【S13】西の勇者
そこからのことはよく憶えていない。
僕が彼女に何をしてしまったのか、どうなってしまったのか、その顛末を知らない。
目が覚めた時、彼女はもうどこにもいなかったからだ。保険の先生が僕を起こしてくれて、女の子がいなかったかと訪ねても、「知らない」と答えるだけだった。
それから彼女は何日も学校に来なかった。
というか、もう二度と学校に来なかった。
教師に聞いても、「転校した」という情報以外は聞き出せず。
如月は自分の存在をそのまま学校から消滅させてしまったのだ。
まるで陽炎のように、僕が見ていた甘い白昼夢のように。
所詮は童貞の夢物語だと割り切ってしまえなかった僕は、
そこから彼女を調べた。
フェイスブックとかインスタとかはやっていなかったから、
唯一彼女の手がかりとなる家に行ったが、そこはもう空き家だった。
ならばとダメ元で電話をかけてみたが、結果はお察しである。
逢いたくても逢えないのが、こんなに悲しいことなんて知らなかった。
昔の人はそれを和歌にして伝えたが、仮に僕が書いたとして読まれるのが何百年五になるか、そもそも記録として残されない可能性の方が高い。
なら、今ぼくができることは何だろう。
何が僕のこのやるせない気持ちを消化してくれるだろう。
……そうだ。
「ゲームをしよう」
二次元に逃げた……のではない。
彼女を理解しようと思ったのだ。
『――残された時間で、あたしを理解して』
うまく思い出せないけど、それが如月の望みなら。
僕は君に寄り添おう。君を理解するために努力しよう。
陽炎のように美しかった、僕の恋人のために。
そしてまるで呪われたように、人が変わったように僕はゲームに没頭した。
成績はちゃんと維持してたし、親から文句は何も言われなかった。
彼女がしていたゲームの、至るものの全てやりつくした。
でも、やがて僕は気づき始める。
自分だけの世界観が欲しいと。
この広く、素晴らしいゲームの中で、僕は自分だけの価値観を見出したい。
空想に浸っていたい、妄想に支配されていたい。夢を、見続けていたい。
そんな思いが、日に日に僕を蝕むようになっていた。
しかし、それを破ろうとすれば、如月の呪いが僕を束縛する。
だから僕は、自然と頭の中から如月を追い出すようになっていた。
別れた時のような寂しさは感じない。
だって今の僕には、大好きになったゲームがあったから。
高校生活全てを注ぎ込んでゲーオタとなった僕に残っていたのは、
空想を止めないことに固執した、
夢を見ることに執着した、
ただの抜け殻のような僕だった。
理想が高すぎて、本当の僕を見つけ出すことができない。
だからゲーム内でもコミュ障が発症し、うまく自分自身を表現できない。
そんな負の連鎖。
断ち切ってくれたのは、異世界に転生されてからだった。
そして新しい生きがいができた。
エマという名の、新しい少女を見つけた。
彼女を守りたい、救ってあげたい。
あの時――如月と離してしまった温もりを、もう手放したくない。
そんな下心を、ずっと心の中で抱えて押し殺していた。
如月の面影と一緒に、ずっと言えずにいた。
僕はエマに、
ユキミヤ・エマに歪な恋をしていた。
このままではいけない。
うまく言葉にできないが、人間として間違っていると思うから。
――彼女に逢わなくちゃ。
『いつまでも、待っているから』
彼女に、如月に合って全てを終わらせなくては!
――ドクン。
急に脈が上がって、太鼓の鼓動のように広がりだした。
ドクン、ドクンと何度も脈の中で爆発して僕の頭に血を登らせる。
力が溢れてくる……無念を晴らせと体が叫んでいた。
「ああ、僕は――」
不遇の勇者、穂刈誠太はもういない。
僕は今日から西の勇者――ホカリ・セイタだ。
主人公になるため、陽炎の彼女を救い出すために。
『あたしを、救い出して』
僕は死ぬまで、この剣を振るおう。
正直言って、自分でも何を書いているのかわかりません。
ただただ言葉が浮かぶままに書き連ねて……それが楽しいと思ってしまいます。
何を行ってるのか分からないと思う方もいるでしょうが、
安心してください、作者もうっすらとしか理解していませんから^^;
まあ話を要約すると、「穂刈にとって如月がめっちゃキーパーソン」ってことです。




