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【X2】禁書庫の管理人②

あ、思い出しました。

あれです、この間、『ゴブリンの武器は混紡だけ』みたいな

表記がありましたが、剣士であるイルガスとジヲォンは別です。


今回は禁書庫の管理人①の続きです。

語り部はロウム視点


「うす塩ない?」


「ありませんよ。我慢してください」


口元にのり塩をべったりと付けた中年の男性―……

ユキミヤ・リョウヘイは、残念そうに視線を落としました。



はあ……本当にこんな男が、『西の勇者』でいいのだろうか。



この男は数年前、普段は絶対立入禁止区域の禁書庫にふらりとやってきて、

どこからか酒を持ち出しては飲んでは寝てを繰り返す居候です。


聞くに、家がないのだとか。


何を言っているのだろうと、最初は思った。


――歴史書を漁るに、この男はお母様が

この書庫の管理人をしていた世代に『西の勇者』として

名を轟かせ、剣の流派として名が付くほどの有名人になった男だ。


そんな男が、どうして地位も名声も利用せず

宿なしの生活を送っているのだろう。


私じゃなくても、そう考えるのが当然のはずです。


そして今でも、彼ははっきりと理由を口にしてはくれません。

毎回、ふわりとはぐららかされてしまうのです。


馴れ馴れしく「ロウムちゃん」と呼ぶし、

まるで我が家のように振る舞う居候。


何度も追い出そうとはしました。

でも、そうできない理由もあるのです。


「――今日は、どの本を読むんだい?」


こうして、私が開く本と同じ本を読んで、

話相手になってくれるのです。


ずっと一人で機密事項を管理している私にとって、

こうして気軽にお話をすることができる人間は

限られています。


それこそ礼儀はありませんが、ゲイブであったり、

歴史の重鎮でもある『東西南北』の支配者であったり。


最近は新しく就任した『北の魔王』のイズミさんとも、

たまーに思念通話で話しています。

レイさん、本当に有能な部下です。


「おっ、それを読むのかい?

それはね、俺が書いたんだぜ」


この男は、転生する前は絵描きをしていたらしいです。

だから、この世界でも勇者になる前の生業として絵を

書き、それで生活を食い繋いでいたとか、何とか……。


売れては、いなかったらしいですが。


まあ、だから大陸の様々な本が集められるこの書庫には、

少なからず彼が書いた――絵本も、混じっているのです。


「……いいえ、読みません。これは既に過去に一度読みました」


「おっ、嬉しいねえ――どうだった?」


その瞳はただ純粋に、感想だけを求めていた。


「率直に言っても?」


「ああ。もちろん」


「そうですか。では――…」


私は、あまり言葉を選ばずに。


「正直、つまらないです」


「おーおー。冷たいねえ」


そう言ってわざとらしく肩を竦める割には、

彼はまったく落ち込んだように見えない。


「ちなみに、どの辺がつまらなかた?」


「……」


今度は、多少言葉を選んで口を開く。


「――平凡な家に生まれた少年が、

さまざまな人生の過程の中で成長し、

やがて農夫として大成する物語……。

それが、この絵本のコンセプトですが」


「うん」


「絵本としての的は得ています。

幼児にもわかりやすい世界背景に、

見やすく、柔らかいタッチの絵と、文字。

技術は素晴らしいです、が……決定的に足りないんです」


「なにが」


「――想像力が、です」


私は少し、突き放すような言い方になっていたかもしれません。

でも、ユキミヤさんは静かに首肯しているから、まだ私のダメ出しを

聞く意思があるようだ。なら、言いたいことは遠慮せずに言ってやる。


「主人公が大人になる過程で、この少年が一度でも心を躍らせるような

体験をしたでしょうか? ただ、大人の言われるがままに知識を広げて、

力をつけて、農夫として一生、妻とともに幸せに暮す……。

――私が主人公なら、そんな変化のない人生はまっぴらです」


――その言葉はあるいは、今の自分へ向けた

自戒の言葉だったのかもれない。


そうでなくては、私がここまで熱く

なってしまう理由が、ありません。


「……やっぱり、そうか」


ユキミヤさんは、今度こどガッカリしたように

脱力しました。


「そう思うのが、当然だよな……」


つぶやく彼の双眸には、なぜか哀愁が

漂って、可哀想な雰囲気を出していた。


「でっ、でも。本当に技術は素晴らしいのです。

読み聞かせ次第では、子供たちの心を動かすことも……」


「いいんだ、ロウムちゃん。それよりも――ゲートを開けてくれ。

ちょっくら、今スクリーンに映ってる奴らにちょっかい出してくる」


そこに、もう哀愁のただよう中年の背中はなかった。

確かな『意思』を持って戦場へ赴く、一人の戦士だ。


「何を、するつもりですか?」


「んー? 暇だから……ってこともあるけど」


ユキミヤさんは、ボリボリと頭を掻いて。


「――ちょっと、同じ転生者に挨拶しときたいと思ってよ。

たぶん、俺とイズミちゃんは、分かり合えないけど―……」


そのギラついた双眸が、彼の意思を物語る。


「ま、語ってみないと分かんないだろうよ」




前々から名前を出していて、やっと重たい腰をあげたリョウヘイさん。

そろそろ章が変わりますよ……!(゜∀゜)!

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