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【74】世界よ、聞こえるか!

今回はゲイブの(恐らくこの章最後の)見せ場です。


あ。たび重なる評価、感謝いたしますm(_ _)m


今回からあとがきのほうで、ほとんどの読者さまに

忘れされらているだろう「あいつ」のお話をします。

のちのち本編ともつながるので、どうぞ

最後までご愛読ください(´ε` )


ということで、あとがきの方で

番宣できないのでここでします。


次回――『賢者の登壇』



――ずっと、後悔していた。


あのとき、『西の勇者』にさんざんに負かされたときから。

あのとき、クライスに慈悲をかけられたときから。


俺様は――俺はずっと、

胸を張って『北の魔王』の家臣と名乗れただろうか。


今回の『南』への遠征に参加したのだって、

『西』との戦いで吐いた恥を回収する為だ。


……今まで、俺より強いやつはいないと思っていた。


俺こそが最強だと、ナンバーワンでオンリーワンの

ゴブリンロード、その跡継ぎであり続けるのだと。


でも、現実は常軌を逸して違った。


親父――先代ゴブリンロード――メルジェーノフ・ザッハークに、

面と向かって「玉座はやらない」と引導を渡されたあの日から。


俺は、自分の弱さから逃げるための何かを、

ずっと探していたのかもしれない。


読書に没頭し、女を好み、ロウムのババアに

ちょっかいをかけ続けていたころ……。

イズミの姉貴、アンタは現れたんだ。


『――私が、玉座を継ぎます。私が二代目

ゴブリンロード、タドコロ・イズミです!』


どうして……。


どうしてこんな、ひょっとでの女が。

ヒョロくて胸もなくて、力の弱そうな少女だ。

それでもこんな威圧感を感じるのは、

イズミがまとう『魔力』の力だろう。


なんでも、レベルがカンストしているらしいが。


――だから、なんだってんだよ。

俺の権能は、《絶対意思》は周囲の

魔力を吸い上げて、レベルを底上げさせる。


――一日だ。一日《絶対意思プライド》を発動させ続ければ、

俺だってあの高みに達することだってできる。

反旗をひるがえそうとすれば、それは余裕だ。


だから正直、最初は彼女を疑っていた。


でも、西の進軍をきっかけにして、

俺たち『里』の連中がキズル村に

遠征することになったとき……。


『私の王道を理解してもらえないなら――理解してもらう』


そう言ったイズミの目は、本物だった。

本気で、俺たちゴブリンを導こうとする、

指導者の――揺るぎないロードの瞳だった。


『イルガスは、私についてきてくれる?』


イズミの姉貴に忠義を誓った、

最大の理由はこれだった。


『――この命に変えてでも』


ああ、――イルガスよぉ。

お前の認める女なら、

間違いねえよな?


――信じても、いいんだよな?



そして、イマ。


「ッはァおらぁああああぁぁああ!」


腹のそこから、自分の不甲斐なさを

張り上げる。煮え切らない怒りを、

恥を、葛藤を、迷いを、希望を。

――すべてを叫びに載せて。


力の根源たる咆哮よ、

俺に――力を。


「人形ども――来いや死ようぜ真っ向勝負だ。

そのふざけた体、バランバランにしてやるよ」


パン! と、手を鳴らした。


バン! と、大地を踏み鳴らした。


そして、実感する。

力が溢れてくることを。

体が熱を持ってくることを。

血が、心が、叫びを訴えていることを。


「うぇああああぁぁぁるぁん」


『泥人形』が忍びよる。

不可解な声を響かせて、

大地をひたひたと

踏み汚している。


今こそ、贖罪のとき。


いくぞ――イズミ殿下。

あなたへの忠義を、今。

――ここで示そう。


「――キング掌底インパクトおおぁぁぁ!」


拳がうなり、肘が泥人形へと突き刺さる。

重力を無視したようなスピードで、

それは空の彼方へと吹っ飛んだ。


――唖然とする共闘の仲間たち。


『魔法剣士』のクライス。

『不快』のゴーディ。

『北の魔王』イズミ。


錚々たるメンバーが、

俺の拳に見入っていた。


ああ――世界よ、聞こえるか!


誰よりも強いロードが、

帰ってきたぞおおお!




