【60】サバイバル三日目・後期
新キャラが説明のめんどくさい権能を持ってるせいで、
話が進まない……^^;
「――かの者らを、拘束せよ」
空気が、自然が、『不快』に喘ぐ。
枝が、ツルが――『不快』に耐えかねて
伸びる。まるで天へ救いを求めるように、
腐った瘴気を帯びた枝が、レイとブラッドへ伸びていく。
「ぐっ……!」
ブラッドの腕に絡んだツルは、確かな意思を持って
彼の右肘を拘束していた。これでは、剣が使えない。
「……っこのッ!」
「無駄だ」
剣で切り落とすツルは、まったく原型をとどめていない。
まるで、魔女の鉤爪のように尖った鋭利な幹とその先端。
歴戦の戦士にとっても手に余る脅威だが、それもそのはず、
伸びている枝やツルは、腐り落ちて腐敗し、歪んだ加護の
賜物『不快』によって洗脳された、
堕ちた自然の産物なのだから――
『痛み』という概念を伴わない種。
いくら切っても切っても、
それは堕ちた存在がこの山に存在する限り、
どこからともなく湧いてくる。
非戦闘員であるレイが拘束されるのも、
時間の問題だった。
「れっ、レイ殿!」
そして、
それを自由に操る彼もまた、
人間の概念を超越した存在。
「俺は染王ゴーディ。この自然界に堕ちた至るものは、
すべてが俺の支配下に落ちる。――…枯れ葉に、死骸、
投棄された廃棄物――…山にはびこる『負』の遺産は
ぜぇーんぶ俺のモンだ……。ああ、汚ったねえ……」
男の舌は油が乗っているのかと思うほど周りがよく、
そして聞く人の心を蝕んでいくかのような、
人外的にどす黒い声音をしている。
「『北の魔王』はどこにいる」
その男が、二人を舐め回すように
見つめながら問いかけた。
「ゴブリンの雌の体なんて、
固くてブニブニしてそうで、
正直言って触りたくもない。
けど――ボスから承ったお仕事だからな。
吐かねえなら実力行使に移らせてもらう」
なりを潜めていた周囲の包帯男たちが、
すっと、音もなく距離を詰める。
加えて、手足を拘束された二人。
「っ――…!」
「――無駄だぜ、ゴブリンのメス豚。どれだけ抵抗しようが、
腐敗の鎖からは逃れられないさ……。そのまま自分の四肢が
腐っていくのを、興奮しながら眺めてればいい……」
微量の毒が塗られた言葉をたんたんと紡ぐ男――ゴーディは、
棒立ちしながら「じわり」と焦るレイを視姦していた。
身を捩り、なんとか脱出しようと試みるその姿を見て。
「いいねえ……。いかにゴブリンでも汗をかいて
焦る姿は色っぽい……。もっと、見せてくれよ」
声音を上ずらせ、汚染された唾液を下顎から
垂らしながら、ゴーディは尚もその姿勢を崩さない。
セクハラなんて言葉じゃ表しきれないそれはもはや、
女性という存在への冒涜だった。
だから、無類の女好きのこの男が黙っている筈はない。
「――テメェに見せるレイ姉貴の素肌は、
一ミクロンたりともありはしねえぇッ!」
新たな武器、ショルダーファングを手にした
ゲイブ・ザッハークが、颯爽と雑多から現れる。
彼が通ってきた道に配備された兵はなぎ倒され、
血の公道が出来上がっていた。
「……なんだ、お前」
必要最小限の動きで、ひょいと牙を躱すゴーディ。
視姦していた両目は、いつの間にか嫌悪と、警戒の色を宿していた。
「俺の名はァ、ゲイブ・ザッハーク。正当なゴブリンロードの血筋にして、
女を愛し、女に愛された男。イズミ一筋約半年――その間に数々の武勇を
立てた愛と正義と忠義の家臣。テメェみたいな悪を砕く、ゴブリンの牙だ」
最近暑い……。この夏休みまでのただ暑い期間が、辛い……(*_*)




