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【57】サバイバル二日目

語り部はゲイブ+第三者です。

――イズミの姉貴と出かけたサバイバル、二日目。

俺はぁ長髪の剣士といっしょに、狩りに出ていた。


「――ゲイブ殿! そっちに行ったぞ」


「任せろ長髪! ぶった切ってやらァ!」


魔獣、なんて呼ばれる化物も、

俺様の手にかかればただのイノシシ同然だ。


森の脇に追い込み、魔獣は荒い息をはきながら俺たちを睨みつけている。

幾重にも重なった鉄の牙は、俺たち狩猟を噛み殺さんと向けられている。


―……甘いぜイノ公。


いつか出会った人間は、

お前よりもっっと鬼畜だったぜ!


「うぉらああああ!」


俺の分厚い爪が、獣の肉を顔から2つに切り裂いた。

爪は、鮮血を散らせながら、日の光を浴びて輝いた。


「はっはあ! ざまあ見やがれ!」


「いや、すぐに下がれゲイブ殿!

イルガス殿たちの報告によると、ここいらのモンスターは」


変幻のスキルを持っている――…と叫ぶ前に、

ときすでに遅し。


「うおッ! 角が生えたぞ!?」


イノシシを切り落とした俺様の腕に、

強靭な角が生えているじゃないか。


「遅かったか……」


悔やむ長髪の剣士。


いや、待て。これはむしろ……。


「かっけくねえか!?」


二の腕あたりに生えた、

一本の強靭な角。見方によっては

牙のように見えなくもないし、

それが両腕に宿っているのだ。


これは、つまりアレだ。


「男のロマンってやつじゃねえのか!?」


「はあ!? なにを言っているゲイブ殿!?

急に腕から角が生えてきたら不気味だろう!」


「誰がなんと言おうが、角とか牙はかっけえ!」


俺様は俺様のポリシーを貫き通す。


なんだったら、この生えた牙を体の一部として

使いこなしてやろう。


研いだりひっかけたりして、

俺様専用のショルダーファングとして

重宝してやろうじゃないか。


「うしッ! 今日分の飯もできたし、

とっとと帰るか。おい、長髪野郎。

この獲物の足のぶぶん持って――」


「――」


ブラッドの視線は、

ゲイブに向いては

いなかった。


延々と生い茂る下草に、

身を隠せるほど茂った

草と木々のあいだに――…。


人の視線を感じた。


「……おい」


ゲイブは小声でブラッドに呼びかけ、

「平常通りに装え」とアイコンタクトをとる。


「……あ、ああそうだな。では、俺はこっち側を

持とうか」


「ああ。お前、剣士のくせにしちゃあ細えから、

いっぱい食うんだぜェ?」


「お主は食いすぎな!?」


至って正常に振る舞って、この場を離れる。


万が一、追ってくるようであれば外的勢力として

キャンプ地へとおびき出し、ぎっくり腰のせいで

留守番をしているジヲォンとともに挟撃する。


彼も老いているとはいえ、一流の武人。


この程度に気配に気づかないほど、

衰えてはいまい。


「(……なんなんだ。この気配は)」


「(……わかんねえ。けど、数は

大体わかった。おおよそ、十人が

いいところか。大部隊じゃねえ)」


「(すごいな……分かるのか?)」


「(野生の感だ。お前と比べんな、人間)」


「(……恐れ入ったよ)」


ブラッドは緊張しているからか、

少し挙動不審だったが、なんとか

決定的なスキを見せることなく

キャンプ地へと戻ってきた。


「おい、ジジイ! 戻ってきたぞ!」


必要以上に、声を張り上げたゲイブに

ジヲォンが視線を向ける。


「――おお、ゲイブ!

つまみ食いなど、してないであろうなぁ?」


――さっきのは、気づいた顔だ。

わずかな間隙で、状況は完璧に理解してくれた。


「肉塊をどうやってつまみ食いするんだよ!」


「お前ならやりかねないだろう。どれ、

そのイノシシを持つのを手伝おうか!」


よいせっと腰を持ち上げるジヲォン。


そのままゲイブたちを

手伝うかと思いきや――…。


「――はあっ!」


老体とは思えない体運びで、

いっきにゲイブたちの背後

へと跳躍。


不意をつかれた人間たちは、

身を隠していた丈の長い草のなかで、

恐れおののいた顔をしながらジヲォンの

巨体を見上げていた。


「……なんだ。貴様ら」


ただ、それだけの追求。


しかし、耐性のない人間―……。

魔族と相対したこともない人間がジヲォンを見れば、

じゅうぶん失禁に値する迫力を持ていた。


「て、撤退!」


その一言で、蛇睨みをうけた人間たちは、

いっせいに口を揃えたように逃げ出した。


武器を落とし、

身の振る舞いも忘れ、

女の子走りのような

姿勢を見せながら、

ひた走り、逃げる。


警戒態勢を緩めない、

ゴブリン幹部の三人。


沈黙は、唯一の

人間であるブラッドが裂いた。


「……あやつら、俺たちがイズミ一行で

あると知っていたのか?」


「ああ、恐らくな」


「けっ。どっちにしろジジイの一睨みで

逃げるなんざ、玉なしの行動だぜ」


「いや、俺でもジヲォン殿は怖い」


「とにかく。ゲイブ、ブラッド殿。

そろそろ殿下たちもお帰りになる。

警戒を緩めず、各位に伝達だ」


「「了解」」


そして、帰宅したイルガス、レイ、

イズミにその出来事を伝えると、

彼女たちも同じ目に合った、と。


「さーて……。私を狙うだなんて、どんな不埒ものなのかしらん?」


多少性格が気持ち悪くても、イケメンだったらいいな。

――イズミは、なんとわなしに刺客に夢を求めていた。




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