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【45】二人のゴブリンが見た夢②

次はイルガスが16くらいの時の話……と思ってください。

本編での彼の年齢は19です。



ここはどこだ。



「どういうことだよ叔父さん!」


すぐ近くで、一人の青年が声を荒げている。

深い眠りの中で、その青年の声だけが鮮明に響いている感覚だ。


硬い石畳、肥えた苔がせめてもの安らぎになっているのが分かる。

僕は仰向けになって寝ているのか……、日差しが瞼を貫いていた。


どうしてこんな状況にいるのか、果ては――自分が何者かさえも、

なぜか釈然としないが。


――なんだか、とても永く、怖い夢をみていた気がする。


早く両目を開けたいのに……逃げては駄目だと。

夢から醒めてはいけないと、本能が囁いている。


どうして。

どうして僕は……ぼくは、こんな所に居るんだ。


無理解とせめぎ合う本能が、脳をかすめていくたびに

近くの論争も発展していく。


「なんで……何でロードの継承権が俺に与えられねえんだ!?

順を追えば、俺が王位につくのが正当なんじゃねえのかよ!?」


――金髪の、白い貴族のような身なりをした青年は。

――長身で、清楚な雰囲気を放つ中年の男性に声を張り上げていた。


「ゲイブ……悪いが、これは決定事項なのだ」


「だから、理由を説明しろって言ってんだよ」


「……お前には、きっと理解できないだろうがな。

これから異国の地――異世界より来たれる一人の少女が、

我々、北の領地に住まう魔族の救世主となるのだ」


内側に、血のような赤を滲ませるマントを羽織る

中年の男性は、揺れる双眸で青年を見据えながら、

しかし口調だけは力強く、決定事項を確定するかのようだった。


青年は、二の句を紡げずに唖然としている。


当然だろうと、他人事ながらそう思った。


その男性の主張は、主張になっていない。

異世界ってなんだ。救世主ってなんだ。

あまりにも蒙昧で、不完全な説得性だ。


そんな夢見がちな理由で自分の地位を

狭められるとは、なんとも哀れな男だ。


「その間、幹部の構成員も変更する。

まず、将軍の枠には武神ジヲォンを。

参謀の枠には、『時空の歌姫』レイを。

そして――二人の補佐は、イルガスに任せる」


その声はどこか、自分に対して向けられている

ような気がした。


いる……がす?


それが、僕の名前なのか。


途端に、扉を蹴破るような音がした。

騒音のあとに、一瞬だけ訪れた静寂を切り裂くような

冷たい舌打ち。青年が、ゲイブが放った物とわかった。


「……やってらんねえよ。本当意味わかんねえ事

ばっか言いやがって。叔父さんにはついてけねえ。

正当な血筋を、幹部にすら加えないでよぉ。

挙句その大役を、俺より年下の奴に任せて。

……なに考えてんだが、全くわかんねえよ」


「どこへ行く」


「禁書庫。根暗女にでも、慰めてもらうぜ」


決別、だと僕は理解した。


今、一つの繋がりにヒビが入ったのだと。

今、大切ななにかが瓦解したのだと。


そして……今、自分ことイルガスが、

世界の歴史で、とても重要な瞬間に

立ち会っているのだということを。


瞬間的に、電撃的に頭が働いた。


自分が誰であるのか。


自分がなぜ、そこにいる男性に選ばれたのか。


「――目が覚めたかい。イルガス」


「……目なら、とっくに覚めていましたよ――先代」


目を開いたその先に、僕達ゴブリンの王がいた。




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