あとがき物語第【01】、『その頃のアイツ』


一方そのころ。

『南の賢者』の住処であり、

南の王都フレドリーに向かう

イズミ一行。とは、対象的に。


――キズル村にお留守番し、

村の護衛を偉大な主から

任されたゴブリンがいた。


その名は、


「おーいマッティア。ガーちゃん、餌、食べてるか?」


「おー。吐くほど食ってやがる」


――果たして、どれほどの読者が

コイツの存在を覚えているだろうか。


家畜小屋であぐらをかいて座り、

一匹の子ドラゴンが餌を食んでいるのを

淡々と見つめて、ため息を吐く碧眼の彼。


彼の名は、マッティア。


両親を人間の冒険者に殺され、

ゴブリン里ではゲイブさん直属の部下で、

最近まで人間を憎んでいた、

『ハーフゴブリン』である。


来るべき西との決戦では、

ホカリ・セイタに開幕そうそう

ボコられていた、アイツである。


あげく巨大化したガーちゃんに蘇生された、

特に活躍しなかった、言わばモブである。


「ガ〜。が〜」


そんな男の不甲斐なさを悩む

葛藤も知らず、ガーちゃんは

ただ笑顔で餌を食む。食みまくる。


「……お前はけっこう、

活躍してたもんなあ」


この男、ついに子ドラゴンにまで

愚痴をもらし初めたまである。


――念のため、コイツの存在も説明しておこう。


こっからの語り部は……うん? 語り部?

なんだそれ、……まあいいか(カンペ見る)


えー、こっからの語り部は俺が

やっていくから、よろしくな。


こいつの名は、ガーちゃん。

我らが主――、『北の魔王』のペットである。


「ガ〜。がー」


こいつは体内に魔力をためる器を持っており、

イズミのチート的な魔力を蓄積して巨大化し、

ゴブリン陣営唯一のヒール能力、

『癒やしの吐息』を持つ龍だ。


……先の大戦では、

俺もこいつに

助けられた。


こいつ――ガーちゃんは、

俺たち――ゴブリンの里出身の者たちがここ、

――キズル村に着任した時からなぜか居たのだ。

――村の奴らに聞くぶんには、村の外に

あった卵から突如として孵化したらしい。


謎だ。なぜこんな貧民街の居住区外に

超獣の卵があるのか、こいつの食った

飯はこの小さい体のどこに消えているのか。

謎である。真っ黒な見た目どおり、

すべてが闇に包まれている。


「……はあ、いいよなお前は」


生まれた時から住処があって、

腹いっぱい食うものがある。

俺はなかったよ、ガー。


ハーフゴブリンとして、

人間に囲まれて育った。


忌み嫌われ、石を投げられ、

あげく――両親は

冒険者に殺された。


こいつはいいよな。

親が近くにいなくても、大切な人が

いないから失わないし、悲しまない。


誰にも脅かされない平穏な生活がある。


それだけで充分じゃないか。


「ガ〜。がー」


「……それしか言えんのか、お前は」


こいつには借りがある。

こいつの立場は羨ましいことこの上ないが、

それとは別に、戦場での借りが大きいのだ。


……だから、まあ。

飯当番くらい担当してやるよ。

俺がやんないと、他のやつに

食い過ぎだって取り上げられるもんな?


「ガ〜。がー」


――この時のマッティアは知らなかった。


ガーがマッティアを親と認識し、

親愛をよせていることに。


「お前、飯あげすぎじゃね?」


こいつは、見回り警備をしている、

キズル村の駐屯ゴブリンの一人だ。


――このキズル村には、

ゴブリンと人間が共存している。


それが示すのは、『北の魔王』が

納めた――大陸最初の領土である、

ということだ。ここが後々、

『北の魔王』の賢威を示す

ことにつながるかどうか。


この貧民街は、ある意味『北』の発展の最前線と言える。

おれは、イズミ殿下からここの護衛を

仰せつかったのだ。


話を戻そう。


『人間化』の薬で人間の姿をした

ゴブリンは腕章をつけ、

人間は無腕章である。

こいつは腕章持ち、

つまりは仲間だ。


「いいんだよ、これくらいで。

寝る子と食う子は育つんだよ」


「そうかよ。ところでさ」


興味もなさそうに、

腕章の男が言った。


「この前、その龍の出自が気になったから、

ちょっと自己流に調べてみたんだよ」


「暇だなお前も。ちゃんと護衛しろ」


「あはは、何を守るんだよ。

この村に脅威なんかないってのに」


そうなのだ。

護衛を仰せつかったはいいが、

ここでの生活は暇だ。

なんせ敵がいない。


食料の調達も、人間とゴブリンで

完璧に管理されているから、

皮肉なことに平和なのだ。


「で、話を戻すけどさ」


「けっきょく分からずじまいだった、だろ?」


「いーや、違うんだなこれが」


ちっちっちっ、と腕章持ちは指を降り。


「――あいつが孵化したときの殻から

割り出したんだが、それと酷似した

殻が、東方の平原地帯にあるんだよ」


「へえ」


どうせ何かの間違いだろ。


正直、おれも大して興味は

なかったが、次に続く言葉には

それほどの魅力があったかもな。


「――そこに、俺たちがお世話になってる

『人間化』の薬を調合するためのアイテムを

落とすモンスターがいるらしい」


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