で普通勝てないでしょ?」
か、完全にバレてる……。
僕は仕方なく薬を使ってズルをしたことなどを全て話した。
まぁ一つ言い訳をすると、あの試験は何でもありだったから、あの薬もダメというわけではない。
「ふーん、そうなんだ。別に私がとやかく言うことじゃないし、言うつもりもないけど、これで納得ね」
心のどこかで幻滅されるんじゃ、と思っていたが、そんなことは全くなかった。
やっぱり持つべきものは友達だ。
「さ、そろそろ戻って、準備をしましょ」
「そうだね。ここを勝てば優勝は目前、頑張ろう」
まぁ、頑張ろうと言っておいて難だが、主に頑張ってもらうのはイリナなんだけど。
「そうね、負ける気がしないわ」
そう言ったイリナの目には確かに闘志が宿っていた。
僕も負けていられない、改めて少しでもイリナの力になろうと誓うのだった。
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