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【S15】悔恨の凡人


――ゴブリン城塞門前の戦い、敗戦からおよそ十時間後。

――1人の学徒が、顔面蒼白になりながら医務室に少女を連れ込んだ。


「……臓器に、負担がかかりすぎている」


切迫した空気のなか、

面会室に現れた医師は、

魂を手放したようにイスに座る

青年に、そう切り出した。


「もともと、体が強い子ではなかったんだろう。

小さい臓器にこれ以上ない負担がかかっている。

そうとう、無茶したんだろうね」


「……僕の、せいなんです」


青年は言った。心ここにあらずで、

声もあげずに涙を流し、するっと

滑るようにイスから崩れ落ちた。


医師の足元だけを見つめ、その足を、

透明のしずくで濡らしていく。


「僕が……。ぼくが、暴走しなければ。

ぼくが、たいちょうとして、へいせいを、

たもっていられれば……」


滑舌が回らず、親に怒られたばかりの

子供のように、誰に咎められているわけ

でもないのに、ひたすら罪を懺悔していた。


悔恨が滲んだ涙が。自戒の念を含んだ叫びが。

青年の目から、口からとめどくなく溢れている。


「お……落ち着いて。私には戦場で何があったか

わからんが……。ひとまず、君と、彼女の所属を」


所属を明らかにしない限り、身元がないも同じ。

運ばれた彼女を専門的な病院に送ることもできず、

このままではただ時間が滂沱の涙で埋まってしまう。


この時間が続くのが怖かった。

だから、青年がもういちど口を

開いたとき、医師は少し救われた気がした。


「……学徒志願兵。第七魔法師団所属、ホカリ・セイタ。

……同兵団所属―……ソフィア。姓は、ありません……」


オレンジ色の髪の少女が、本格的な病院に運ばれたのが

青年のひっしの報告からすぐのこと。それからも青年は

ひたすらに泣き続け、彼の仲間が街に到着したのは――それから

およそ、『北の魔王討伐部隊』が帰還した、二日後のことだった。



「―……どういうことだ貴様!」


「く、クライス!」


「いいんだ、エマ。僕は、負け犬だ……」


首根を掴んだクライスは、僕の顔を正面から覗き込んだ。

逃げることを許さない視線、それは怒りの色をしていた。


「……なんてザマだ、その面は」


そう吐き捨てて、顔も見たくないというように

その手を離して、僕をおもいきり床に叩きつけた。


この二日間……泣いて、泣いて、泣き続けて。


目元が真っ赤になって、目やにを大量にこさえた

僕の姿は、そんなにも、おぞましかっただろうか。


「ソフィアをこんな目に合わせておきながら、

自分はただ、泣き寝入りしていただと……?」


力なく首肯する。だって、事実なのだから。


「……いまのお前は、なんだ。ホカリ・セイタ」


「……どういう意味だよ、クライス」


「――いまのお前は、戦から帰還した戦士か?

それとも、ただ仲間の足をひっぱった愚者か?

それとも、まだ夢を見ているのか。

夢遊病患者なのか、お前は。

答えろよ、ホカリ・セイタ」


もう、その視線に怒りはなく。


純粋に、背中を預けた仲間が、

いまどんな心境にあるのか。


それを問うているようだった。


「……ははっ」


滑稽だった。


いまさら、何を聞いているのやら。


僕がこの世界に転生したときから、

役割は決まっているじゃないか。


「……―なぁんの力も持ち合わせちゃいない。不遇の勇者さ……」


なんの才能にも恵まれなかった、

ただの、凡人だ―……。



なんか……暗いなあ。今までで一番(._.)

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