【S19】俺たちは認めさせたい②
――俺が、俺こそが『真の勇者』を名乗るためには見聞が必要だ。
――過去の英雄、ユキミヤ・リョウヘイを追い抜くためには、それに
見合う努力と迷える人々に対する貢献、世界の逆賊に対する抑止力で
あると、俺自身のちからで証明せざるをえない。
つまり、俺が扱える剣と魔法で。
「(……大丈夫だ、俺は。やれる)」
俺たちの戦友、ホカリ・セイタは腰抜けだ。
あんな奴に、想い人の隣を許していたと思うと、
吐き気に近い怒りがぐるぐると渦巻いてくる。
あんな奴と、俺は違う。
中途半端な才能を持つ者より
幼少のころから才を認められ、
剣を磨いてきた者のほうが、
強いに決まっている。
それを、証明するための第一歩として――。
「この集落を、落とす」
◇
しかし、俺の予想に反してその集落はすでに『堕ちていた』。
――レィゲル集落。
元は『南』の領土の駐屯兵が在中する場所であり、
費用の問題で取り壊されていない軍事基地がある、
いわば対戦時代の遺産である。
無論、近年まで封鎖されていたこの地域に足を踏み入れ、
集団の根城として本拠地を構えた集団はいわく付きだ。
その名は、『歪んだ守護者』。
そいつらは、軍事機密に溢れたこの一帯を占拠して。
「我々に手を出せばここの情報が漏洩される」と脅し、
『情報』という人質をとられた『南』はやむを得なく、
守護者たちをこの一帯に野放しにすることを妥協した。
現在、可能な限り集めた情報だと――『歪んだ守護者』は、
『南の賢者』のお付き、或いは騎士や術士の集いだそうだ。
何らかの理由で『南の賢者』と決別し、
縁を切った、ハグレモノの集団―……。
それが、この荒廃した集落――レィゲル集落の城主たちである。
◇
庁舎は無機質に建てられ、装飾の類はまったくない。
もとは白く清潔な壁をしていたのだろうが、
今では黒ずみ灰色に焦げ、意味不明なラクガキや
塗装が施されてしまっている。
錆びついたトビラは、開けると『ギィー』と
嫌な音を立てて、俺を出迎えてくれた。
「誰だてめぇ。帰れ」
おっと、さっそくおもてなしの歓迎だ。
トビラを開けた先にいた男はナイフを持ち、
ギラついた視線と剣先を俺に向けている。
「すまないがここの主に用がある。
主の元へ案内してもらっていいか?
歪んだ守護者――その一人だろう?」
「殺す」
向けられる殺意には容赦がない。
しかし、こんなモノは戦場を経験してきた俺には
まだ甘い。――ゴブリンの大群と戦った俺にもう、
怖いモノはない。
「黙って、支持に従ったほうが身のためだ」
刺突の間隙をついて、腕からナイフを奪う。
呆然とする男の首筋にナイフをちらつかせ。
「もう一度だけ言う。そのほうが、身のためだぞ」
「ひっ……!」
表情を恐怖に染めた男は、本当にすなおに
俺の支持に従って主のもとへと案内した。
「ここか」
コク、コクと小刻みにうなずく男。
首筋のナイフをさっと離すと、
ネズミのように逃げていった。
「……そんなにも俺が怖かったのか、
それとも、ここの主が怖いのか……」
たとえ腐っていようと、『南の賢者』に
仕えていた者たちの集団である事は確か。
必ず共闘関係を結び、かの『北の魔王』を
打ち砕く!
「失礼する」
念のためノックをして、
この庁舎に潜入して二回目のトビラを開ける。
そこには。
「――26匹」
灰色でボサボサの髪の毛に、色あせたシャツを着た男が
ほつれだらけのソファーに寝転がっていて――。
「あんたがここに来るまで踏み潰した、アリの数」
それが『不快』を司るハグレモノの王、
ゴーディとの出会いだった。




