【X1】禁書庫の管理人①
――ロウム・クロノウェル。
大陸全土の歴史が記録され、暗黙のうちに秘められた歴史の改ざん文章さえ保存する禁書庫。
親の代から受け継がれた闇の職業。しかしその少女は、立派にその職務をまっとうしていた。
今日も今日とて、暗い書庫のなかで、その少女は本をめくる。
「北の魔王の再来……そして、西の勇者の復活……」
そこは本棚が立ち並び、窓枠から差し込む光さえも制限されている空間。
魔法陣のような丸い絨毯、そこにクッションをしいてロウムは座っている。
あぐらの上にやぼったいほど分厚い本を置いて、めくる。めくる。
とにかくめくる。
――日本語で書かれた、その書物を。
もちろん読めないが、内容なんてどうだっていい。
だって、すぐにその映像がそこのスクリーンに流れるから。
「2つの戦力がぶつかり、世界はまた戦乱の空気に包まれる。
そうなれば、あなたの望みは叶う。そう、思ってるんですね」
中央に下げられたモニターには、豹変した穂刈誠太の戦いが映されていた。
横目でそれを見ていたロウムは、ため息まじりにその名前を呼んだ。
「――ユキミヤ・リョウヘイさん」
呼ばれた男はそれに答えず、手に持っていたスナック菓子の袋に手をつっこむ。
がさがさと漁り、複数のチップスを束にして口に運ぶ。
その口元は、すぐにのり潮に覆われた。
「どうよ、ロウムちゃん。面白いだろ?」
「あなたの書いた、これが……ですか」
辞書なみのその本を床に置くと、きらきらとホコリが舞った。
せきばらいをして、目を向ける。
「これで絵本というから驚きです」
「ああ、前の世界じゃあ絵描きだったんだ。知ってるだろうけど」
「ええ。だから私が聞きたいのは――そんなことじゃありません」
メガネをすっと上げて、そのふざけた男の両目を覗き込んだ。
「元『西の勇者』が、どうして禁書庫でニート生活をしているのか……。
お教え願えますかね」
ぼさぼさの髪の男は最後のチップスを口に放り込んで、あっけらかんと答えた。
「うすしおない?」
僕は最近コンソメ押しです




