【44】二人のゴブリンが見た夢①
☆ゴブリンロードであるイズミは高校3年生ですが、
今回の話に出てくるイズミは高校1年生です。
「いずみん。いっしょにお昼たーべよ」
……え。
「どったの?いずみん」
――目が覚めても、私は自分がどこにいるか分からなかった。
体を通じて伝わるのは、まず腕のしびれ。
硬いイスと、硬い机につっぷした影響だ。
少し聴覚に意識を向ければ、数え切れないほどのしゃべり声。
目の前には文字がボヤケた――これは私が寝起きのせいだが――
端から端まで、呪文のように記された年号や出来事が綴ってある。
緑なのに黒板と名の付く板に、真っ昼間なのに証明をつける
省エネとはかけ離れた広い部屋。耳を塞ぎたくなる喧騒……。
ああ、分かった……ここは学校だ。
「……そうだね。何にしよっか」
「ラーメンとかどう? 食堂で」
「おっけー」
私は腕のしびれに無理を言って、
指を動かしカバンから財布をとった。
◇
「うちの食堂ってこういう変わり種が美味しいよね〜」
友だちのノイリー(本名、野井麗々子)は、
手元のレンゲをすいすいと動かしてスープを掬う。
「北海道の? ラーメンなんだっけ。やっぱり
味濃いのは正義だよ。カロリー気にして薄い
味の食べ物しか口にしないのは人生の損だね」
そう言うだけあって、ノイリーはすごく細い。
短くまとめられた茶髪に、少しチャラめの
髪飾りが彼女のチャーミングポイントだ。
「……だめだー。寝起きで味がわからん」
「もー。寝ぼけてるのかーい?いずみーん」
ゆっさゆっさと私の肩を揺さぶるノイリー。
ちょ、やめて、おかず出てくる。
「相変わらずだねノイリー……」
彼女は昔っからこうだ。中学からのよしみだが、
唯我独尊系のぼっちだった私に話しかけてきた、
まあ、クラスに一人くらいは居る『イイ奴』だ。
「ゆるふわ」をテーマにキャラメイクをした彼女は
男子受けも女子ウケもよく、
程よく性の間を渡り歩くのに長けている。
なのに浮いた話の一つもないのだから、
そこらの男子がほっとく理由もない。
なんで彼女が私みたいなボッチと普通に
話しているのかが不思議なくらいだ。
それも親友みたい距離感で、
ボディータッチまでして。
……中高生にとって、三年間っていうのは人生の半分だ。
――いつまで経っても変わらない。
変わらないままで、いてくれる。
それが彼女の良さだと私は思う。
「なーにいずみん。久しぶりに会ったみたいなその言い方〜」
「え、そんな感じだった?」
「うん。昨日も会ったじゃーん」
……本格的に、寝ぼけているのだろうか。
次の授業が始まるまでに回復しておかないと、
何かしら盛大な恥を掻きそうで怖いなあ……。
「ほら、食べて眠気なんてふっ飛ばしちゃえ。メンマいる?」
「それ、嫌いなもの渡したいだけでしょ?」
バレたか〜と微笑みながらチャーシューを
ほうばるノイリー。かわいい……。
彼女は食べるペースが早い。
大盛りのノイリーと普通盛りの私が同じペース。
追いつかなくてはいけないとは思っているのに、
どうしてか――頭に何かがよぎっては消えていく。
「なんか……」
そしてそれは、思わず口をついて出ていた。
「忘れてる気がするんだよねー……」
「ほへ?」
聞こえていなかったのか、ノイリーは
口の中を薄い肉でいっぱいにしながら
キョトンとうさぎのような目を向ける。
「ううん、ごめん。なんでもない……」
私はごまかすように、自分の伸びかけたラーメンをすすった。
こんな感じで新章初めていきます。とりあえず目下の目標は、
総アクセス数10000超えと、総合ポイント三桁ですかね^_^




