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【38】激突⑤

けっこう前の設定を掘り返しています。

あと、長いです。


絶対意思プライド―――!」


Name ゲイブ・ザッハーク。


Level68 SKILL絶対意思プライド


ability 全魔力開放による飛躍的ステータスの向上


「………なるほど。こいつは強敵だ」


クライスは冒険者の基本スキルを活用し、

火蓋が切られる前から情報を探っていた。


「ユキミヤ。お前の――ライフヘルパーの援護が必要だ。手を貸せ」


ライフヘルパーとは、回復魔法特化である魔法系統適正職である。

魔力基本値が高いハーフエルフのユキミヤ・エマの適正職にして、

――迫害されるハーフエルフである彼女を鼓舞する、唯一の特技。

……しかし、エマは小さく「いやいや」と首を横に振った。


「戻ろうよクライス。私たちが、敵う相手じゃない……!」


その瞳には、大きく刻み込まれた恐怖が浮き彫りになっていた。


彼女は知っている。

ゴブリンの強さを。

ゴブリンの怖さを。


全ては前髪で隠している、この菊一文字の紫色の傷跡に。


――かつて、先代のゴブリンロードに襲われた時の記憶。


火中に放り込まれた村を、行く宛もなく彷徨い続け。

頭の傷を痛みながら、炎一色に染まっていく家々を

ひたすら助けを求めて歩き続け、痛みに抗い続け、

ただ助けを求め歩み続けた――あの地獄の時間を。


「いつまでも弱気になるなユキミヤ。俺ならできる」


クライスの呼びかけも、

恐怖に支配されたエマの心には届かない。


ついさっき、一番信頼をおいていた人が、

『ああなって』しまったばかりだからか。


穂刈誠太の件が尾を引き――彼女の恐怖は頂点に達していた。


「安心しろ。いざとなったら、俺一人でも立ち向かうから」


「でも、でも……! クライスは私と同じ、魔法科の生徒だよ?

セイタやソフィアみたいに、物理的な攻撃はできないじゃない!」


さっきの『光の斬撃』だって、

光の魔法を活用したものだ。


クライスが掲げていた剣は魔法を引き出すための、

いわば触媒で、言ってしまえばただの玩具なのだ。


――武器の扱いに熟知した魔族に、敵いっこない。

これが、エマが彼に本当に伝えたいことだった。


「……」


そこでクライスはため息を一つ。


彼は知っていた。

その昔、彼女が、ゴブリンにどんな目を見させられ、

どれだけの傷をその心に負い、また背負ってきたか。


知っていながら戦うことを強要する自分を、

少し自戒するような思いで俯瞰していた。


だが、それでも俺は強要する。

彼女に戦うことを、目の前の

敵から目をそむけないことを。


なぜなら、お前は――……。


「……なあ、ユキミヤ」


このままでは埒が明かない。

間をおいたクライスは、ふとこんな事を言いだした。


「――正直、俺のことをどう思っている?」


「……へ?」


こんな時に、この男は何を言っているんだ。


今この瞬間にも、敵は膨大な魔力を自分の体に練り込んで、

襲いかからんと着々と戦闘の準備を進めているというのに。


一体、どんな意味がその言葉に込められているというのだ。


「代弁してやろう。常に上から目線の、自分勝手な男だ」


否定する気にはなれなかった。

事実、エマも彼の言動にはよく不快にさせられるし、

その嘲笑する態度にムカッときたことだって勿論ある。


……でも、ぜんぶが全部そうという訳ではない。


彼の言動にはいつだって一つの芯が通っていて、

決して理不尽な物言いはしない人だった。


だから、心のすみではいつも一定の信頼はおける人だと、

そう思って付き合ってきた。今もその思いは変わらない。


「それくらい自覚しているさ。……それに、何より、

俺が言うことはいつだって事実。俺はあいつらより、

ソフィアより、ホカリ・セイタより俺の方が格上だ。

魔法は勿論のこと……剣だって、剣術科に負けない」


すっと、美しい剣の構えを見せてから、クライスは言った。


「――どこか一つでも劣っていたら、俺はあんな風に振る舞えない。

俺は、俺の尊敬する俺でいられない。だから特訓したよ。

―……柄にもなく、体に証拠ができてしまうほどにな!」


はっとしたエマが彼の腕を見ると、

なんと腕中痣だらけのマメまみれ。


ただ魔法の訓練をしているだけでは、

決してつくような傷ではなかった。


「でっ、でも……それでも……!」


「それでも、なんだ?」


クライスが先を促す。


「クライスに……ッ。死んでほしく、ないっ……」


「ッ――………ふん」


小さく鼻を鳴らすと、クライスは馬を降りた。

エマの呼び止める声は、あえて聞かなかった。

決心が鈍ってしまうから。

でも、これだけは。


「なあ、ユキミヤ」


そして後ろを振り返って、言った。


「――好きな奴の手前くらい、カッコつけさせてくれよ」





「――待たせたな、蛮族の長。いや、ゲイブとやら」


クライスの目前には、すべての魔力を練り終わり、

尋常ではないオーラを靡かせながら佇む男の姿が。


「ヘヘッ、気にすんな。お前みたいな男は大好物だぜ」


「お褒めに預かり光栄だ。では、さっそく始めようか」


「ああ。だが、その前に一つ――」


その刹那、ゲイブの姿がまるで陽炎のように消える。

殺気を頼りに索敵すると、目標は真後ろ――つまり、

ユキミヤ・エマがいる位置に移動していた。


「俺はこう見えても、慎重な男だからよ!」


ゲイブの判断は、正しかったと言えるだろう。

強敵だと理解したクライスは後回しに、

面倒くさそうな後方支援を先に叩く。


仮に戦意が喪失していても、だ。


誰でもそうする。

ゲイブが特別慎重なんじゃない。

彼が正しい選択をしたまでの話。


だが、しかし。相手を間違えた。


相手はクライス二等兵――学徒の中でも、主席の

座を争う――紛れもない魔法の天才なのである!


「――うおッ!」


反応できない速度で後ろ向きに投げられた、

一つの輝石。無論クライスが放ったものだ。


――それが一瞬にしてゲイブの視界を大量の

光で奪い、あまつさえ、行動すらも制限した。


閃光魔法石フラッシュエレメントだ。中には俺の魔力がたっぷり詰まってある。

それを食らうと視界が制限され、一時的に筋肉繊維すら麻痺スタンさせる。

どうだ、優れ物だろう?」


飄々とした態度で説明するクライスの表情には、

いつもの不遜な笑みが浮かんでいた。


引きつった表情のまま固定されたゲイブに、

そして、呆然とするエマに――クライスは。


「はあ……まったく、何度も言っているだろう?

お前が思っているよりも、恥ずかしいんだぞ……」


シャキン! と光を纏った剣をわざとらしく掲げて。


「――ユキミヤは、必ず俺が守ってやると」




今日の十二時に一体何があったのでしょうか……私、何もしていないのですが。

とりあえず、最近読者が増えてくれて嬉しいです^_^

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