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ミコの祈り2

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電気は炎のもとになるばかりで、炎を()()することなんてできないと思っていた。ーーついさっきまで、この光景を見るまでは……自分の手の中にある双剣から出る稲妻が炎から私を守ってくれるまでは。

「ねえ、アルゴ。コレができるってことは……」

電撃を使って、いくらか炎を弱めることができるはず……

「ミコがソレを祈るなら。オレは権能(チカラ)の限りを尽くしてみせるぜ!」

 威勢の良い声が脳内に響く。ーーつまり、できるってことだ。いつかテレビで見たことがある。世界で一番、天才的な頭脳が集まる学府で、電気ビームで炎を消すことができたという発表を。

 

 私の祈りが、アルゴの権能(チカラ)の源になるのなら。そして、この場を生きて切り抜けられるならば。私は、怪しい電気羊にだって祈ってやる。

「アルゴ!!お願い!稲妻の権能(チカラ)で……太陽の炎を……私たちを襲う炎を消して!!」

「ソレが、我が使いの祈りならば!オレは応えよう!」

軽快なアルゴの声が私の祈りに応えてくれる。私たちを守る稲妻の壁越しに、次々と炎の蛇を生み出すレンが見える。すごく恐ろしい。だけど、今のアルゴなら、やってくれる気がした。この、稲妻みたいに、絶対に私を守ってくれる気がした。


「なんで……!ソアレさま!!なぜ、僕たちの炎が届かないのです!?僕の祈りでは足りませんか!?」

泣きそうな、必死なレンの声が燃え盛る空間に響く。”プリフォーゼ”状態だからか、ソアレの声は聞こえない。さっきまで、しっかりとした蛇の形をしていた炎は、激しいながらも、曖昧な形に変化していた。


「ヨォ、少年。お前さんの祈りは決して弱くなんかねえよ。……ただ、うちのミコちゃんの方が、必死だったんだなぁ〜〜。『生きたい、死にたくない』って、ちょっと無様だけどさ。一番強い人間の祈りだから。」


さっきまで脳内に響いていた声が、いつの間にか大きな稲妻の中から聞こえていた。黄金の無数の稲妻が一つの場所に集まり、大きな鷲の姿になった。まるで、ちょっとしたティータイムを楽しむようにーーそんな軽い調子でーー曖昧な形になった炎の蛇をヒョイヒョイと啄んでいく。

「な……僕の……僕とソアレさまの火蛇が……!」

すでに曖昧な形になっていた炎の蛇を、稲妻の鷲が片っ端から喰らっていき、ついには最後まで残っていた大蛇まで丸呑みにしてしまった。

「あぁ……あぁ……申し訳ありません。ソアレさま……僕は……僕は……」

炎を出す術を失ったのか、レンは美しい瞳から涙を流しながら崩れ落ちた。そして、力尽きたように、倒れてしまった。


「ちょっと!大丈……っ!?」

思わず駆け寄る私の前に大きなツノの牡鹿ーーソアレが立ちはだかる。自然と身体が強張ってしまう。先ほどまでドンパチやっていたのだ。当然の反応だろう。決して、私がビビリだからではない。

「……レンに何をするつもりだ。」

「へ?何って……」

ソアレの目はアニマ・デュエロとやらを吹っかけてきた時とは違う、優しげな、そして不安げな色になっていた。自分のために闘った少年を案じていることは、私にもすぐにわかった。

「ソ〜アレくん!大丈夫だよ、この子は無抵抗の美少年を、どうこうするような娘じゃないぜ〜。女神じゃあるまいし!」

「お前……神を愚弄するのはやめろ!……お嬢さん。先ほどまでの無礼、お許しください。こちらも事情があったのです。……不躾ですが、どうかレンを介抱していただけませんか?お話できることは全てお話します。」

いつの間にか羊に戻っていたアルゴがすごく失礼な感じのフォローを入れてくれる。その甲斐ではないだろうが、牡鹿の警戒心が解けたようだ。それどころか、出会った瞬間とは別人のような紳士っぷりに思わずしどろもどろしてしまう。


「アッ、も、も、もちろん!私もこんな小さな子を放っておくほど鬼じゃないですし!!」

そう、気を失った少年一人保護すること自体はなんてことはない。問題はーー

「あなた達がうちに入るかって問題なんですけど……」


私の言葉に、大きな羊と牡鹿が顔を見合わせる。


次回、「使い」や「アニマ・デュエロ」について語られます。

一応、私たちが住んでいる世界で巻き起こっている事を描いているので、いつか「闘い」の後始末についても書いていけたらなと思っています。

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