【幕間】田所泉魅 小学二年生の思い出
自信作です。
でも短いです……(T_T)
「――名前の由来?」
「うん。学校の、しゅくだいで出された」
田所泉魅、小学二年生。
その日の宿題は、『自分の名前の由来を両親に聞く』というものだった。
泉魅はそれを、父に聞くことにした。
彼女のお父さんは作家だった。
特に売れている訳でもなく、失業するほど売れない訳でもない、
どこにでもいる凡才の作家。絵に書いたような凡人の父だった。
そんな父が、長女が生まれたその日の夜。
母と議論し、作家の知識と語彙力を結集し形にした名前。
それが彼女のファーストネーム――泉魅であった。
「ははっ、そうかあ、宿題かあ。
そういや僕も、そんな記憶あるなあ……あれはいつだっけか……」
「ぱぱは、むかしの話すると長くなるから、やめて?」
「あはは、ごめんごめん。……それ誰から聞いたの?」
「まま」
視線をソファーに移すと、腹を丸出しにして横たわる泉魅の母がいる。
爆睡である。テレビは付けっぱなし、スナックの袋は開けられっぱなし。
なんとも幸せそうな寝顔だ、年長組の弟もその横でうつらうつらと船を漕いでいる。
「ママかあ……。ははっ、幸せそうに寝てるなあ。
そういえばママと初めてあったのも、彼女が教室で居眠りしてる時でね……」
「パパ〜……そういう所よ〜……」
なんとピンポイントな寝言だろうか、もはや天才である。
「由来ねえ、うん。分かった、話してあげよう。
――そこに座りなさい、泉魅」
彼女の父は、自分から娘に語りかける時。
柔らかい口調は変えずに、目元をすっと細める。
そして口元を、同じように上向きに持ち上げるのだ。
娘との会話を、心底慈しむように。
「どこから話そうかな」
そこから、泉魅の父は語りだした。
そして長々と語ったそれが全て前座だと知ったとき、
泉魅も夢の国へ向かって船を漕ぎ始めていた。
「……とまあ、要するに」
娘の眠気を感じ取った父は、すかさず結論を導き出す。
「人には、目に見えない力があるんだ。
それは性格であったり、才能だったり、人それぞれだけど。
――お前には、その『魅力』がある。
人を魅了する力、と書いて、魅力だ」
「……それが、目に見えない、ちから?」
「そうだよ、泉魅。
お前には人を引きつける『魅力』がある。
だから何も恥じることはない、胸を張って歩け。
――どれだけ辛くても、例え茨のあぜ道だって。
必ずお前の歩く道に、ついてきてくれる人たちが居るから」
父は泉魅の頭に手をのせて、優しく撫でてやった。
それがさらなる眠気を誘い、泉魅の意識は沈んでいった。
心地の良いまどろみの中で、父の声だけが、たしかに反響していたのを覚えている。
「人を引きつける魅力が、泉のように溢れますように――それがお前の名前の由来だ」
◇
それから10年後。
引きこもりとなった泉魅は、異世界に転生されることになる。
ジヲォン、レイ、イルガス、ブラッドフォード――信頼できる仲間たちに囲まれ。
彼女は、ゴブリンロードという王道を歩いて行く。
かつて果たせなかった『責任』を全うするため。
一つの城に住まう者たちと、貧しい一つの山村を守るため。
彼女は見つけ出さなくてはならない、己だけの王道を――
私の名前は田所泉魅。
元引きニート、現『北の魔王』兼ゴブリンロード。
ここから始まる、異世界人類ニート化計画。
私は諦めない。
私を待ってくれる臣下が、信頼してくれる臣下がいる限り。
私の名前はタドコロ・イズミ。
この世界で唯一の、Levelカンストゴブリン。
私の英雄譚は、まだ始まったばかりである。
今後とも、よろしくお願いします(*´ω`*)




