権能と代償
閲覧ありがとうございます!
まだまだ序章ですが、現代と神話の世界観の融合を描けるように頑張ります!
コメント、評価よろしくお願いします!
「まさか、ミコにこんな一面があったとはな……」
「情熱的な一面があるのも……素敵だよ、バンビーナ……」
私に一通り「モフモフ」された二体の可愛い生き物が息を切らす。
「……ごめん。つい……」
「いや、いいんだ。こういうのは、魅力的すぎる方が悪いだろ?」
アルゴが、ムカつくドヤ顔を私に向ける。ムカつくが、今回は明らかに私が悪いので、黙っておく。
「アルゴ、お嬢さん。そろそろ、本題に入ってもいいかい?」
レンが穏やかに眠っている様子を見て、少し安心した様子のソアレが私たちに語りかける。
「そうだった。聞きたいことがいっぱいあるの。あなたたちは何?『使い』ってなんなの?あと、でゅえろ?とか、ぷりふぉーぜ?ってなに?……私はアルゴに何をされたわけ?」
先程までは、生き残ることで必死すぎて、抑えていた疑問が次々に浮かんでくる。アルゴは「やってみればわかる」とかなんとか言っていたけど、やっぱりわからないものはわからない。
「ここは、僕が説明しよう。まずは、お嬢さんを危険な目に遭わせたこと、謝らせていただくよ。……まず、僕たちについてだ。……僕たちは、神の権能を預かる聖獣というものだ。」
「……聖獣?」
「といっても、本物の『聖獣』ってわけじゃない。」
「そう。僕たちは……みんな、『元人間』だ。」
にわかには信じがたいソアレの話を、アルゴが大きく頷きながら肯定する。あまりに非現実的な話に目眩がするが、私も巻き込まれていることは確かだ。脳内で話を整理しつつ、先を促す。
「『元人間』ってことは、人間の姿にもなれるの?」
その方が、現代社会にも馴染みやすいはずだし。
「いや、それはできないんだ。僕たちは……神の権能を預かる代わりに人間だった頃の記憶を失う。そして、神の権能を駆使するには人間の『祈り』が必要なんだ。その『祈り』を捧げてくれるのが『使い』だ。『使い』は、聖獣が持つ権能に『適合』している人間のことなんだ。」
雷に撃たれて、無傷だったことを思い出す。「アレ」が「適合」したということなのだろうか……
ソアレが愛おしそうにレンの寝顔を見つめる。わけのわからない闘いに巻き込んだ元凶の一つではあるが、この二人にはだれも入り込めない信頼関係や情があることが、わかる。……そういう関係は、少し羨ましい。
「人間だった頃の記憶を失うのは……どうして?」
「代償だ。オレたちは、一度神からもらった人生を蔑ろにして、新しい生を望んだ。……まぁ、それなりに理由はあるだろってことで、神の権能を預かることは許されたってわけだ。」
アルゴが、いつもの軽い口調で言うが、私には少し痛々しく感じた。……つまり、アルゴもソアレも……生きることを諦めるようなことがあったということだ。
「そんな顔するなって!記憶がないってことは、今は気楽なもんだぜ?……まぁ、また人間として、新しい生を得るためにはアニマ・デュエロで勝ち残らないといけないから、確かに気楽ではないな?ミコ、その顔したままでいいぜ!」
人がまともに心配してるっていうのに、このモフモフは……
「そう、僕らがまた人間になって新しい生を得るには、今いる12体……僕らを除いて10体の聖獣とアニマ・デュエロを行い、勝利する必要があるんだ。……これで、命を落としたり、権能を使い切れば、次の生は望めない。」
「まって!?じゃあ、ソアレは!?」
「落ち着いて、お嬢さん。僕らは死んでもいないし、権能を使い切ってもいない。……少し、レンの消耗は激しいけど、精神的なものだ。休めば回復するよ。」
ホッと胸を撫で下ろす。誰かの命を、人生に関わることをどうにかしてしまったと思うと気が気でない。そんな責任重大なことは願い下げだ。
「それに、アニマ・デュエロは、何も相手を打ち負かすことだけが目的じゃないよ、お嬢さん。デュエロの後に、互いが同意し、契約すれば、共闘関係にもなれる。」
ニッコリと、ソアレが可愛い子鹿スマイルを向けてくる。その意味が分からないほど、私もバカじゃない。
「もしかしなくても………共闘をお望みですかね……?」
次回も少しだけシリアスめのお話。
お付き合いいただけると嬉しいです。