015
『さぁ、始まりました。何でもありのタッグマッチバトル!開会式では学院の有名な生徒がフィールドに姿を現しました。異例中の異例となる本大会ですが、優勝争いは壮絶なものになりそうです!申し遅れました、第一闘技場実況担当の放送委員のサイラスです。二日間よろしくお願いします!解説はブロックの準決勝からとなりますが、アリステラ先生が担当してくださいます、どうぞお楽しみに!』
特に対策などを立てることもなく始まったこの大会。
伯母さんに例の薬をまた作ってくれないかと頼んだが、あの薬は一度しか効き目を発揮しない為、作っても意味がないらしい。
どちらにしろ、薬に頼るということの虚しさを知っているので、いい踏ん切りになったと思う。
どうせなら優勝を目指そう、とか言ったが、全校生徒の実に半分が参加する大会とあって、優勝できる自信は全くない。
イリナを信じていないわけではないが、いかんせん足手纏いがいるもので。
そんなことを考えているうちに試合が始まる。
『どうやら、第一試合の準備が整ったようです。では始めましょう!このタッグもまた異例中の異例、学院創設以来初の人間族がペアを組みました!対するは二回生一組の幼馴染みおバカコンビだ!』
そう、第一試合を飾るのは僕達だ。
飾るといっても、イリナたっての願いということで、僕は後ろで見ているだけだ。
何もしないというのは流石にバツが悪いので、《魔強化》などの支援魔法は認めてもらった。
相手側からは手の内を明かさないという戦略にも見えるが、僕に手の内なんてあるわけがないので、相手の心配も全くの杞憂に終わるだろう。
僕達は所定の位置について、試合開始の合図を待つ。
審判の先生が両ペア所定の位置についたことを確認すると、大きく手を振り上げる。
「試合開始!」
僕は試合が始まってすぐにフィールドの端まで退く。
「へへっ!初戦が人間族とはラッキーだぜ!こいつらぶっ倒して、さっさと賞品頂きだ!」
「おうよ!なんか分かんねぇけど、一人は後ろに下がってるし、この女を倒すだけで、殆ど試合終了だ!」
相手ペアは即座にイリナの元へ走り寄る。
さっきはおバカコンビと言われていたが、息はピッタリのようで、同時に剣が当たる軌道だ。
しかし、悲しいかな、おバカと言われることだけあって、剣が綺麗にクロスしている。
違う箇所を狙えば上手くいったかもしれないのに。
だか、それは僕の勘違いだった。
例え違う箇所を狙ったとしても彼等が当てるのは不可能だった。
イリナは既に相手ペアの後ろに回っていて、手刀をポンと相手の首に当てる。
すると、相手ペアは剣を落として、そのままフラッと地面に倒れ込む。
あーあ、泡吹いてるよ。
「そこまで!」
『し、試合終了!!フェルディナン選手、目にも止まらない攻撃で速攻勝利を決めました!』
「お疲れ」
「全く疲れてないけどね」
イリナは息一つ乱れていない。
これは本当に一人で優勝してしまうかもしれない。
僕は密かにそう思い始めていた。
そして、結局一日目は僕が何もすることなく終わっていった。
「流石にさっきのは危なかったんじゃないの?」
今日はブロックの準々決勝までの試合が終わったのだが、最後の試合で当たった相手ペアがかなりの強敵だったのだ。
それをイリナはなんとか剣術だけで倒した。
「……あれくらい余裕よ。一日目は切り抜けられたんだから、まずはそれで良しとしましょう。しっかりと休めば、明日も問題なく戦えるわ」
確かにそうかもしれない。
イリナの実力をまだ見ていない僕にとっては読めない部分も多い。
だが、開会式には他のブロックではあるが、あの先輩の姿も見えたし、ペアを組んでいた人も同じぐらい強そうだった。
あの先輩にはまだ何かある。
僕はそう思っている。
そしてそのペア以外にもまだ当たったことのない四回生がいる。
このまま行くと、少なくともブロックの決勝までと、決勝トーナメントで一回は当たるだろう。
学長は僕がイリナの手綱と言った。
僕がイリナを止めてあげなければならないのだ。
「……僕はイリナを手伝いたい。このままじゃ、多分どこかで負けちゃうよ」
「負けないわ。絶対に」
イリナは頑なに僕の参戦を許さない。
「僕、勇者のこと調べたんだ。勇者だって当時頼れる仲間と共に魔王と戦ったって書いてあった。魔王だってそれは変わらない」
「だから一緒に戦おうって?違う、違うのよ、シオン。アンタは大事なところがいつも抜けてる。それに私は言ったはずよ、今回は自分の力でどこまでいけるか試したいって」
ダメだ、このままじゃ、行ってしまう。
そんな気がするのだ。
「……ぼ、僕は……僕はイリナと一緒に戦いたい!僕はイリナと一緒に優勝したいんだよ!だからお願いだ。足手纏いかもしれないけど、一緒に戦わせてよ……」
イリナは振り向かないで、黙ったままだ。
「……分かった。明日はよろしくね、シオン」
「う、うん!」
よし、認めてくれた!
僕はイリナの力になって見せる、そう心の中で誓った。
本作をお読み頂きありがとうございます。
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何卒、よろしくお願い致します。




