013
突然だが、あなたは兄姉という存在をどう考えますか?
兄姉がいない人の中には羨ましいなんて思う人もいるのではないだろうか?
だけど実際はそういい物ではない。
自分でいうのも難だが、両親にはかなり恵まれたと思う。
他の家庭の話、とりわけ貴族の話を聞くと、長男だけが大切に育てられ、それ以外の子供は成人すると、外に出されることも多いという。
だけど、私の両親は兄と私に変わらない愛を注いでくれていると思うのだ。
いや、違う。
鈍い兄は気づいていなかったが、やはりどこか兄の方が大切にされていた気がする。
というのも、両親の態度は普通に見えるのだが、心の底では兄に対して遠慮がちというか、申し訳なさを抱いているようにも見えるのだ。
それと関係があるのかないのか分からないが、兄にはスキルが無かった。
それに関しては色々な噂があったのだが、正直どうでも良かった。
嫌だったのは私がその煽りを受けたということだ。
お陰で当時遊んでいた友達とは疎遠になったし、今に至っては逆に畏怖されているといった感じだ。
全く馬鹿げている。
何故私が人の影響を受けて、生き方を変えなければならなかったのか。
幸いにも兄は私のスキルを見届けるなり、出て行ってくれたので、清々している。
最近では父様も母様も私に剣術や魔法を教えてくれる。
しかし、不思議な物だ。
父様も母様も兄が伯母様の元にいると聞いても、それ程心配している様子はないのだ。
それどころか、まるでそれが兄の進むべき道とばかりに、応援している様子なのだ。
まぁ、あの兄のことだ。
その内、魔族の社会に耐えられなくなって、家に帰ってくるだろう。
そうなったら、私の元で兄を働かせてやるのだ。
そして、私の人生に与えた影響をその身を以て償ってもらう。
我ながら優しいと思ってしまう。
腐っても自分の家族、面倒ぐらいは私が見てあげるのが筋という物だろう。
兄が帰ってくる日が楽しみだ。
「父様、今日はどこに行くのですか?」
「今日は王都の南西に向かって伸びている街道に度々出現するっていう、レッサードラゴンの討伐に行く」
最近、私は父様の今の仕事である冒険者稼業を手伝っている。
まだまだ父様程とはいかないが、私はこの一年で大分力を伸ばしたと自負している。
実際に効果を受けてみて実感したが、スキルには対象の技術を早熟させる効果があるようだ。
私のスキルの場合、剣術や聖魔法が早熟するようになっているということだ。
その効果なのか、父様からは粗は目立つが、既に剣術は完成されつつある、と言われている。
「フレイ!そっち行ったぞ!」
仲間が父様に圧倒されていると分かると、一匹のレッサードラゴンが凄まじい速さで、こちらに突っ込んでくる。
「《瞬閃》」
かつての勇者が使ったともされる技で、《剣聖》系統のスキルの上位技だ。
魔力を消費して、一瞬だけ素早さを何十倍にも上昇させ、相手に斬られたと気づかせる間もなく絶命させる。
あまりの速さに相手の切断された部位の方が遅れて落ちる。
ちなみにスキルの中には自分が意識的に使用する『能動能力』と常に発動していて、身体能力などに影響のある『受動能力』の二つが存在している。
《瞬閃》は『能動能力』にあたるものだ。
私はこれを乱用して次々と敵を葬っていく。
これが私の日常。
本来なら兄が歩むはずだった日常。
私は今そこに立っているのだ。
「こら!《瞬閃》は乱用するなって言っただろ?」
父様が私の頭をこつんと叩いて言う。
「あ、ごめんなさい。父様の役に立ててると思うも嬉しくなりまして」
言っておくが、割と正直な思いだ。
「そんなこと言ってもダメだ!《瞬閃》は便利な技だが、手加減がしにくい。だからまずは俺が教えた剣術を積極的に使って完成させるように」
「わ、分かりました……」
調子に乗ったせいで怒られてしまった。
まずは基礎から完成させるようにしようとは思っていたが、どうしてもスキルを使ってみたくなってしまうのだ。
こういうことを思っているうちはまだまだ未熟ってことなんだろう。
討伐が完了したことを冒険者ギルドに報告して、私達は家に帰る。
きっと母様が美味しい夕飯を用意してくれているだろう。
今日の献立はなんだろう?
「「ただいま」」
「二人ともお帰りなさい。もう夕飯の準備はできてるわよ。あ、それと姉さんから手紙が届いたの。夕飯が食べ終わったら皆で読みましょう」
伯母様から手紙か……もしかして、もう兄が帰ってくるとか?
まぁ、でも一年持ったのだから、兄にしてはすごい方だろう。
手紙の内容が楽しみだ。
「では、読み上げます」
『季節の挨拶は省かせてもらう。
早速本題に入る。
シオンが学校に通うことになった。
通う学校は厳しい試験をくぐり抜けて、やっと入学が許される旧魔王領内の最高学府ゲルドガルド学院だ。
学費は全額無償だから、お前達が気にする必要はない。
心配せずともシオンは一歩一歩着実に成長している。
直接成長を見守れないのは残念だろうが、あの子が選んだ道だ、どうか分かってやってくれ。
長期休暇にでもなったら、一度帰らせるからそのつもりで頼む。
ヒルダ・アリステラより』
私はあの兄が魔族を蹴落として、学校に入学できたということに素直に驚いた。
ま、まぁ、しばらくすれば退学でもするだろう。
どうせ、ギリギリ合格できただけで、魔族の社会に溶け込めたというわけではないのだから。
「おお!あいつ学校に通ってるのか!」
「そうみたいね。しばらく見ない間に立派になったのね」
父様と母様は顔を輝かせて、手紙を読んでいる。
やっぱり顔の輝かせ方が私とは違う。
私がスキルを授かった時よりも嬉しそうだ。
今でも私の人生に影を落とすと言うのか?兄様。
私に謝罪すらせずに、何も言わずにこの家から去ったことを許すことはできなさそうだ。
願わくば、兄が私の元に帰らんことを。
私はそう、兄を呪うように祈るのだった。
本作をお読み頂きありがとうございます。
作者から二つお願いがございます。
ずばり、ブクマ登録と評価です!!
何卒、よろしくお願い致します。




