ミコの祈り1
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初めてのバトル、お楽しみいただけると嬉しいです!
プリフォーゼ・バージョンのレンが身体に見合わない大きな杖を振るった瞬間、私たちを囲むように炎が広がる。コレが……太陽の権能。おそらく、炎がメインの戦力なのだろう。
ーーそうなると稲妻と植物を操るというアルゴの権能では、太刀打ちが難しいのではないか。
思考する間にも、レンは容赦なく炎を放つ。意思を持ったようにうねる炎が、逃げても、逃げても私をアルゴをねちっこく追いかけまわす。
「アルゴ!?コレ、どうすれば良いの!?次から次へと……!」
「逃げてるだけだと、アイツは冥界の果てまで追いかけてくるタイプの男だからな……さっきも言ったが、とりあえず、オレを信じて祈ってくれ!」
「だから!!それの意味が……!!」
アルゴと落ち着いて会話をすることもできないほどの炎が連発される。よく見ると、その全てが蛇のような姿になって襲いかかってくる。
ーーお願いだから……生き延びさせて……!
祈ることなんて、他に思いつかない。さっきは相棒みたいな返事をしちゃったけど、私は、勝ちたいわけじゃない。襲いかかってくるこいつから何とか逃げて、生きて日常に帰りたい。そのためなら、変な羊に身を任せたって良い。
「生き残りたい」と祈りながら、襲いくる炎の蛇を何とか避ける。
「攻撃してこないのはどういうつもりでしょう?僕とソアレさまは舐められているのでしょうか?」
あんたがひっきりなしに炎の蛇を出すから、こっちは手も足も出ないの!!そんな言葉すら上手く口から出てこない。
「仕方ありませんね……やはり、ソアレさまがお怒りになる価値もなかった……。さっさと終わらせましょう。」
レンが杖を大きく一振りした途端、幾多の炎の蛇が、巨大な一匹の蛇へと変貌した。
「……っ!ちょっと、コレ、流石にやばいんじゃ……」
睨まれるだけで、肌が爛れそうな熱気がミコを襲う。おそらく、「生命の恵」とやらで、いくらか保護はされているのだろうが、それでも熱いものは熱い。
「……残念です。こんなに呆気ないなんて。ソアレさまの炎を使うことすら勿体ない。……それでは、おやすみなさいませ。」
穏やかさの中に、憐憫と蔑みを含んだレンの声が耳に届くと同時に、炎の大蛇が私たちを飲み込むべく、大きく口を開ける。あまりの熱気に目が焼けてしまいそうだ。ーー思わず、アルゴに渡された双剣を、体の前に、身を守るように掲げる。
「アルゴ……ッ!!」
祈るように、彼の名前を叫ぶ。意味はないかもしれないけど、気休めかもしれないけど。生きたい。私は、そう強く……強く祈った。
炎の大蛇はすぐ目の前。飲み込まれることは必至だ。大蛇への恐怖とジリつく熱気から目を瞑る。
ーー熱く、ない?燃やされる覚悟を決めて瞑った目をまだ開けずにいる私に、アルゴが優しく語りかける。
「ミコ。大丈夫だ。ゆっくり……目を開けてご覧。」
不思議だ。あんなに胡散臭くて、信用できなくて、軽薄な印象しかなかったのに。……今のアルゴの声色は、私にとって唯一の拠り所であるような気さえする。アルゴの言葉に、無言で頷き、そっと目を開ける。
双剣から放たれた黄金の稲妻が、私を守るように炎に向かって立ちはだかっていた。炎は、まるで稲妻を避けるかのように無理やり進行方向を変えられていた。
「なっ……稲妻にこんなことができるなんて……」
稲妻と炎の向こうで、驚いたようなレンの声がわずかに聞こえる。
「アルゴ……コレって……!」
「お前が祈ったんだろ?『生きたい』って。」
姿は見えないはずなのに、アルゴのニヤッとした表情が目に浮かんだ気がした。
「ミコが祈ったことをオレの権能で叶えてやる!面倒かけるが、大船に乗った気持ちで一緒に戦ってくれ!」
悔しいけど、頼もしい。何より、今はアルゴのほか、頼れる人なんていない。
「アルゴ!祈るのが大事なのはわかったけど、何でもは無理でしょ?避けられはしても、勝てる気はしないんだけど!?」
「弱気になるなよ〜。確かに、何でもは無理だ。オレはオレの権能にできることしかできない。……でも、オレの権能でできることは、何でもできる。意味、わかるよな?」
愉快そうなアルゴの声と、双剣から放たれる稲妻。それを避けるようにうねる炎……。
ふと、ある考えが浮かんだ。
「……アルゴ。私、良いこと思いついたかも。」
この戦いの目的も、ゆっくりアルゴが教えてくれます。
次回もバトルが続きます!引き続き見守ってあげてください。