邪神に目を付けられました ~おっさん(中間管理職)はツライよ~
魔法のある世界、王宮で育った男、マシャ。彼は赤子の時に王女に拾い上げられた奴隷の子だった。
彼は長じたのちに出生の秘密を知る。ある時『何にでもなれる者』と名乗る神に、王国で虐げられていた奴隷の救出を依頼され、魔法の杖を渡される。それはどう見ても邪神だった。
邪神と救出した奴隷との板挟みに悩むおっさんの話。
第一部
はじめに神は天と地を創造された。
(そうだったん?「光あれ」が最初かと思ってたわ。)
そして始まる6日間の大地の調整。多分4日目が一番大変。7日目はお休みです。
昼と夜、季節や年がわかる時計のため、太陽と月、ついでに星を造られた。
(時計かよ!)
神「俺様、星の名前全部言えるんだぜ。スゲーだろ。」
(星が出てくるのはそれだけかよ! 星の立場低いな!)
「んー動物の世話めんどくせーな。ヒュームでも作るか。コネコネ。地面の土から作ったから、名前は『地面』な。もういっこ作って、こっちな『命』な。」
地面「ハイ」
命「ハイ」
「オマエらヒュームは動物の名前でも考えてろ」
(中略)
「テメー、オレそれだけは食うなっつたよな!聞いてなかったのか!」
「つ、妻が...」
「へ、ヘビが」
「さっさと出てけ!」
...
「ふーこっちは食われなかったみたいだな。念のため炎の壁で囲っとこ」
(中略)
「あー、ヒュームの奴ら、俺の言うこと聞かねーし、俺の子分はヒュームの女とキャッキャウフフとよろしくやって、子供までつくってるしよ。ムカつくわ。ヒュームなんか造るんじゃなかった。」
「ただ、コイツは見所あるな。それ以外皆殺しな」
(中略)
「ヒュームの奴ら、俺様に断りもなく文明なんか進めやがって。プチっとな」
(中略)
「んーコイツも見所あるな。声かけとくか」
「我が力を貸してやろう。オマエの子孫が星の数ほど増えるように、これからオマエは『いと気高き父』と名乗るがよい」
(中略)
とある王国に流れ着いた『いと気高き父』とその妻。妻は非常に美しかった。
「おい、その女は何だ」「妹です。」
妹と聞いて、『いと気高き父』の妻に色目を使う王。そこに神が力を貸す。
神「おっとそこまでだ。人妻に手を出すのはご法度だな。払うもん払ってもらうか。」
王「い、妹だったのでは・・・」
疫病でバタバタ死ぬ王国の民。(いや罰は民じゃなく王にしろよ)
王「ひ、ひー勘弁してください。なんでも払いますから。」
美人局成功(一回目)。
(中略)
また別の王国に流れ着いた『いと気高き父』とその妻。
「おい、その女は何だ」「妹です。」
妹と聞いて、『いと気高き父』の妻に興味を持つ王。そこに神が力を貸す。
神「おっとそこまでだ。人妻に手を出すのはご法度だな。払うもん払ってもらうか。」
王「まだ色目すら使ってませんが・・・」
神「今回は、手を出す前に忠告させてもらった。」
王「い、妹だったのでは・・・」
『いと気高き父』「実は妹で妻なんです。兄妹で結婚したわけでして。」「おにいちゃん・・・」
神「王妃も王女も侍女も召使も、王宮内の女という女は子を産めなくしてある。払うもん払ったら解除してやろう。」
王「ひ、ひー勘弁してください。なんでも払いますから。」
美人局成功(二回目)。
(中略)
時がたち、『いと気高き父』とその妻は子を産み、その子も成長した。そして美しい妻と結婚する。
また別の王国に流れ着いたその子とその妻。
「おい、その女は何だ」「妹です。」
妹と聞いて、しかし興味を持たない王。
「他国の王から聞いてるぞ。私と王妃は良好でな。貴様の妻には絶対に手を出さない。絶対にだ。」
美人局失敗(三回目)。
(中略)
そして『いと気高き父』の子孫と、神の邂逅。暗闇での格闘。
「え、オマエ、オレ様見て死んでないの? よっしゃマブダチな。『神に勝つ者』と名乗っていいぞ。」
(中略)
第二部
その後、王国で一時は栄華を味わう『神に勝つ者』とその子孫たち(以下『神に勝つ者』の民)。
しかし時がたち、国王が変わり、他民族である『神に勝つ者』の民を奴隷として扱うようになる。
「あーそいえば、子孫繁栄させたるて『いと気高き父』と『神に勝つ者』に約束してたの忘れてたわ。」
(神は常に見守ってるんじゃなかったかよ! 奴隷になってからもう王が何代か変わってるよ!)
