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【56】サバイバル初夜

最近見てなかったら三桁行ってた……m(_ _)m


「――やっぱ鍋にはネギでしょ? 肉でしょう? 豆腐でしょう?

あ、糸こんも必要だよね。あとは白滝と……しいたけもいいよネ!

よし、全員!狩りに行くぞ――っ!」


という掛け声で始まった、サバイバル初日の狩りは

大収穫に終わったのだが。


その代償として、ゴブリン一行の格好はひどい有様に

なっていた……。



夕日は暮れ、あたりは一面の闇に包まれる。


夜行性の動物たちが夜の到来を喜び合唱するなか、

少し開けた場所で、焚き火を囲うものたちがいた。


火の爆ぜる音、団欒の声。


はたから見れば、微笑ましいキャンプの一部始終を

眺めているようだが……―彼らは果たして、人間ではなかった。


「――はははッ! なんっだイルガス、そのくちばしはよお!」


「黙れゲイブ! カモのモンスターを倒したら、

こうなったんだ! これは不可抗力なんだよ!」


「まさかこの一帯のモンスターがこんな醜悪なスキルを

持ってるだななんて……。もう、参謀の私としたことが、

敵の厄介さを見誤っていたみたいね」


自己分析をしながら、できた鍋汁を嘴でクールに

すする参謀の二人。なかなかにシュールである。


「いやー……。まさかここら辺のモンスターが、

自分の姿を似せる術を持ってたなんてねぇ……」


「……殿下も、今一度ご自分のすがたを見たらどうです?

……あ、もうだめですね。鍋食って完璧にリラックスして

いらっしゃいますね。布団、そこに敷いておきますね」


さすがイルガスきゅん。

仕事が早い!


「……食ったら寝る。まるでニートじゃないか」


いいのいいの。

寛大な『北の魔王』はそんなの気にしない。

むしろアヒル唇の女子なんてキュートだろ。


……もしかしてそう思うの、私だけ?


まあいっか。


「ちょっと待て、イズミ殿。就寝なさる前に、

これからの行動について話してもらおうか?」


と、苦労して釣ってきた魚をパクリと咥えてブラッド。


「まあ、よいではないかブラッド殿。本来、旅は気楽に。

気長に楽しくがモットーではないか」


と、同じく焼き魚の骨をちまちまと取りながらジヲォン。


「そーだねー……。じゃあ、寝る前にミーティングと行こうか」


イルガスが「やれやれ。やっとか……」みたいな雰囲気を出している。

だが、未だにアヒル唇なので、たとえ怒っていたとしても恐ろしさが

半減すること間違い無し。というかむしろ、なんか癒やされる。


雰囲気的には、ぷんぷん怒ってるアヒルだから。


「――ッ。殿下」


その空気のなかに、一瞬にして緊張感が漂う。


――周囲の暗闇に、赤い眼光が灯る。

こちらを見ている、複数のギョロリとした裸眼。

唾液が滴る音をたて、血涙の匂いを臭わせながら

こちらを見ている。

それは紛れもない、狩るものの目だ。


「総員、警戒態勢! 殿下を守れ!」


瞬時にして獣の害意を読み取ったゴブリンたちは、

殺気を放って警戒の姿勢をみせる。


しかし、獲物に植えた野獣たちは

一歩も引き下がらない。


寧ろじわり、じわりと枝や木を伝い

距離を縮めてきている。


でも、だから何だって話ですよ。


「ごめんね皆。これ、私たちのご飯だから。

かなり苦労したし――横取りは、許さない」


赤い目の群衆に、そっと視線を向ける。


するとどうだろう。


獣たちは唸り声を、慟哭を、悲鳴に近い雄叫びを

あげ、一目散に私たちの周囲から去っていった。


――基本的に、レベルカンストの私が睨めば

この通り。たいていの獣たちは泣いて飛び出す。


みんなが畏怖の視線で私を見た。


いんやぁー。

これでも私、魔族の頂点だからね?

あんな低級な動物ごときにゃ負けませんよん。


――重ねて言うが、イルガスとレイのアヒル唇は存命である。

つまり、だい無し。


「じゃあ、話を戻そっか。

今後についてだけど――ひとまず当初の目的通り、

雪宮のゆくえを探しながら、『西』の国を目指す。

そして『南の賢者』及びノイリーに、雪宮についての

情報をもらいながら、同時に『北』戦力の要請を求む」


――目下、さいだいの問題は『北』の戦力の低下だ。


さきの『西』との戦いで、大きく消耗したゴブリン兵。

それに加えて、残った戦力のほとんどは統合したキズル村の

維持、防衛に当てている。マッティアが、その総指揮を努めているから

安心だが、いつまた『西』が攻め込んでくるかもわからない。


そのためには、「知識」と、「戦力」が必要だった。


ちょうど『南』は、それを2つとも持っているという。

魔族と決裂した過去もないと言うので、交渉の席には

持ち込めるだろう。


――今回の遠征は、今後の『北』の存続に大きく関わる。


遠征メンバーに選ばれた幹部たちは、

皆がそれぞれに思いを胸に刻んでいる。


――必ずや、もう一度『北』の名声を地に轟かせる。


魔族が住まう国だなんて、もう言わせない。


そのためには、圧倒的な権威が必要だ。

誰も逆らえない、逆らおうとはしないような、

誰もが認める、認められる大陸の正当な王が―……。


イズミが――私が、

その席に着けばいい。

そうすれば、そのとき初めて。

『異世界人類ニート化計画』は始動するのだから。


「明日から、じょじょにこの山を登っていこう。

予定では、一週間くらいでフレドリーにつく手はずだよ」


――だからそれまでは、せめてこんな空気でいたいものだ。


爆ぜる焚き火が、ゴブリンたちの未来を明るく照らしていた。



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