【19】眠らない街
――鋼鉄城塞都市トータウス、世像協会入り口にて。
「あー、どっかにいい女いねえかなあ。なあロウム」
「……それは私がいい女じゃないって言いたい訳ね、ゲイブ」
金髪のチャラついた男性は、四方八方を本に囲まれた狭い空間にはひどく不釣り合いだ。
彼は高い身長の割には童顔で、日本で言えば高校生くらいの齢だと推測できる。
男が話しかける先には、対症的に『文学少女』と名のれる可憐な少女が座っていた。
短く揃えたピンク色の髪に、だぼだぼの毛糸服はどことなく扇情的に映ってしまう。
「相変わらず悲観的だなあ、お前。
ギザ男がこんな薄暗い書庫に出向いてやったんだ。
もっとノリノリで喜んだっていんだぜ?」
「この薄暗い所に24時間居る私が、そんなテンションで盛り上がる人だと思うの?」
「思わねえな。だからハメ外せって遠回しに言ってやってんだろうが!」
「……はあ、呆れたわ。
もうどうでもいいから、早く主の所へ……お父さんの元へ戻りなさい」
「……ちっ」
ロウムの言葉には抗えず、ゲイブは致し方なく承諾した。
「……悲観してるのはどっちなんだか」
「なっ、お前に言われたくねえし!」
「くすっ。あなた、焦った顔はなかなかに可愛いわね。
嫌いじゃないわよ?」
「……っんの……馬鹿にしやがって――!」
男は――ゲイブは赤面した顔を隠すように俯いて。
ポケットに突っ込みながら、乱暴に書庫の扉を蹴って外へ出ていった。
苦笑いしたロウムは開いていた本をそっと閉じて、静かに仕事に戻った。
◇
「……ほえー」
北東の街、トータウスについた私は、そんな間抜けな呟きが口を突いて出ていた。
人口凡そ130万人。
白銀の鉄で彩られた街の家々や城塞は、太陽の光を浴びて削りたてのダイヤモンドみたいに輝いていた。
これは月明かりでも同じくらい明るいだろうから、夜でも街灯要らずだろう。
それを証明するように、街道にはいっさいの街灯や照明器具がない。
鋼鉄城塞都市トータウス。
別名、眠らない街。
その肩書がぴったりの、素敵な街だった。
で、そんな異世界の文化に触れた私はというと――。
「はわー! すっげええぇぇぇ!」
めっちゃくちゃ興奮していた。
それはもう、好きな声優さんが結婚報告をした時並のレベル。
すかさず麾下の軍勢が私を取り押さえる。
指示したのはイルガスだったよあの野郎……!
「殿下。あなたは歩兵400を引き連れる王の器なのですよ?
それが、初めて見た街に興奮してどうするのです。はしたない」
「ぐっ……むう……!」
王という単語を出されると、どうも私は弱い。
でもそれだけ、王になりたいと思えているということだ。
その為なら普段しない勉強だって運動だって厭わなかった。
それは日本にいた時とは、まったく違う心構えだから。
少しづつだけど、私はわたしを変えていけているような気がした。
「……分かった。とりあえず世像協会へ、だね?」
「ご理解いただけて一安心です。護衛付きでなら、その後の観光は自由とします」
「言ったね?」
「言いました。男に二言はありません」
わずかな時間、視線が交錯する。
裏切らない――そう確信した私の方から、視線を逃した。
「そうと決まれば、早く仕事を終わらせよう。行くよ、皆」
早く王族の財力使って豪遊したい!
2月は好きなアニメの劇場版が多すぎる\(^o^)/
みるみる財布が痩せっぽっちになっていきます……。




