【20】トータウス
世像協会は、トータウスの中央にあった。
門は茨の模様を描いていて、入る者を威圧感から制限している。
「殿下、これを」
イルガスに手渡されたのは、キズル村に忍び込んだ時と同じ仮面だった。
「なんか……私、行くところはぜーんぶ素顔隠してる気がする」
「当然。殿下はこれから、文字通り、歴史の重鎮となるお方です。
これからも行く先々で、素顔を隠して渡るのです。
『北の魔王』になるとは、そういう事。覚悟はおありですか?」
「……うん! あるよ」
「そのお言葉を待っていました。では、行きましょう――」
ザッ、と効果音がなりそうなくらいの力強さで、私は地面を踏みしめた。
◇
この世像協会は、表向けにはギルドとして活動しているらしい。
それも凄腕の冒険者や貴族専用の、なんともゴージャスな雰囲気がただよう内装だ。
ギルド内をうろつく人たちも、街の外装に負けない、きらびやかな装備をまとっている。
「……私、この中に混じるの?」
「はい。受付を済ませるので、ここでお待ち下さ――」
「うわっ、ちょ、見てあの水晶! すごくない!? 見に行ってくるー!」
「言ったそばからですか殿下ァーッ!」
だってあんなの見て興奮しないラノベ好きがいると思う?
あれは、絶対あれだよ。
自分に魔力適正があるかどうか確かめる的な道具だよ。
えーどうしよう。
私があれに触れたら、七色にでも光りだすんじゃないだろうか。
きっとそうに違いない。
よーし、イルガスには悪いけど触っちゃえ――
「くそっ、あの女。いつまでも俺を子供扱いしやがって……!」
バン! と凄い勢いで、水晶がある正面の扉が蹴り上げられた。
すると、私は、当然?
「ふぐっ!」
ぶつかりますよね、そりゃあ。
いくらLevelカンストでも物理法則には抗えないもん。
あと、仮面が取れてしまった。
「痛っ!」
「おっと、こりゃすまねえ! 大丈夫かおねえさ……ん……」
扉を蹴り飛ばした男の人は、私も蹴ったと見るやすぐに手を差し伸べてきた。
しかし、すぐに彫刻のように固まってしまう。
「……女神!」
「……は?」
そう叫ぶやいなや、強引に私を前に立たせた。
「ちょ、何する――」
「あんた、ちょ―――可愛いな!」
「……へえ?」
今世紀最大のショックを、私は受けた。
「か、可愛いって……え、私が?」
「逆にあんた以外に誰がいるんだ、こんな女神みたいなサイッコーに可愛い女がよ!」
か、可愛い……女神……え、えへへ〜。
こんなこと言われたのギャルゲ以来♡
「殿下!」
「ひっ、悪魔!」
「鬼だの悪魔だの、なんなんですか貴方は! 勝手に出歩いて!
もう今後の観光の際は、必ず! かぁなぁらぁず、僕が同伴しますからね!」
「ひぃー! ご勘弁くだせえ旦那様ー!」
無駄遣いできなくなっちゃうー!
「誰が旦那ですか、誰が! 僕はまだ未婚者です!」
ベタなツッコミだなあオイ!
やっべなんかテンション高くなってきちゃった!
「……ん!? ちょ、ちょっと待て!」
茶番を繰り広げていると、置いていかれた男の人が声をあげた。
「お前、イルガスか!」
「………ゲイブか!? お前こそ、こんな所で何をしてるんだ」
どうやら知り合いだったらしい。その旨を問うてみると……。
「失礼しました、ご紹介致します。
こやつが、先日お話をした先代の近侍――ゲイブです」
なんと、お話に出てきた幹部の方だった。
「ってえと、あれか! あんたが噂の、新しい王様か!」
「そうよ! 私こそが二代目ゴブリンロード、タドコロ・イズミちゃんなのだ!」
「うっひょ〜! あんたみたいな可愛い子が王様なら、例え火のなか水のなかだ!
どこまでもお供するぜ、イズミの姉貴!」
くぅうううッ―――!
「おいゲイブ。これ以上皇女殿下を甘やかしてくれるな」
「はあ!? 冷てえこと言うなよ、同期のよしみだろ!」
気づけば、なんだか二人は言い争いを初めていた。
やめて! 私のために争わないで!
「殿下は、禁書施設への登録を済ませにきたのだ。お前にかまっている暇はない!」
「はんっ! イズミ姉さん、こんなガリ勉ほっといて、俺とデートに行きやせんか。
俺ぁこの街のことよく知ってるし、なんだって奢って差し上げますぜ?」
「え、まじ? 行く行く!」
「殿下―――!」
本気で怒ったイルガスを初めて見た。
このバカ(ゲイブ)書きやすいですねw




