【30】キズル村の成長
――北方領土山村、キズル村中央広場。
「……あれえ?」
久しぶりに帰ってきたら、なんだかキズル村の雰囲気が様変わりしていた。
前まで寒々しく敷地も少なかった村々には、色とりどりの花が植えられ。
簡易テントのようなお粗末だった家々は、立派な木目をした木材で立て直されている。
水道が通ったのか、村の広場には噴水がある。
その水を飲まんと欲する家畜の、まあなんと多いことか。
牛に豚に鶏に……あと、何だあれ。
ちっちゃい龍みたいなのもいる。
カ・ワ・イ・イ♡
……ごほん。
とにかく老若男女が活気に溢れ、汗まみれの野郎共は土木工事に勤しんでいる。
村の資金が増えて、もろもろの復興作業が始まっているのだろう。
その資金源はもともと、私が《想像の天才》で具現化させた、この村の『負の本流』だった。
それは村人の怒りや不満、それを魔獣として出現させた人工的な脅威。
かつて、キズル村の人々は、見事それに打ち勝ったのである。
家畜が増え、食料が持続し、住居の補強もバッチリ。
人々の中に交じる『人形ゴブリン』での証である腕章を巻いた人。
『腕章無し』も、『腕章持ち』も、皆で協力しあって生きている。
それは――ゴブリンと人間が共存して生きている、確かな証拠だ。
「……驚いた」
「イズミの姉貴……あんた、やっぱ女神だったのか?」
里から遠征してきたマッティアとゲイブも、目前に広がる景色に呆然としている。
「――っても、これで認めたわけじゃねえ。
逆にこの程度で認められる……とも思ってないだろ、姉貴」
馬に乗って、村の広場に向かうゲイブ一行に睨まれる。
私は動揺する素振りを見せないよう努めて返した。
「もちろん。あなた達に受け入れてもらえる条件は、
侵略してくる『西』の勢力を無力化すること……でしょ?」
「そうだ。王たる者、武力を持って覇道を示さなくちゃいけねえ」
今まで私は、諸国の勢力と睨み合った試しすらなかった。
しかし、現在進行系で脅威が近づいている今。
加えて、使える臣下が増えた今こそ、それを最大限に活かす。
一ヶ月近い遠征を無駄にするな。
私はタドコロ・イズミ。二代目ゴブリンロードにして、『北の魔王』
王としての責務は、ちゃんと全うするさ。
「おーい、イズミ殿! 久しいな!」
何も知らず、再開に手を振る臣下ブラッドフォード。
彼は頼れる。この村一番の剣士なのだから。
現状を伝えて、作戦会議を初めなくては――さあ、ゲームメイクのお時間だ。
「久しぶりブラッド! 悪いけど、すぐに幹部を――ジヲォンとレイを呼んで!」




