羊サマの云うことには
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少しずつ、ミコが何に巻き込まれているのか、わかっていきます。
「カミノケンノウ?」
羊――アルゴーーの口から出た言葉をそっくりそのまま繰り返す。よっぽどのアホ面だったのだろう。目の前の羊があからさまなため息を吐く。
「そうさ!神の権能。聞いたことくらいはあるだろ!?ほら、神話とかに出てくる神の不思議な力って言えばわかりやすいか?ミコに当たった雷はオレが持つ「神の権能」の一つだ!」
「はぁ。つまり、あなたは『神様』だってわけ?」
世界広しと言えど、羊に宗教勧誘を受けたことのある人間はないだろう。今、この場の私を除いて。
もしかしたら、この羊は精巧なロボットか何かで、別の場所にいる人間が声を出したり、表情を変えているのではないかとすら思う。いや、むしろそうであった方が都合が良いのでは?少なくとも、目の前にいる羊は、「ヒトによって作られたもの」という存在になる。正直、その方が精神衛生上、大変よろしい。
ただでさえ。大学まで出たいい「大人」が、定職にも就かずフラフラとフリーターという身分に甘んじているだけでも、世間サマからの目線は痛みを感じる程に冷たい。その上、羊と話せるなんて属性がついてしまったらどうすればいいのだろう。「大人」として、さらに不名誉な目線に晒されることは間違いない。
「おーーい。今は一人で堂々巡りの思考に入っていい場面じゃないぞ〜。」
呆れたような羊の声に、意識を戻される。羊に意識を戻されるなんて、これこそ人間失格ではなかろうか。
「『神様なのか?』って、君は聞いたな?答えはNOだ。オレは神様自体じゃない。「神の権能」、つまりは神が持つ能力を操る力を持っているだけの話さ。」
「神が持つ能力を操るって……それが、神様じゃないなら何者なわけ?あと、『オレの使い』ってどういう意味なのか、しっかり説明してもらわないと困るんですけど。」
「全くもって、その通り。……どっこい、残念ながらオレは少し説明というものが下手くそでね。……実際、やってみた方がわかりやすいだろ?」
やってみる?……一体、なにを?
その答えは、すぐにわかった。
突然、辺りが砂漠になってしまったかのような不自然な熱風。ジリジリと照りつけるような光。梅雨明けというには、些か急すぎる夏の訪れに、あんぐりと口を開けることしかできない。さらに、信じられないことに、その光と熱風の中に、色素の薄い銀髪の美しい少年と、大きな角を持つ牡鹿が浮かんでいた。
「やっと『使い』が見つかったと思ったら、早速お出ましだ……何度来てもらっても、オレはお前の眷属になんかならないぞ〜。」
眷属。また新しい言葉が出てきた。次から次へと……そんな私にも、わかることが一つだけあった。
どうやら、目の前の美少年と牡鹿は、アルゴの知り合いらしい。飼い主か何かならば、すぐにこの羊を連れて帰って欲しい。熨斗をつけたって構わない。早いところ、なんの変哲もない日常に帰りたい。
……しかし、この希望はすぐに打ち砕かれることになる。
「アルゴ。羊のくせに、僕の眷属にならないなんてね。命の保証はするし、美味しい干し草だってあげる。毛刈りだって、しっかり……ねぇ?」
妖艶な声で話しているのは、美少年……ではなく、牡鹿の方だった。その蹄でどうやって羊の毛刈りをするつもりなのだろうか。
次回、初めてのバトル勃発です!