王宮で育った男、マシャ。しかし彼は赤子の時に王女に拾い上げられた奴隷の子であり、マシャと名付けられた。
彼は長じたのちに出生の秘密を知り、奴隷を助けるために、思わず王国兵士を殺してしまう。逃亡生活を続けるマシャ。
かくして神は、『神に勝つ者』の民の中から、運の悪いおっさん、マシャに目を付ける。
「おい。俺様はオマエの先祖に約束した神だ。約束の地に連れてってやるから、『神に勝つ者』の子孫連れてこい。オマエがリーダーな。」
「え、えっと、どちらさんで?」
「先祖に約束した神だつってるだろ、先祖の名前も知らねーのかよ。そうだな、俺様なんでもできるから『何にでもなれる者』とでも呼んでくれ。」
「い、いや、私、く、口下手なもので、とても民を導くなんて・・・」
「そんなん口が上手い奴にやらせとけばい-だろ。魔法が使えるようにしてやって、奇跡の杖やるから、コレで奇跡を行って連れてこい。とにかくオマエがヤレ。」
「でも・・・」
「オマエいい加減にしろよ。ブチコロすぞ」
(中略)
そして始まるマシャ VS 王国宮廷魔術師との魔法大戦。河は血になり、モンスターが召喚され、疫病が流行り、空は暗闇となった。さらに、王子、王国全土の民の子と家畜の子が変死する。
神の力により、王国の王は既に神に操られていた。
「もういいから出てってくれ。」
かくしてマシャは『神に勝つ者』の民を連れ、約束の地へと旅立つ。王国の民衆から略奪してから出ていくのは忘れない。
しかし海辺に近づいた時に王国の追手が! 王は既に操られてるので、完全にヤラセである。マシャが脱出したトコでワザと追いかけさせ、さらにギリギリのトコで助ける。
「見た? 見た? 今のカッコよかったろ? こんなん俺様にしっかできねーだろ。コレで俺様の凄さが王国の奴らに分かったろ?」
神の凄さを見せつけるためだけのために、大地を荒らされ、王子と民の子と家畜の子が死んだ、王と王国は完全にとばっちりである。
(中略)
約束の地の近く。もちろん先住民が住んでいる。
(中略)
神「オマエラあそこ行って全員ブチコロしてこい」
(中略)
「あ?、ダレが偵察しろなんて言った? 俺様がいつそんなこと言った?」
「偵察に賛成した奴はダレだ? オマエか? オマエもか?」
「俺様が力を貸してやるつってんのに、勝手に偵察なんぞ言ったってことは、俺様の力を信じてねえってことだな。ああ?」
「連帯責任で、全員40年の放浪だ。約束の地へ行けるのは、偵察に反対したやつと子孫だけ。偵察に賛成した奴は野垂れ死ね。」
マシャ「え? 俺も? 40年? 放浪?」
放浪中「こんなハズじゃなかった」「王国の奴隷の方がマシだった」「オマエが連れ出したせいだぞ」
マシャにぶー垂れる民。
マシャ「ちょ、おま、オレがどんだけ苦労してると。神に聞こえたらどーすんだよ」
神「聞こえてんぞ。」「言った奴は死ね」どんどん減る『神に勝つ者』の民。
(中略)
「もうこのへんで畑でも作って住めば都だよ」「肥沃そうだな」「んだんだ」
マシャ「ちょ、おま、シーッ」
神「聞こえてんぞ。」「言った奴は死ね」またどんどん減る『神に勝つ者』の民。
(中略)
「あー腹減った」「ホント腹減った」「クソ不味い神の食物しかねーし」またぶー垂れる民。
神「ほー、腹が減ったと。」「俺様が用意したメシが不味いと。」「すまんな気づかなくて。」「よっしゃ、オレ様がウマイモンを腹いっぱい食わせてやろう。」
「やったーさすが神」「まさに神」「ステキ!抱いて!」「肉だー」手のひら返す民。
「もうおなかいっぱいです。」「こんなに食べたのは久しぶりです」「肉だー」
「んー、聞こえんなー。腹が減ってたんだろ。もっと食べろよ。まだまだあるぞ。ホラ、俺様が食わせてやろう。」
「ちょ、ン、ムググ・・・・」 ..... 「パーン」 さらにどんどん減る『神に勝つ者』の民。
(中略)
「もうこれ以上、言うこと聞かない民を率いていくのは(心の声:もっとワガママな神の言うこと聞くのは)、私には無理です。いっそ殺してください。」(血涙)
神「んー聞こえんなー。」
神と『神に勝つ者』の民に挟まれ、マシャの振り回される日々は続く。
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嘘予告
聖なる山の山頂で、神との契約をするマシャ。(約束の地と完全に逆方向だよ)
神「……でな、俺様を祀るときは、こーゆー祭壇で何センチ何ミリでこういう飾り付けて……」
マシャ(なげーよ。こまけーよ。誰だよ十個とか言った奴)
その時、麓で待ちきれない『神に勝つ者』の民が勝手に祭りを始める。祀り方の違う祭りに神は大激怒。
神「……アイツラ言うこと聞かねーし、もう皆殺しして俺様とオマエ(マシャ)の子孫だけでよくね?」
マシャ「ちょ、ちょっと待ってくださいよ」