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【S10】装備確認


――鋼鉄城塞都市トータウス、商店街にて。


「……よし」


露店で勝った装備をそのまま装着し、学徒編成部隊に指定された集合地点へと向かう。


「エマ、ちゃんと買い物終わったかな……」


女の子は着替えや買い物が異様に長いって話をよく聞く。

僕もそれに合わせてけっこう長めに装備を選んだりしてたけど、

どうか杞憂に終わってくれ。


「(しかし、街の雰囲気も変わるもんだな)」


眠らない街と称されるだけあって、その活気さと光の重厚さは東京にも劣らない。

しかも、これで電飾を全く使っていないというから驚きだ。


白銀の鉄で覆われた家々や路地、月明かりを鮮明に反射している。

朝でも昼でも街灯要らずだな、これは。


「おい、あれ見ろよ」


集合地へ向かうとちゅうで、路地裏からこそこそとした話し声が聞こえた。


「これから北に戦争しかけようって奴らだぜ」

「わかってるのかな……相手は魔王なんだぞ?」

「西の勇者が不在の今……どうして行き急ぐ必要があるんだか」


不満の声がひそひそと紡がれるなか、僕の対応はというと。


「(ああいう輩は無視に限る)」


だって、僕たち自身がなんでこんなことをしているのか分からないんだ。


どうして高校生が戦争に駆り出されなきゃいけないんだ。


エマやソフィアを、危険に晒してまで……。

全部、『北の魔王』のせいだ。

絶対に許さない。


「――セイタ」


たくさんの兵士が紛れるなかで、僕はエマの面影を見つけた。


体にフィットした薄く動きやすい鎧に、魔法使いらしい木の杖。

杖の先には紅い宝石がついていて、そこから魔法を放つのだという。

薄い鎧で覆われている上半身は軽装重視で、

彼女のバランスのいい体のラインがはっきりと浮き出ている。

下半身、脚は色の揃えられたスカートから伸びる黒いタイツが、

僕の秘められた男心の視線を否応なく引っ張り出してくる……。

ひとことで言えば恐ろしくセクシーなのである。


「セイタ? ……どうして、ジロジロ見るの?」


「えっ? あ、ごめん、気持ち悪かったよね。ごめんね通報しないでお願いします!」


「通報なんてしないわ……。そんなギルド役員みたいなことを」


そりゃ、日本の社会でセクハラとかやったらもはや死活問題だからね。

気になるあの子のスカートめくって許されるのは小学生までだよ。


「あっ。エマ、セイタさん」


少し遅れて、ソフィアも到着した。


彼女もだいたい同じような装備だったが、持っているのが杖じゃなくて剣だった。

学徒編成部隊は機動性を考慮して動きやすい軽装にしろ、というのが上からのお達しだ。


実践不足な学徒は、いつでも退避できるようにしておけ、ということである。


「やれやれ……上も面倒なことを押し付けてくれたな」


「クライシス君」


「クライスだ、何度言ったら分かるんだ貴様は。

我々の任務は、威力偵察……だそうだ。実践には参加不可と申し伝えられた」


「朗報じゃないか」


最前線に出なくていい。


それは僕らにとって、これ以上ない朗報だ。


相手を威嚇して、そのまま帰還する。

それだけなら、短期間でも訓練を受けた生徒ならこなすことができるだろう。


しかし、クライスの意見は違うようだった。


「ちっ。最前線で活躍すれば、後々立場が優位になると思ったんだがな」


「……君はそういう奴だったね」


「ああ、こういう人間だ。安心しろ、ユキミヤはどんな窮地にいようと救い出す。

ホカリ、お前のようなデマカセの剣士より、俺の方が多くの人間を救える――…。

それを証明してやるよ」


クライスは僕たちに背を向けて、兵の雑踏のなかへと消えて行った。


「もうっ……本当にいや〜な人ですね、クライスくんは!」

「ああいう人間は相手にしない……それが得策よソフィア」

「エマは、それでいいの?」

「何が?」

「クライスくんに、なんだか凄く目をつけられてるけど、本当は……」


何かを言いかけたソフィアの視線が、なぜか僕に向けられる。


しかし彼女はすぐに頭をふって、「何でもないです」と破顔した。


「えっと……じゃあ、状況を整理しようか」


夜が明けたら、すぐに出発する。

その前に、最低限の作戦は立てておかないと。


「まず僕たちは前線に出る必要はない。

後衛で威力偵察部隊の援護、カバーを優先する」


「……ということは、私の力が役に立つわね。やっと」


エマは満足げに小さい手をぎゅっと握りながら言った。

彼女は魔力適正量やら活動限界は、ハーフエルフの基準に比べると脆いが、

エマの『ライフヘルパー』という適正職は援護にうってつけだ。

何しろ、体力の回復しかできないのだから。


でも裏を返せば、今回はそれが大きな戦力になる。


前線に出ない者に大きな力は要らない。


逆に小さい力でも、うまく立ち回れば大きな戦力になる。


『回復特化』の彼女の能力は、今回の作戦で大きな要になるだろう。


「じゃあ私は、前衛でエマの防御を担当しますね。

魔法を使っているときの術者は隙きが大きいので、そこをカバーしますっ」


「うん。そうしてくれれば助かるよ」


「セイタさんは、どうするんですか?」

「どうするの、セイタ」


現役JKから見上げられる社会人の図……いいのかこれは?

って、それは考えすぎか。


「そうだね……じゃあ」


僕は雑踏に消えた、気ままな彼の足跡を見つめて。


「勝手な後輩クライスの尻拭い……かな」




これからは穂刈くんと泉魅の話を一話ずつ交互にやって行きます。

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