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【09】戦士の野望

イズミ視点に戻ります。


――この思わせぶりなイケメンめ……!


足元に転がるこの長髪野郎に、先代ロードの爪の垢でも煎じて飲ませてやりたい。


でも見た目はどストライクなんだよなあ。硬派というか、なんというか……。


とりあえずお願いだけは聞いてあげようとは思うんだけど、今回は話は別だ。


「……私たちの、仲間?」


「そうだ。オレはオレの野望のために、貴殿に力を貸したい。――どうだろうか? さきほど貴殿にも見ていただけた通り、オレの剣の腕はそこそこだ。同士であって、損はないと思うが……」


下手に出ながらも、自分の欲求を優先させんとする高圧的な態度だ。



うーむ……私的にはそこまで反対なんじゃないんだけど……。



「どうして、僕たちの同士になりたいと思ったんだ?」


「それが分からなければ、貴殿を引き入れることは容認できない」


参謀の二人がそれに負けないくらいの態度で毅然に応じる。


「……いいだろう。話そう」


あまり語りたくもない話だが……と前置きしてから、ブラッドフォードは息を吸い込んだ。


「オレには、9つ違いの兄が居てな。

そいつが、それはそれは大層な屑野郎なのだ。たまに働きに出るのが関の山で、殆どの日が朝から酒屋で呑んだくれるか、博打を打って家の有限な財産を失うかの二択……。

朝日が登るたび、顔を赤くして酒の臭気を纏わせながら帰宅する兄貴を見るたびに、もうオレが手を下すしかないと思っていたのだが……。この磨き上げた剣と手を汚すことになると思うと、どうしてもあと一歩が踏み出せない。……それに、どれだけ奴が屑であろうと、血が繋がった家族に変わりはない。幼少の頃は、よく世話になったこともあるしな…………。だが、中年になった奴は今や生きる屍。

快楽に身を捧げることしかしなくなった酒屋の傀儡だ。……だから、奴を手に掛けるためのあと一歩が欲しい。貴殿らがその侵略作戦とやらを決行してくれれば、村の人々はお主らにあやかって、働きたくなくなるのだろう? そうすれば、オレの稼ぎも必然的に増えるし、なにより兄貴は正真正銘の家の害と化す。そうすれば、オレも迷わず剣を振れる。だから、貴殿らに力を貸したいのだ。オレは、オレの兄を殺すための理由が欲しい」



「……ほう、中々いい着物ではないか」

「それ、先代が残してった着物だから。女の私じゃ着れないから、宝の持ち腐れだったんだよね」


「――皇女殿下、ちょっと」


「うん? ちょ、いた、いたたっ!?」


あのあと私はブラッドフォードを開放して、武装一式と着物を差し出した。


大きな鏡の前で立ち姿を確認する彼と、その横でイケメンのカッコイイ横顔を盗み見ていた私を、レイが耳を引っ張って呼び寄せた。


「なぜあの者を引き入れたのです!?」

「そうです殿下! あの者、我々を利用したいだけではないですか!」

「いやお主ら、あの武人も相当苦労なされているのだ……! そこに同情の余地がないとは言い切れ――」


「「脳筋は黙っていろ!」」


膝を抱えて落ち込むジヲォン。

普段顔がいかついおじさんがああいう事をやると、なんとも哀愁がね……。


「……ってそれよりも、レイとイルガスの質問に答えなくちゃね」


私は三人を見据えて、堂々と応えた。


「――私はなにも、参謀の二人みたいに深いことは考えてないよ。力を貸してくれるなら、貸してもらおうって、ただそれだけ思ってる。あの人が言ってることが嘘で、いつ私達を裏切るのかもしれないとか。そんな未来のこと、バカの私にはわからない。でもね、人間を信じれなくなったら、ゴブリンの種族以外の誰も信じられなくなっちゃうよ?」


三人は黙って、私の理屈を聞いてくれていた。


「それに、私たちは自分たちゴブリンに害が及ばないよう、人間を私たちに『依存』させると同時に、『共存』していく道を選んだってことでもあるの。一人の戦士を無力化できないようなら、『異世界人類ニート化計画』は失敗したってことになる。違う?」


「……いいえ。異論ありません」


「僕たちは、異世界から来た、人間の貴方に忠誠を誓ったのですから」


「……所詮、我々は弱小モンスター。いつ人間に滅ぼされるとも分からぬ身……。

そこに光明を見いだしてくれたのは、貴方です――」


幹部が揃って、私に向けて膝を着く。


――彼らには本当に、日本ではなかった「責任」というものを感じさせてくれる。


だから私も、ゴブリンである彼らが好きだ。


「では諸君、早速参ろうか!」


指揮が上がったブラッドフォードが、剣を掲げて叫んでいた。




――目下の目標は、ゴブリン城塞からほど近いキズル村。




私の、ゴブリンロードとして初の初陣だ。




レイとイルガスのキャラ付けが難しい……これから頑張ります(-_-;)

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