【75】賢者の登壇
ようやっと賢者さまが登場する模様。
長かった……。このあとすぐ魔女も
出さにゃならんのに……(^_^;)。
マッティアの話は本編とつながる
構造上、偶数会のみになります。
今回はおやすみです(テスト期間中で書いてる暇がn)
――霞み、空気に溶けていくように壊死する『泥人形』。
ゲイブにふっ飛ばされた人形は空を飛び、
やがて耐久がなくなり砕け散ったのであった。
――皮肉な事に、『泥人形』の命の源である
魔力から溢れた力に、『泥人形』は倒れた。
その場の全員が、唖然とゲイブを見つめた。
彼は、血が出そうなほど拳を握りしめ、
しなやかで強い吐息を細く吐きながら、
ただ、王の如くその場に佇んでいた。
「……さあ」
永遠と思われたゲイブの
賢者タイムは終わりを告げ、
ゆっくりと紡がれた言葉に、
――全員の鳥肌が疼いた。
「次は、誰だ?」
圧倒的な、オーラ。
他者の存在を寄せつけず、決して許さず、
己こそが大地の覇者であると見せつける。
イズミと仲間たち以外の誰にも、
この場に立たせはしない。
その威厳たるや、まさしく《絶対意思》。
「……俺はあの時、とんでもない
奴を逃してしまったようだな――」
クライスの悔やむ声は、誰にも届かない。
しかし、ゲイブの心の叫びはイズミや
泥人形。『不快』に『魔法剣士』、
この場の全ての人間に届いていた。
それが示唆するは、つまり――ロードの血筋の復活だ。
「俺サマの相手は、いねえのか?」
ゲイブの肉体は自信に満ちあふれ、
その強大で不遜な態度に、意思を持たないはずの
『泥人形』でさえもが、臆しているようだった。
関節が可動しているのか不安になる動きで地団駄を踏み、
「う〜あー」と不可解なうめき声を漏らしながら棒立ち。
――そして、集団の内の何体かがゲイブに向かい特攻した。
「――舐めんなぁアア!」
ことごとくを粉砕していく王の拳。
ある者は空を飛び、またある者は
地に押しこまれ文字通り肥料となった。
砕け、壊死し、ドロドロの泥となって
『泥人形』たちの生涯は終わっていく。
その姿は、もはや見るに絶えず。
なんとも醜く、なんとも醜悪で。
なんとも――『不快』な光景だ。
「……こんなモンか。
まだ、やりてえ奴はいるか?」
彼らに意思がないことは分かってる。
だが……王はせめての慈悲として、
残った『人形』たちに最後の
撤退の余地を与えた。
「うぇああああぁぁぁるぁん」
生まれてきたことを後悔するように、
『泥人形』たちはフラフラと踊った。
自分の居場所も意思すらもなく、
どう行動していいか理解できない、
ただ迷える者たちの――統率の
かけらもない滑稽な舞だった。
「――泣い、てる」
その舞に評価をつけたのは、
今まで黙って傍観していた『不快』の王。
染王ことゴーディだった。
「俺の人形たちが……泣いているッ!」
「……はあ?」
口に出さないだけで、イズミもきっと
ゲイブと同じ感想を抱いただろう。
滂沱の涙を流し、立ち尽くす
この男は今なんと言ったんだ。
『俺の、人形?』
「ゴーディ、あなたは……」
『泥人形』の、何なんだと。
そう問いかける前に、答え合わせを
かき消す雷鳴が――周囲に轟いた。
「卑しい人形風情が――。
この私の登壇である。道、
開けなさい」
晴天の空に響いた雷鳴。
その正体は、女性のそれとは
思えない声帯の怒号だ。
1人の女性が突然現れた。
そこまでは、まだいい。
理解の範疇が追いつかないが、
魔法がある世界で瞬間移動が
できる人なんてザラにいるだろう。
だから、イズミの一番衝撃的だった
光景は――次の瞬間にまき起こる
虐殺の奇跡だった。
『ひらけ、ゴマ』
その一言で、魔法が効かないはずの
『泥人形』の体躯は一瞬で破裂し、
あとにはゴマのような残骸が残る。
今のは果たして、魔法なのか。或いは、
イズミの思った『虐殺の奇跡』だろう。
どちらでもいい。
それを果たした『言葉』と、その『言葉』を
作り上げた声帯の持ち主が――今、
イズミの目の前にいるのだから。
「いやあ。初めましてね、イズミさん。
部下のノイリーから、お噂はかねがね」
嫋やかに頭を下げたその女性が
身につけている衣服は――。
見間違うことができようか、
純白のセーラ服だった。
「私は『南の賢者』キサラギ・ショウコ。
わざわざ助けに来てくれて、ありがとう」
はい、このシーンが書きたかった。
やっと書けた。これでこの章は終わり、
次からは南の都市フレドリーに冒険の
地は移ります。




