共闘ですか?そうですか。
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ミコのアパートは鉄骨アパートの2階です。よくある一人暮らし用のお部屋を想像してくれると嬉しいです。
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「いやぁ!話が早くて助かるよ、お嬢さん。どこかのバカ羊とは大違いだ。ねぇ?」
「いや、私まだ承諾してないし……そもそも、『使い』も辞めたいんだけど……」
いつまで続くかわからない闘いに命をかけるのも、時間をかけるのも正直めんどくさい。それに、たまたま「適合」しただけなんだし、代わりくらいどこかに転がっているだろう。
「何言ってんだ、ミコ。辞められるわけないだろ?」
モフモフのアルゴが腹立たしいまでにキョトンとした顔をこちらに向ける。
「なんでよ!?」
「だって、俺たち、交わしただろ?」
「何を!?」
「何って、決まってるだろ?『契り』だよ。」
瞬間、アルゴに名前を聞かれた時のことを思い出す。不思議な光と稲妻が身を包んだことも。
「もしかして……」
「そう、アレが『契り』だ!お前、やっぱり察しがいいな!」
「いやいやいや!聞いてないし!そういうのは懇切丁寧に説明して、お互いがしっかり内容を把握して納得して交わすものでしょ!?あんたは一方的に……!」
「まぁ、それは悪かったって〜〜。でも、ミコ。お前、アプリとかの利用規約、最後まできちんと読んでるタイプか?」
「は!?……しっかりは読んでないけど。それとこれになんの……!?」
言いかけて気が付く。どっちにしろ、私は「同意ボタン」を押すタイプだ。めんどくさいことが嫌いな割に後先考えない。私の究極の短所。この羊は、私の性格を見抜いていたのだ。
「まぁ、ミコはアレだな。知らない羊に気軽に名前を教えちゃうしなぁ。うっかり契っちゃっても仕方ないさ!気にすんな気にすんな!」
「あんなの……!詐欺みたいなもんじゃない!クーリングオフして!クーリングオフ!」
確かに、しっかり警戒しなかった私にも非はある。でも、それでも、騙し討ちのような形で契約させられたのは事実だ。なんとしても、こんな契約は破棄させなければ。
「お嬢さん……言いにくいんだけど、そのバカ羊との契約は破棄できないよ。……それこそ、アニマ・デュエロで勝者にならない限り、ね。」
「嘘でしょ……」
「残念ながら本当なんだよ。共闘すれば、勝利の確率は上がるし、同じ陣営の者は同等に勝利の恩恵を得ることができる。……まぁ、一組に与えられる恩恵の大きさは小さくなるけれどね。」
なんだそのシステム。神様のくせにケチくさい。罰当たりかもしれないが、命を賭けているのだから当然の怒りだ。
「僕はね、そこのアルゴの権能を買っている。だから眷属にしようとしたんだ。彼には使いもいなかったしね。……けれど、僕とレンは君たちに負けた。僕は、もう一度人の身を経て、そこにいるレンと平凡な人生を歩みたいんだ。レンには家族がいない。普通の幸せを……僕と一緒に……だから、お願いだ。一緒に……一緒に闘って、恩恵を分け合って欲しい。」
ナンパな口調だったソアレが、切実な表情に変わっていく。きっと、これが彼の本心なのだろう。なんとしても、「生き残りたい」という気持ちだけは、すごくわかる。平凡で幸せな生活がしたいという気持ちも。おそらく、私の答えが彼らの運命を決めるのだろう。勝てるかはわからない。でも、仲間がいた方が確率が上がることは確かだ。……怖い。私が何かを変えてしまうことが。こういう決断からは、いつだって逃れてきたのに……。チラリと、縋るようにアルゴの方をみる。
「ミコ、オレはどちらでも構わないんだ。オレが欲しい恩恵は大したことないしな!恩恵の大きさが小さくなっても問題はないんだ。」
お前が選べ。アルゴの答えはそうだった。彼は、きっと私が考えていることを知っている。つくづく不思議な羊だ。ムカつくのに、少し安心する。……どこか、懐かしいような安心感さえある。アルゴがそう言うなら、彼の「使い」でしかない私の答えは決まっているも同然だろう。無理やりとはいえ、私は「使い」なんだから。
「……ソアレ。頭、あげて。力になれるかわからない。勝利を約束することもできない。私、何も知らないし、ソアレたちに勝てたのも、きっと偶然。だから……ちゃんと安心させてあげられない。……それでもよかったら……共闘、しよう。」
生まれてはじめてかもしれない。こんなに、決意を持って自分の意志を伝えたのは。こんなに覚悟を持って、誰かと向き合ったのは。
「お嬢さん。いや……ミコちゃん。ありがとう。『共闘』は重さを分け合うためにするんだ。だから、僕たちを助けようなんて思わなくていい。一緒に『楽』をしよう。ね?」
私の堅い覚悟を、ソアレが柔らかい笑顔でほぐす。「楽」をするのは、得意だ。
私は、いつの間にか、この不思議な生き物たちにすっかり絆されてしまったようだった。
「うん、ありがとう。よろしくね!」
小さな羊と、小さな鹿と小さく握手を交わす。逃れられないなら仕方ない。楽をしながら乗り越えてやるんだ。
「ん……。」
レンが小さく呻く。意識が戻ったのかもしれない。
ハッとした顔でレンに近寄るソアレと、その様子を飄々と眺めるアルゴ。ーーさっきまでとは少し違う気持ちで、その光景を眺め、レンのためのお粥を準備するために、キッチンへと向かった。
レンが目覚めて、物語は次の章へと……!
今後ともよろしくお願いします!